緊急コラム 番狂わせとミステイク - 決定! 第89回アカデミー賞   <最終回>

◆ 作品賞を獲得した『ムーンライト』のこと

ムーンライト350
▲高校時代のシャロン(アシュトン・サンダース)。『ムーン
ライト』、公開は3月31日 (配給:ファントム・フィルム)
(C)2016 A24 Distribution, LLC


 それはそうと、作品賞を逃した『LA LA LAND』。2度目の鑑賞でも十二分に感動して、帰り際、久方ぶりにパンフレットでも買ってみようかなと思い、売店に寄ってみたが、な、なんとパンフレットは売り切れていた! エー、マジ?! 公開は先週の金曜日(2月24日)からだよね、じゃ、その金曜、土曜、日曜でバババババッと売れちゃったってわけ?!

 凄い人気だなー・・・ま、それは判らないでもないけれど。

 そんな『LA LA LAND』を蹴落として作品賞を受賞した『ムーンライト』って一体どんな映画なんだ? 

 ・・・フフフ、実は先日、ひと足先に観たのだが、うーむ、確かに素晴らしい。誤解されるのを承知で言うならば、ラストカットなんてトリュフォー『大人は判ってくれない』(1959・仏)だよ。おそらく、虐められた少年の限りなくやるせない切ない心理というものをこんなに見事に描いた作品もないし、しかもそれがホモ・セクシャルに発展していく展開は意外に思えるかもしれないが、映画を観てるとまったく自然なことに思えてくる。

 しかも映画は主人公シャロンの苦痛なドラマを幼少期から始めていて、そのシャロンを<幼少期・青年期・成人後>と3人の別々の人物が演じていくのだが、その誰もが素晴らしい。
 特に素晴らしいのは、青年期、つまりハイスクーラー時代のシャロンを演じたアシュトン・サンダースだが、同じ人物を年齢に応じて3人が演じたから主演男優賞で選ぶとなると分が悪いって事になる。そのせいか、今回、3人のうち誰もノミネートされてない。

 逆に『ムーンライト』で助演男優賞を受賞したのは、その幼少時代のシャロンに優しく接し、いわば彼の〝育ての親〟的な存在となっていくヤクの売人を演じたマハーシャラ・アリ。この人、試写で観た時から「ア、これは獲る」と思ったね(もちろん、受賞が決まったから言うのだが)。ちょっとしか出ないんだが、妙に印象に残る顔なんだよなあ。それに受賞こそならなかったが、主人公のダメ母を演じたナオミ・ハリスも・・・。

 で、(これもまた誤解を恐れずに言うのだが)『ムーンライト』はある面だけ見ると、母親が自分の娘を情け容赦なく殴り蹴りつけて虐め続ける、観ているのが辛い愛憎劇の『プレシャス』(2009・米、リー・ダニエルズ監督)であり、度しがたく暗い人生転落劇でもあるわけで、こうした社会告発的側面を持った深刻な映画って、今までのアカデミー賞ではノミネートされることはあってもオスカーを授かる事はなかった。

 それが、これほどアメリカの映画人、つまりハリウッド人種に好かれる映画はないだろうと思われる『LA LA LAND』を押しのけて受賞する、ってのはどういうことだ? 

 ゴールデングローブ賞にならったのか? 

 確かにドラマ部門は『ムーンライト』で、ミュージカル・コメディ部門は『LA LA LAND』ってのが今回の結果だったが、それにしても解せない。 

 ま、その疑問を晴らすためには、『ムーンライト』を観てもらうしかない。だから是非、ご覧下さい。

 おそらくそこには、我々(日本人)の予想した通りの、〝下流ブラックの見捨てられたような過酷な日常〟と、我々の知らない〝人と人の温かい睦み合い〟がある。

 ・・・胸打たれ、心に染みる作品だった、『ムーンライト』。

       ★『ムーンライト』公式HPhttp://moonlight-movie.jp/

                   *****

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緊急コラム 番狂わせとミステイク - 決定!第89回アカデミー賞<3>

◆ 主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックのこと(2)

ケイシー350
▲ケイシー・アフレックのインタビュー記事が載った「マリ・クレール」1999年12月号。
世界各地で発刊されている、フランス発の月刊ファッション誌「マリ・クレール」。
日本版は中央公論社が発売していて、後に角川書店(現KADOKAWA)に移り、次にアシ
ェット婦人画報社と発売元が移ったが、2009年7月に休刊。現在、読売新聞の購読者
向け会員誌として再刊。この記事が載った日本版は発売元が角川書店の頃。


