新作プレビュー  『 アメリカン・ハッスル 』 <後編>

◆〝とっつきやすいロバート・アルトマン〟

アメリカン・ハッスル 3ショット
▲ FBIのリッチー捜査官(右、B・クーパー)のおとり
  捜査に駆り出されるアーヴィンとシドニー (C)2013CTMG


 結局、ラッセル監督って、ろくでなしな人々の生き様を描くのが大好きで、しかも普遍的(当たり前)な人間のあり方として描いていくんですよね。それは 『ザ・ファイター』 でも 『世界にひとつのプレイブック』 でもそうでした。
 加えて、これらの変人なキャラクターを、血のつながりの有無など関係なく、ひとつの 〝ファミリー〟 として描く。君も私も、アナタもボクも〝家族〟なんだ、と言って抱擁するかのように・・・ココがいいですな。

 ここに来て、鈍いジャズめもようやくこのラッセル監督の本質ってのが判ってきました。

 要するに、デビッド・O・ラッセルってのは、

〝とっつきやすいロバート・アルトマン〟

って事ですな。

 ロバート・アルトマン監督〔 1925 - 2006 〕はアンチ・ハリウッドの巨匠で、どの映画もシニカルで、クールというよりドライに人間(群像劇)を見つめ、登場人物達に自己を投影(仮託)するようなヤワな事はせず、常に距離を置いて冷ややかに突き放して描く
 そんなアルトマン映画は一見して〝冷たくて味気ない〟からあまり好きにはなれなかったけれども、そんなアルトマンでも最後の、遺作の 『今宵、フィッツジェラルド劇場で』 (2006年・米)は見事でしたな。コレは素晴らしかった!

 「アナタはこの映画を撮るために、今まで作品を作ってきたんですか!」

 って訊きたくなるくらいの、見事なフィナーレ。自分の映画人生のカーテンコールを遺作で見せるとは、なんて粋なんだ! 感涙しました。

 アルトマンの事はさて置いて---だからラッセル監督っていうのは、その冷ややかなアルトマン・タッチに人肌の温もり -優しさ- を付加したものと言えるでしょう。

 ラッセル監督自身はこの新作について--
「映画を見終わって出てきた人に、こう言われたら最大のほめ言葉だね。
〝彼らを好きになったから、離れがたい〟ってね」  (同作のプレスシートより)


 と語ってます。確かに、クリチャン・ベイルにしても、ブラッドリー・クーパーにしても、ジェニファー・ローレンスにしても、どいつもこいつも生き方の下手なアホ・マヌケの類に思えますだが、ずっと見ているとアラ不思議、いつしか彼らが〝我が友〟〝我が同志〟に思えちゃう。
 つまり彼らは我々自身ということです。だから、彼らを好きになるか否かは別にして〝離れがたい〟んです。


アメリカン・ハッスル C・ベイルとB・クーパー
▲ 右の方(アーヴィン=C・ベイル)、ちょっと御髪〔おぐし〕が・・・。
(C)2013CTMG


 とにかく『アメリカン・ハッスル』は、オープニング、どアタマから見て下さいよ。
 もう、遅刻して最初のシーンなんか見逃しちゃったら、入館しないでいただきたい。
 
 とにかく、アタマです、アタマアタマアタマ
 
 アタマ にこそこの映画の総てがある、といっても過言じゃない・・・デス。

 ■ 1月31日より東京TOHOシネマズ みゆき座、札幌シネマフロンティア、
     ユナイテッドシネマ札幌、シネプレックス旭川ほか全国ロードショー 
                               配給:ファントム・フィルム ■


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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新作プレビュー 『 ラッシュ / プライドと友情 』 <その1>

◆炎のレーサー、ニキ・ラウダの血潮が逆流する〝挑戦の人生〟

ラッシュ メイン
▲ F1レーサー、ニキ・ラウダ(右)とジェームス・ハント
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.
ALL RIGHTS RESERVED.


