新作プレビュー 『カフェ・ソサエティ』 (最終回)

◆ もうすぐ何かが終わるような・・・恋愛手帖の終章?

 ヴォニーに振られたボビーは、失意のままNYに戻っていき、そこで第二の人生を始める。そこで当初考えていたものとは違うけれど、かなりなサクセス・ライフをゲットする。あまり詳しくは書かないが、美人妻(ブレイク・ライブリー)を娶り、所帯を持って幸せ満喫。と、そこへかつての恋人ヴォニーが現れて・・・という第三幕がこの後に準備されているのだけれど、本妻にだまってヴォニーと逢うということが、かつてボビーが彼女にやられた背信行為を今度は自分の妻にしてしまうという皮肉な展開となり、それはいかにもウディ・アレンらしい展開ながら今回はそれだけでは終わらない。いや、それだけでは終わっていないような気がするのです。

数年後、再会した二人
▲ ボビーはヴォニーと道ならぬ恋に・・・。
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC


 言ってしまうと、今回のラストシーン、どこか未練ありげで、そしていつになく歯切れ良く終わらない。良く言えば《悠揚迫らざる》、悪く言えば《フラフラし続ける》キャメラワークにそれを感じる。
 その未練なキャメラの揺れ(横撮影)は、アレン氏がまるで今までの自分がしでかしてきた不埒な恋愛事件を、またはスキャンダルを反芻するかのような《心境》に思え、はたまた自分に関わった女性達をこの『カフェ・ソサエティ』のヒロイン2人(元恋人と本妻)にダブらせて集約させてしみじみと概観しているような、そんな感じに私には思えました。

       それは、まったくの思い違い、思い過ごし、なのかもしれない。

 それにその流れでいくと、
「じゃあ、コレはウディ・アレンの集大成? もう彼は映画を撮らないの?」
となってしまうのだが、そんてことはない。アレン氏はもう今年製作のプロジェクト(原題『Wonder Wheel』)に入っている。なぁ~んだ、まだまだ撮る気じゃん・・・。

 でも、あのアレン氏の名声を失墜させた養女(幼女)への性的イタヅラとか、ミア・ファローと別れてその養女と結婚し、その女からもセクハラ行為を暴露された近年の騒ぎなどの事は映画には出てこないのだけれど(そりゃ、映画で少しでもそれを臭わせればマスコミに嗅ぎつかれてあることないこと書かれ、終いには逮捕されるもの。だから自分でそれを臭わせるわけがない)、それ以外の彼自身の女性関係について、冷めたというか諦観めいた心境を示したのが今回の『カフェ・ソサエティ』だという気が私はしている。

 ウディ・アレンの遺言と見ても良いけれど、さっきも書いたがまだ撮ってるんでね。今回の作品はその〝下書き〟ってところかもしれない。 

       ★ 『カフェ・ソサエティ』 公式サイト:http://movie-cafesociety.com/

 ■ 5月5日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開中 
                    提供:KADOKAWA、ロングライド  配給:ロングライド ■



           *************************

『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた 『 ラストシーンの余韻 』、紙の書籍で発売中!

表紙横 中2
著者(発行者)・高村英次 価格2100円(税、送料とも込み)

 

 ◇ 廉価な電子書籍版の 『 ラストシーンの余韻 』 はこちらから
   ◆アマゾンKindleストア   AND   ◇楽天ブックスで発売中!




スポンサーサイト

新作プレビュー 『カフェ・ソサエティ』 (その3)

◆ ウディ・アレンとデイミアン・チャゼル

ヴェロニカ
▲ ボビーは自分が経営するクラブでゴージャスなヴェロニカ(ブレイク・ライブリー、中央)
と出会う。右はボビーの友人ラッド(パーカー・ポージー)。
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

 ジェシー・アイゼンバーグがクリステン・スチュワートとのロマンスに酔い、それに破れて傷心するあたりの表情には、若い頃のウディがよぎるだけでなく、どうも黄金時代のハリウッドを背景にしているせいか、この春ヒットした『LA LA LAND』のイメージもそこによぎるのだ。あの女優志願のミア(エマ・ストーン)に惚れ、その女が大スターになるのと引き替えにひっそりとジャズクラブの主人に成り下がっていくセス(ライアン・ゴスリング)のイメージが・・・。

 というか--『LA LA LAND』も大概ヒットして大勢の人が観たようだから、あの映画の好きなところをネタバレを承知で書くけれど--そもそも『LA LA LAND』にはウディ・アレン作品からの引用がある。

          『マジック・イン・ムーンライト』(2014)だ。

 この作品のヒロインがこの度『LA ~』でオスカーを射止めたエマ・ストーンであり、そのエマが彼女の霊能力を「インチキだ」と見抜くためにやってきたマジシャンのコリン・ファースと想定外のデートで訪れる場所が天文台。その中にあるプラネタリウムで二人は心通わすロマンチックな時間を過ごすのだが、この『マジック~』のワン・シークエンスは『LA LA LAND』ではエマとゴスリングとが星降る夜空にふんわり浮かんで宇宙空間を優雅に舞い踊っていく、プラネタリウム(*)のファンタスティックなシーンへと大胆に転用(リブート?)されている。