 そのケイシー・アフレックのインタビューが載った『マリ・クレール』の記事を引っ張り出して読んでみたら、現在の大成を予言する(納得させる)ようなイイ事を彼は語っていた。

 見出しの「オスカーは欲しいよ。一番いいオファーが来るからね」ってコメントからして今回のアカデミー主演男優賞を見据えてのもののように思えてならないが、コレはジャズ野郎こと映画ライターの私・高村が、当時、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』に出演してマット・デイモンと脚本を共作してアカデミー脚本賞をゲットした兄のベン・アフレックを引き合いに出して無理に訊いたため。
 いわば《誘導尋問》に素直に応じてくれたわけだが、まあ、そういう無理矢理な、コジツケがましい訊き方をインタビュアーはするもんですよね(エッ、お前だけだって?! うーん、そうかもしれない)。
 それでも、ひと足先に成功を手にした兄を羨むことも、妬むこともなく(というかそういう素振りをみせず)、ケイシーは淡々とインタビューに応じてくれた。だから好感持ったんだ。

 オスカーが欲しい、という理由を彼は、

「有名になったら一番いいオファーが、当然最初に来るからね。そしてメジャー作品の出演依頼も来る。要するに『アルマゲドン』に出る事によって『ブレードランナー』に出られるかもしれない。インディーズ系に出ていると、やりたい企画が立ち上がった時に話がこない。一番出たいのは『ブレードランナー』みたいな作品だから…」                         (『マリ・クレール』1999年12月号)

 と〝ブレードランナー愛〟を強調していたが(というのを、今回、記事を読み直して発見した)、大体が知的な人なんだ。12歳から俳優を始め(始めたのは兄より先)、はっきりと俳優を志した高校生になってからはわざわざカリフォルニアに移住し、俳優業をやりながらワシントン大学とコロンビア大学に同時入学した、ってほどの人だから。

 インタビューした時、彼が出た作品は『200本のたばこ』という1981年の大晦日の1日を描いた群像劇だったが、私が、
「その翌年の82年は大学受験だったので、81年の大晦日はひたすら受験勉強してました」
 って言うと、ニヤッと笑って、
「それは正しい、正しい過ごし方ですよ」
 と優しく言ってくれた。

 今回のアカデミー賞授賞式ではトランプ批判が横行したけれど(そうなるだろうと思って、楽しみにしてた)、そのトランプさんが一番尊敬する歴代大統領はロナルド・レーガンだってのは有名な話。そのレーガン(時代)についてケイシーはなかなか洞察力に富んだ事を語っていた。

「やっぱりレーガン大統領が登場した事で80年代は決まったね。真面目さ、謙虚さに意味はなく、すべてが享楽的であらゆる物を手に入れる事が良し、とされた。その享楽の後って、パーティで騒いだら翌日は二日酔いで頭ガンガンしているのに似てる。80年代に痛飲したから、90年代は頭ガンガンさ」 (前掲誌)

                 ムムッ、鋭い!

 〝トランプ大統領が登場した事で2010年代の後半は決まったね〟と言われぬようにしたいものだが、どうやら異民族排斥でギスギスした限りなくヤバイ、〝頭ガンガン〟の4年間になってしまいそうだ。<続く>

                   *****

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緊急コラム 番狂わせとミステイク - 決定!第89回アカデミー賞<2>

◆ 主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックのこと(1)


マンチェスター300
▲『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(5月13日公開、配給ビターズエンド、パルコ)
公式HP:http://www.manchesterbythesea.jp/
(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.


 もちろん、アカデミー作品賞を逃したと言っても、ジャズ野郎の『LA LA LAND』に対する愛情はなんら変わらないわけだが、それにしてもプロ顔負けのピアノタッチを見せたライアン・ゴズリングが主演男優賞を逃した、ってのは至極残念。

 しかもそのライアンを押しのけて主演賞を射止めたのが、あのベン・アフレックの実弟ケイシー・アフレックだっていうから驚きよー! 
 なぜって、ジャズめはこの人に会っている。18年前の1999年秋に『200本のたばこ』(1999、リサ・ブラモン・ガルシア監督)って映画のPRで来日した時、雑誌『マリ・クレール』の取材でインタビューした。マット・デイモンとともに『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997、ガス・ヴァン・サント監督)で売れた兄ベンに比べ、幾分、影が薄いような感じがしたが、誠実そうな好青年で、

「『マリ・クレール』のインタビュ-なら何をさしおいても受けますよ」

なんて嬉しい事を言ってくれて、小一時間楽しく歓談した。

 その後、ブラピの長~い西部劇『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007、アンドリュー・ドミニク監督)でアカデミー助演賞ほか各映画賞の男優賞の候補になったり、受賞したりして、
「へー、あの弱々しく思えた、ナイーブなケイシーが玄人好みのイイ芝居するようになったなあ」
 と思っていたら、今回、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』って作品で、見事、主演男優賞獲得!

