清水宏 恐るべき子供〝天使と悪魔〟 <その5>
清水宏▲柳さく子 〔1902-1963〕
出典:昭和モダン好き
城戸四郎はアンチ野村派で、野村芳亭の作る新派悲劇的な湿っぽい映画〔お涙頂戴的な内容の作品〕を一掃して、生活感のある庶民的な作品を作ろうと考えており、その方針が 島津保次郎 や 五所平之助 の手で具現化されて〝蒲田調〟を生み出していったことを先に述べましたが (【野村芳亭、知られざる巨人 <その17>】4月6日付) 、この城戸が清水宏と意気投合してなにくれとなく彼を重用したのだ。
城戸が蒲田に赴任すると、タイミングのいいことに〝柳さく子スキャンダル〟が起こって芳亭は蒲田を追われて京都へ都落ちさせられる (【野村芳亭、知られざる巨人 <その16>】4月5日付) 。
蒲田は城戸の牙城となり、清水にはうるさい〝将軍さん(芳亭)〟がいなくなるわけだから、欣喜雀躍したことは想像に難くない。すでに清水はこの大正13年(1924)に監督デビューを果たしていた。だから、「いよいよ面白くなってきたゾ!」とほくそ笑んだ事だろう。
ところが先にも書いたように清水は、都落ちする芳亭さんとともに京都の下加茂撮影所に行くことになってしまう。
清水にとっては、まさに オー・マイ・ガッ・・・! であった。
清水の生い立ちは後述するが、彼は静岡県磐田郡の山の中で生まれており、幼時に東京芝浜町に引っ越してそこで小学時代を過ごしている(中学は浜松)。生粋の江戸っ子ではないが東京の華やかなさが身に染み込んでいる。そんな都会人の清水にとって、古都とはいえ鬱蒼とした竹藪の中にある田舎くさい京都・下加茂撮影所での生活は嫌で嫌でたまらなかった。〔続く〕
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