 デイミアン・チャゼル監督がアレン作品をパクッたわけじゃないんだろうけど、偶然似ちゃったって事なのか。もっとも『LA LA LAND』にはエマ・ストーンの部屋の壁に大きなイングリッド・バーグマンの(『カサブランカ』のポスターとおぼしき)大きな肖像が描かれてあったり、ワーナー・スタジオ周辺をゴスリングと歩く時に、そのゴスリングが「あれが『カサブランカ』でボギーとバーグマンが寄り添った窓だよ」と言ったりする件があったり、という具合にオールドムービーへの言及や引用がある(そこが嬉しい)。

 その映画が『カサブランカ』ってことはもう、その『カサブランカ』を元ネタにしてウディ・アレンが脚本・主演した『ボギー! 俺も男だ』(1972・米、ハーバート・ロス監督)がただちに連想される。『カサブランカ』(1945・米、マイケル・カーチス監督)やイングリッド・バーグマンを介してチャゼル監督とウディ・アレンは容易にリンクするわけで、まあ、それはどうでもいいのだが、私はニヤニヤして観てました(あと、ジャズ・サウンドへの熱烈な傾倒と憧憬なんてところも二人は一緒だ)。


 1950年代のハリウッド映画のルックやセンスを現代の劇映画で、しかもミュージカルで描くという、誰もがやりたいと願い、やったとしてもそうは成功しないアプローチ(挑戦)を、まんまと成功させたデイミアン・チャゼル監督を私は絶賛する。


     アレ? ウディ・アレンの、『カフェ・ソサエティ』の話がどっかいっちゃいましたね。


 『LA LA LAND』は戦後のハリウッドの黄金時代である所の1950年代(風のタッチ、スタイル)を現代に移し替えて描いた(ってのは私見ですよ)ものだけど、『カフェ~』はまんまその時代の話だから、ノスタルジック・ムードが横溢してくるのは当たり前。

 でもボビーがヴォニーに振られてNYへ里帰りしちゃう後半の展開からノスタルジックなムードは薄れ、いつものアレン映画のようで、そうじゃないような、ある種、黄昏た心境ドラマみたいになっていく。<続く>

セレブになったヴォニー
▲ 秘書だったヴォニー(クリステン・スチュワート)も今やセレブに・・・。
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

*『LA LA LAND』の天文台  プラネタリウムで二人が天空に舞い上がっていく『LA LA LAND』の天文台は、その名をグリフィス天文台。『LA~』の劇中にも出てきたジェームズ・ディーン主演作『理由なき反抗』(1955・米、ニコラス・レイ監督)のラストに登場する有名な場所、今言うところの〝聖地〟であるが、そのグリフィスは〝アメリカ映画の父〟と呼ばれたデビッド・ワーク・グリフィス監督のファミリー・ネームと同じ。だから、あそこでグリフィス天文台が出てくるについては2つの思い入れ(オマージュ)があるんだろう、と見たが。

       ★ 『カフェ・ソサエティ』 公式サイト:http://movie-cafesociety.com/

 ■ 5月5日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開中 
                    提供:KADOKAWA、ロングライド  配給:ロングライド ■



           *************************

『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた 『 ラストシーンの余韻 』、紙の書籍で発売中!

表紙横 中2
著者(発行者)・高村英次 価格2100円(税、送料とも込み)

 

 ◇ 廉価な電子書籍版の 『 ラストシーンの余韻 』 はこちらから
   ◆アマゾンKindleストア   AND   ◇楽天ブックスで発売中!




インターミッション  桜の森の満開の・・・

 またまた〝ひと休みクリップ〟をひとつ。
 白石サイクリングロード内の八重桜が咲き乱れたエリアはまさに「さくらのアーケード」。その下を駆け抜けた映像のみを連結。
 名付けて「The Cherry Corridor」。字幕に続いてオーパーラップ、ホワイトアウトにチャレンジ。ぎこちなさ満点ですが、何とぞよろしく!



https://youtu.be/66elXqjuHJw


           *************************

『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
『 ラストシーンの余韻 』、紙の書籍で発売中!


表紙横 中2
著者(発行者)・高村英次 価格2100円(税、送料とも込み)

 

 ◇ 廉価な電子書籍版の 『 ラストシーンの余韻 』 はこちらから
   ◆アマゾンKindleストア   AND   ◇楽天ブックスで発売中!




インターミッション 春風をアナタに・・・

 『カフェ・ソサエティ』の話はまだ続きますが、ここでひと休み。
 近所のサイクリングロードでは八重桜が満開。あんまり綺麗だから、写真でなく動画で撮影。右手でデジカメを廻しながら、左手だけでハンドル操作しての走行はちょっとタイヘンでしたが、それでもブレブレながらほんわかした画が撮れました。
 名付けて「THE SPRING OF SHIROISHI COCOROAD 」
 最初「白石サイクリングロード~~」と日本語表記にしてたら、映像編集ソフトの不具合か、英語でしか表記できなくなって、こんな横文字にするハメに・・・。ま、意味が分かってもらえればよいです。

 和んでくださいまし。。。


https://youtu.be/kEuL4DEYPqo

新作プレビュー 『カフェ・ソサエティ』 (その2)

◆ 青二才の初恋と失恋、そして三角関係の行方は・・・?