 人ごとながら嬉しいネ。兄貴のベンは脚本賞だけでなく、製作・演出・主演を兼た『アルゴ』(2012、ベン・アフレック監督)で作品賞も獲ってるが、〝演技〟での賞は弟の方が先に獲っちまった。凄い兄弟だよネ。 <続く>

                      *****

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02/27のツイートまとめ

JAZZyaro

『ラ・ラ・ランド』上映前、座席下のライトが明滅してたので、係の人に直してもらった。ユナイテッドシネマ札幌3階の「9番スクリーン」担当のお兄さん、ありがとう。 https://t.co/jbDtUGzH6l
02-27 21:48

緊急コラム 番狂わせとミステイク - 決定!第89回 アカデミー賞<1>

◆ 〝許されざるミステイク〟は誰のせい?

LAポスター350


 20年余、映画ライターをしているが、試写で観てとても気に入り、再度、金を払って劇場に観に行った映画というのは3本しかない。

 ミシェル・ファイファー&ブリッジス兄弟(ジェフとボー)の『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989、スティーブ・グローヴス監督)、
仲里依紗&中尾明慶の『時をかける少女』(2010、谷口正晃監督)、
そして今公開中の『LA LA LAND』(デイミアン・チャゼル監督)。

 『時かけ』は、筒井康隆さんのムック(「筒井康隆の『全仕事』大研究」洋泉社)制作のために、つまり〝仕事で〟観に行ったから、実質的には『ファビュラス~』と『LA LA LAND』の2本ってことになるが、まあ、それだけ『LA LA LAND』が気に入ったってわけです。

 観に行った2月27日にアカデミー賞の発表があるのは百も承知で、朝の1回目を観に行き、観終わって劇場を出る時、ロビーやエントランスの壁に貼ってあるポスターに「第89回アカデミー賞作品賞受賞!!!」って書いたシールがうやうやしく貼り付けられているだろうな・・・・と思っていたが、11時20分頃に劇場を出たがポスターはそのまんま。一緒に『LA LA LAND』を観ていたらしいカップルが近くにいて、カレシがスマホをいじりながらカノジョに「もう、作品賞の発表があったかなと思ったら、まだ決まってないんだ」とかなんとか言ってたので、「あー、そうか、そういう事か」と思い、映画館のあるサッポロファクトリー内をブラブラ散策して家路に着いた。

 ところが驚いたのなんのって! 

 家でニュースを観たら作品賞は『ムーンライト』だっていうじゃないか!!!
 まさか、まさかのオスカー落選・・・落選っていっても、エマ・ストーンは主演女優賞に、D・チャゼルは監督賞に、ゴキゲンなミュージカル&ジャズのナンバーを作曲したジャスティン・ハーウィッツは作曲賞と歌曲賞に、とめぼしい賞はゲットしたのだが、それにしても作品賞を落とすとは・・・!

 しかも、一度は「And Winner Is ・・・ 」か「Oscar Goes To ・・・」かでもって、

      『LA LA LAND!』    WaoooooooooooooOH!!!!

 とその受賞が発表され、監督その他の受賞スピーチもあったというのに、それが終わってから、受賞は間違いで本当の勝者(受賞者)は『ムーンライト』と訂正発表された、というなんとも笑えないオチがついた。
 これはその昔、フランク・キャプラ監督が「受賞者は・・・フランク・・・」とファーストネームを聴いただけで自分が獲ったものと早合点して、ステージにのこのこ出て行こうとしたら、

           「・・・(フランク・)ロイド!」

と別の監督の名前が呼ばれて、スゴスゴと席に戻ったという赤っ恥ものの実話(第6回の授賞式)を元に作られた、『オスカー』(1966、ラッセル・ラウズ監督)みたいじゃないか!

 好事魔多し・・・世の中、本当にいろんな事があるもんだ。 <続く>

                      *****

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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

ジャズ野郎(高村英次)

Author:ジャズ野郎(高村英次)
アマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスにて電子書籍で発売中。2017年1月21日から製本直送.comより紙の書籍でも発売開始! 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

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