 カーマニアなら、公道でもサーキットでもブンブン車がぶっ飛んでいくような疾走シーンがあれば大満足かもしれないけれど、コチトラみたいに普免は持っていてもハンドルを握ったことが2回くらいしかない〝完全ペーパードライバー〟にしてみれば、いわゆるカーレースを描いた映画で、「面白い」と思った作品ってのは、ほとんどないんですよね。
 ガーガーと排気音を響かせて延々とサーキットを回るだけ、ってのは見ていて飽きてしまう。その最たるモノが、ウォシャウスキー姉弟監督の『スピードレーサー』 (2010・米)だったけど、『 ラッシュ 』は監督が ロン・ハワード だという。「退屈なレースシーンをどう料理すんだろ?」と半信半疑で観に行ったら、コレがイイのですな。

 イイもなにも、このレース映画の主人公が ニキ・ラウダ だってだけで、五十路のオッサンは震えましたよ。前記のようにペーパードライバーで、子供の頃から(そして今に至っても)F1レースはおろか、車自体になんの興味もない、このジャズ野郎でもこの人のことは知っている。
 はるか遠き少年の頃、雑誌に載ったこの人の、焼けただれた表情を見て絶句した。隣にいたクラスメートがささやいた。

「その人の顔、レースの事故で火傷したんだ」 

 アー、そうか、それで・・・顔の火傷のひどさはまだしも、耳がちぎれかけて変形しているのを見て、ジャズめは絶句していたのだが・・・。さらにクラスメートは言った。

「でも、そのニキ・ラウダって人、まだレースやってんだよ。で、優勝したんだゼ!」

 ナニッ!? こんなんなってもまだレースやってんのか! とんでもない人じゃないか、この男。そういえば、そのプロフィール写真はコクピットに座った顔写真(やや横顔)だった、もちろん、レースウェアもバッチシ着てる。
 しかし、それにしても、これだけの顔になった、って事は大変な事故だったんだろう。なのに、どうしてまた超危険なサーキットに戻って、レースに出てんだ? 

・・・と、思ったものですが、車オンチのジャズ野郎にとっても、その生き様が強く印象に残って忘れない男--それがニキ・ラウダだった。

   そのラウダの闘いの軌跡が今、映画になった。それがこの『 ラッシュ 』なのです。〔続く〕

ラッシュ ポスター
▲ 日本版ポスター
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 ■ 2月7日より東京・TOHOシネマズ日劇、札幌シネマフロンティア、
        ユナイテッド・シネマ札幌ほか全国ロードショー 配給:GAGA ■



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新作プレビュー 『 ラッシュ / プライドと友情 』 <その2>

◆70年代の物語を70年代 <アナログ> な質感で再現

ラッシュ ハントのシャンパン・ファイト
▲ ラウダのライバル、ハント(クリス・ヘムズワース)のシャンパン・ファイト
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.


 熱きニキ・ラウダのレース人生は、彼一人だけで創られたのではない。ジェームス・ハントという最強のライバルがいてこそ成り立った。この二人の意地の張り合い、というか、火花散る敵愾心の激突 -ドラマ- が面白いから、惹きつけられるんです。 粗筋をば・・・。

〔 ともにカーレースの最高峰、F1グランプリへの出場を目指すレーサーのニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)は考え方から性格まですべてが正反対。ラウダは超慎重な理論派、かたやハントはレース開始直前まで酒をかっくらって女とイチャついてるような、自堕落な、天才肌の〝本番に強い派〟。
 だからハントはF3時代からその天分で勝ち進んでいき、事前準備もなんもしない。金持ちの友人をパトロンに持ち、彼らを頼って「来年はF2で、再来年はF1(昇格)かな」などと人任せに考えている。
 一方、家が富裕なオーストリア人のラウダは、レーサー志望に反対する父親に逆らい、自分で金を集めて金欠なレーシング・チームに貸しを作って入り込み、いきなりF1レーサーになってしまう。
 コレを知ったハントはさすがに焦り、俄然、やる気を出して自らもF1レースに参戦。ラウダと熾烈なレースを演じて、年間チャンピオンを競い合う。
 そして〝F1史上もっとも劇的なシーズン〟と言われる、運命の1976年を迎える・・・ 〕


 その、もっとも劇的だった'76年シーズンのドイツ・グランプリ、雨のニュルンブルグでのレースで、例の、ニキ・ラウダが火炎に見舞われる大事故が起こるわけだが、そこへ行くまでに何度か描き出されるレースシーンは、まぁ、スピーディー(!)でダイナミック(!!)で、レーサー目線の主観ショットもあって(1シーンに30台ものキャメラを使用)・・・さらに言えばシンプル(短い !!!)なのがイイですな。シンプルで、かつダイナミック。
 ババババ・・・とスパークするよな編集で、まさに〝快感〟です。