 ストーリーをば。

 1930年代のハリウッド。人気スターや有名監督などが所属する大手エージェント会社(日本でいえば芸能事務所)を経営して羽振りの良いフィル(スティーブ・カレル)の許に、サクセス・ストーリーを夢見る甥のボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)がNYからやってくる。フィルはボビーを企画やシナリオの下読みをする雑用係に使い、秘書のヴォニー(クリステン・スチュワート)をあてがってハリウッド見学をさせたりするが、そのヴォニーにボビーはゾッコンまいってしまう。
 意を決して告白すると、ヴォニーは「実は恋人がいるの」とつれない返事。傷心ながらもボビーは引き下がるが、彼を振ったヴォニーも気が晴れない。なぜなら相手の男は自分と別れたがっているよう。男は妻帯者だからしてヴォニーとは不倫の関係というわけだが、彼女はついにその男から別れを切り出される。その男とはヴォニーとボビーのボス(上司)、フィルであった・・・。

ボビーのワンショット
▲ ウディの分身? ボビー役のジェシー・アイゼンバーグ
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC


 こういう因縁めいた三角関係、ウディ・アレンの恋愛映画としてはまったく目新しくない。『ハンナとその姉妹』『それでも恋するバロセロナ』『恋のロンドン狂騒曲』が同種のアレン作品としてパッと脳裏をよぎるけど、彼の作品では常に登場人物が恋しているので、いまさら~という感じがしないでもない。
 ただ、その振られる青年ボビーを演じているジェシー・アイゼンバーグが、かつてのオドオドした若い頃のウディ・アレンそのものって感じなので、そこんところがとても可笑しい。ハリウッドにやってきたボビーが、NYにいるギャングの兄から「ヒマしてンなら女でも買え」と言われてコールガールをモーテルに呼んだはいいが、ドタバタドタバタしたあげく、相手の女が自分と同じユダヤ人だと知ると善人ぶって「ボクと寝なくていいよ、そんな事しなくていいから帰りなさい」と追い出そうとする。すると女は「商売だから、一度ヤルと決めたら仕事が終わるまで帰らない」とゴネ出してすったもんだする件はいかにもウディらしい設えだった。
 ただその間抜けな青臭い役を、当然ながら80歳を超えたウディが自演できるわけもない。だからジェシーに演らせているのだが、良い〝替え玉(自分の分身)〟を見つけたもんだ。ジェシー・アイゼンバーグは『ローマでアモーレ』(2012)に続くアレン作品2度目の出演だが、『ローマ~』の時よりも演じ甲斐のある役をやっている(大体、『ローマでアモーレ』はアレン作品にしては収拾のつかない脱線オムニバスで、意図がよく判らない小品ではあった)。 <続く>


 
 『 カフェ・ソサエティ 』 予告篇      https://youtu.be/hYAhQEcVbqc

       ★ 『カフェ・ソサエティ』 公式サイト:http://movie-cafesociety.com/

 ■ 5月5日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開中 
                    提供:KADOKAWA、ロングライド  配給:ロングライド ■


           *************************

 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
『 ラストシーンの余韻 』、紙の書籍で発売中!

ラスト表紙200  著者(発行者)・高村英次 価格2100円(税、送料とも込み)

 

 ◇ 廉価な電子書籍版の 『 ラストシーンの余韻 』 はこちらから
   ◆アマゾンKindleストア   AND   ◇楽天ブックスで発売中!



The Food Court ♪

いっぱい食べるキミが好き~ ♪♪♪

SPORTS & CASUALS ♪

いっぱい遊ぶキミが好き~♪♪♪

お役立ちエリア ♪

ナイスな便利グッズ&サービスをご提供!

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
アマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスにて電子書籍で発売中。2017年1月21日から製本直送.comより紙の書籍でも発売開始! 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

My Blog Visitors
CAT TIME !
Calendar

Le TAO ♪
春の光だ、マチに飛び出せ! ・・・ ルタオです ♪♪♪
FC2 ブログランキング
FC2 Blog Ranking
[ジャンルランキング]
映画
462位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
邦画
16位
アクセスランキングを見る>>
リンク
最新記事
松尾ジンギスカン ♪
北海道の郷土料理にしてベスト!
カテゴリ
月別アーカイブ
リーズナブルな旅をご案内 ♪
書を捨てよ、旅へ出よう~ ♪
Amazon DVD RANKING
イチバン人気の映画をチェック!
検索フォーム
最新コメント
MAIL BOX
名前はハンドル名でOK、文面は公開しないので、お気軽に!

名前:
メール:
件名:
本文:

最新トラックバック
QRコード
QR