 CG&デジタルの時代だから、これぐらいは撮るでしょう--コレぐらいのレース再現は簡単に出来る--なんて思われるかもしれないが、この映画、デジタルシネマであるにも拘わらず、オープニングから終わりまで、その色彩(映像)は70年代当時のちょっとモヤっとした、アナロギーなカラーで撮られている。
 これにまず「オー!」と思いましたね。1970年代の話だからカラー調整をそんな感じに、70年代レトロにしたのは当然だけど、例えば、昨年の『スティーブ・ジョブス』みたいな70・80年代を再現した作品(『ミルク』『アルゴ』など)では、衣装や髪型は当時のままでも、それを写した映像はあくまでもクリアなデジタルな質感で、フィルムのアナログ感ってものは感じられなかった。全篇、キラキラっとしてる。

 それが『 ラッシュ 』は、クリアなメリハリこそないが、最初から僕らが少年時代に映画館で観ていたフィルム特有の軟らかく、温かな人肌感覚のカラー(色彩表現)なんですよね。この質感、どうやって質感を出したかなぁ。

                            ラッシュ ハントと女たち
                            ▲ ハントと取り巻きの女たち
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 クリアなデジタル・ヴィジュアルが主流になって、時にはフィルム(映画)特有の曖昧で甘い質感や、8ミリ(映画)独特の粒子の粗い、クレヨンの殴り書きのような画面(えづら)を恋しく思う、ジャズ野郎にとっては、まさに、ガキの頃のラウダとハントの物語をそんなエマルジョン感覚な映像で描いてくれた事が、ことのほか嬉しゅうございました。    〔続く〕
 
     ■ 2月7日より東京・TOHOシネマズ日劇、札幌シネマフロンティア、
              ユナイテッド・シネマ札幌ほか全国ロードショー 配給:GAGA ■



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新作プレビュー 『 ラッシュ / プライドと友情 』 <その3>

◆ラウダとハントに見るライバル観 -- 真に競い合うための〝資格〟

 〝ドイツGPの墓場〟と呼ばれる、世界で一番危険なサーキット、ニュルンブルグでラウダは事故り、瀕死の重傷で病院に担ぎこまれる。一命は取り留めたものの、彼の身体はヒドい火傷で・・・というその一切は、是非スクリーンで是非ご覧頂きたいのですが、そんな致命的とも思える事故から彼はたった42日後に復活! F1レースに戻って、サーキットを突っ走るのです。
 実話だから、ホントの事だけど、これには胸打たれましたね。だってヘルメット(あの密着度の高い、着脱するのがシンドいレース用のメットですゾ)を被るだけでも、もう、めちゃくちゃ痛いハズなのに、それをも乗り越えて、ラウダはサーキットに戻る。
 コレすべて、ハントに負けたくないという一念のため。医者や妻の止めるのも振り切ってレースに舞い戻る・・・もう意地ですな、男の意地。

                        ラッシュ ラウダの喝采
▲ 観衆の喝采に応えるラウダ
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.
ALL RIGHTS RESERVED.

 かたやハントの方も自堕落さから女房と離婚し、マスコミとも衝突して物議を醸すのだけれど、殊、レースとなるとラウダに負けたくないから猛然と頑張る。
 性格は正反対、価値観も生き様も違う、でも同じレースで雌雄を決するうちに、二人の心には通じ合う何かが・・・と書けば、その通りなんだけど、昨今の日本映画、特にスポーツもの(スポ根)で見られるように、ライバル同士が簡単に仲良くなったり、肩組んだりして、共に泣く、なんてヤワな寄り添い方はしないのです。
 会えばいつもお互いを中傷し、暴力こそ振るわないが、その口げんかのエゲツなさはかなりシビアで、友情の「ゆ」の字もない。しかし・・・いや、いいシーンがあるんですけどね、ココでは言わないことにしときます。


 話は変わりますが--去年の秋だったか、ゴルフの青木(功)さんが
「(試合を)楽しむ? ・・・冗談じゃない」
 というよう発言をしていましたが、本当のプロ、本当のライバル同士というものは、ゲームを真剣に、それこそ親の敵を取るような闘争心でもって臨むもの。
 だから、今の若いアスリート達がよく口にする「試合を楽しんできます」とか「勝負は負けましたが、楽しめました!」という言葉が、青木さんは許せなかったんだろう。
 青木さん達の世代(野球でいえば王・長島=ON、サッカーで言えば釜本・杉山、相撲で言えば大鵬・柏戸、プロレスでいえばジャイアント馬場とアントニオ猪木・・・)には、
 試合=勝負を楽しむ、などという発想は、
たとえ、それが自分のプレッシャーを抑えるための自己暗示だ、としてもなかった(但し、長嶋茂雄さんは例外です。この方は別格ですから)。

ラッシュ 晩年のハントとラウダ
▲ 晩年、レースを退いたハントはラウダに・・・
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 『 ラッシュ 』で描かれるニキ・ラウダとジェームズ・ハントの関係には、なにかそういう昔気質の、一本スジの通ったライバル魂がある。これもまた友情だと思うんです。変にベタベタした、なれ合いのイヤラしいもんじゃなく、赤く焼けただれた尖った2本の火鉢が熱気を放ちながら、どこまでも交差せずに見合っている、というような。

 負けず嫌いで、おのおのが「俺が勝った」と思っている二人ではあるが、そういう頑固な勝負師があの時代(1970年代)にはフツーにいたような気がする。
 きっとジャズ野郎がこの映画に惹かれるのは、こうしたふたりの男の闘いが、(平成の今じゃなく)昭和のマンガ誌『ジャンプ』や『少年サンデー』『少年マガジン』で熱く描かれてたマンガ、スポ根マンガのそれを思い出させるからかも知れない。
 つまり、この映画はそれくらい分かりやすい、って事。ロン・ハワードの演出はスッキリしなやかで、結構大胆、そして分かりやすい。

 最後に、ニキ・ラウダを演じていたダニエル・ブリュールはラウダに似てたなぁ。もう、ほとんどクリソツで・・・マイッタ。
 
 ■ 2月7日より東京・TOHOシネマズ日劇、札幌シネマフロンティア、
          ユナイテッド・シネマ札幌ほか全国ロードショー 配給:GAGA ■


PS  一般の人はなかなか入手できないと思うけど、読む機会があったら、『ラッシュ』のマスコミ用プレスシートに載っている、芝山幹郎さんの解説( リスク・ジャンキーの祝祭 )と今宮純さんのコラム( “最速”と“最強”の邂逅~魂のサイド・バイ・サイド )は是非読んでほしい。ジャズ野郎がグダグダ書いたブログよりも内容充実、示唆に富んでいて素晴らしい。プレスシート自体もギャガさん入魂の編集でいい仕上がりデス。


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新作プレビュー  『 エージェント:ライアン 』 <前編>

◆ まるでジェイソン・ボーンのような新生ライアン


エージェント・ライアン メイン
▲ クリス・パイン扮するジャック・ライアン   (C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 予告編を見れば判るとは思いますが、今度の ジャック・ライアン は、まー、 動く動き回る!

 ハリソン・フォードが持ち役としていたジャック・ライアンは CIAアナリスト(国際情勢の調査分析官) だから、本来は跳んだりはねたり、ドンパチやったりすることはなく、またそういうキナ臭い現場に出向くこともないはずなのだが、それだとアクション映画にならない。
 だから年配のハリソンも結構、身体張って演じてたし、そもそも最初にライアンを演った アレック・ボールドウィン『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)では旧ソの潜水艦に行かされてたし、3代目ライアンを仰せつかった ベン・アフレック などは『トータル・フィアーズ』 (2002)でこれ以上キナ臭い所はないという“核兵器爆発”の現場に出くわしている。
 そんなに危なくてヤバい場所に出入りするのなら、いっそのことアナリストからエージェント(スパイ)に格上げして、徹底的にハイリスクな場所で活躍して貰おう、ってな感じで、今回、ライアンは若返って国際的かつ政治的な紛争の現場にカムバックしてきた。
 それ自体は大いによろしい。
 おそらくはパラマウント映画も、ユニバーサル映画の一連の〝ボーン・シリーズ〟 --『ボーン・アイデンティティ』他の3部作と姉妹編『ボーン・レガシー』-- のような人気シリーズにしたくて、〝ジャック・ライアンの復活〟を考えたものだろう。
 本作の完成前に亡くなってしまったが、ジャック・ライアンのキャラクター・クリエーターで原作者のトム・クランシーもこの新生ライアンのプロジェクトに参加していたから、今回、出来上がった新しいライアン像とストーリー・ラインは原作者〝お墨付き〟というわけで、そのへんは信頼感が増す。

 要は、4代目のライアンを仰せつかった クリス・パイン がそれを自分のもの(持ち役)とできるか、どうかでしょうね。
 できてるか、って? うーん、どうでしょう・・・。

 悪くはない。というか、彼が演っているライアンがどうのこうのというよりも、クリス・パインが例えば “ミッション・インポッシブル”シリーズ を担っている トム・クルーズ のようなスターになれるか、否か、という事だと思うんです。
 彼はすでに同じパラマウントで、これまた新生の“スター・トレック”シリーズカーク船長 という重要なロールを背負っている。こちらも若い時分の青年カークだから、軽挙妄動や失敗を積み重ねていく、という成長譚ではあるけれども、そうした青二才キャラが通用するスタトレとは違い、ライアンはそれこそ ジェームズ゙・ボンド ばりに博覧強記の明晰頭脳とタフな肉体でもってバリバリと行動していかなければならない。
 見ていただくと判るけど、新生ライアンは ジェイソン・ボーン もどきのスーパー・エージェント(凄腕スパイ)像を要求されているから、
「この暗号、どっちだっけ?」 とか 「このパスワードで合ってんだっけ?」
 なんて躊躇は許されない・・・とはいえ、『エージェント:ライアン』は、007シリーズで言えば 『カジノ・ロワイヤル』 (2006)みたいな〝ルーキー編〟ですから、トンマな失敗や行き違いのミス、ってのも結構あります。
 でも、そこが面白い。まだ学生然としたクリス・パインのルックスにはそうしたヘマな青二才ぶりが似合ってて、〝今のところ〟はハマッてる。

 ライアン=クリス・パイン分析はこれくらいにして、じゃあ、この映画のどこがいいか、というと、やっぱアクションですな。 〔続く〕

エージェント・ライアン 日本版ポスター
▲ 日本版ポスター  (C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

   ■  2月14日先行公開、2月15日から全国ロードショー  
                   配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン ■


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新作プレビュー  『 エージェント:ライアン 』 <後編> 

◆ CIA局員の〝日記〟みたいなオリジナルを超越!

 監督は英国のシャイクスピア俳優で監督も手がける ケネス・ブラナー 。この人の映画っていうのは、器用貧乏っていうのか、なんとなく舞台風というかオペラチックな高級感を盛ろうとして、その割には映像がこじんまりして(よく、アップの人物の頭が切れてました)、ビジュアル感覚がイマイチで嫌でしたが、今回、場違いともいえるアクション映画を手がけている割には、非常によく撮っている。
 まるでアメリカ人の監督が撮ったみたいに。ま、誰が撮ってもハリウッドで編集されればアメリカ映画になってしまう、のが向こうの凄いところですが、アートなブラナー監督も素直にそれに従って、気持ちよくスパイ・アクション映画(演出)を楽しんでいる、という感じが伝わってきて、好感持てます。
 この作品の前に、マーヴェル・コミックの大作『マイティ・ソー』 (2011)で娯楽物をこなし、それが大ヒットしたから、味をしめたものか。いずれにしても、大人になりましたね、ブラナーさんも。
 加えてブラナーさんは チェレビン という、むくつけき悪役も演じていて、いい仕事してます。

エージェント・ライアン チェレビン
▲ ちょいと偏執狂的な悪党チェレビン(右、K・ブラナー)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 さらっと、シノプシス(ストーリー)をば。

〔 作戦中に瀕死の重傷を負った海兵隊員のジャック・ライアン(クリス・パイン)は、辛いリハビリを克服した後、その能力を評価されてCIA入り。表向きはウオール街の投資銀行の社員だが、国際的な経済犯罪の兆候を調査するアナリストとして隠密裡に活動していた。
 やがてライアンはロシアの大物投資家チェレビン(ケネス・ブラナー)の投資会社が不穏な資金操作をしている事に気づき、国際的な金融テロを計画している、と上司のハーパー(ケヴィン・コスナー)に報告。ただちに海外主張と称してモスクワに渡るライアン、ところがそんな彼の前にさっそく、刺客が・・・ 〕


 トム・クランシー・ファンの人には叱られるかもしれませんが、ジャズ野郎はクランシー・ノヴェルってのが苦手。だって長くてカッタるいんだもん。
 読んだのは『トータル・フィアーズ』だったか、アレでも、まー、延々とライアンの日々の行動が克明に書かれてますよね。

「朝、何時に起きて、何食って、新聞を読むと気になる記事を発見、するとTVのニュースでも緊急性の高い海外の事件を報じている。と、そこへCIAだか政府機関からの電話がかかってきて話し込み、女房子供との会話もそこそこに車で出発。指定されたところで要人と会い、かくかくしかじかと話を詰めて、局のデスクに戻って・・・(省略)・・・・夜、スポーツジムで汗を流して、帰りがけ、携帯に上司から電話が入って明日のスケジュールを確認しながら、帰宅。遅い夕食、入浴、妻と軽く語らって就寝。結局、この日は何もなかった。そして翌日も朝、目覚めて・・・」
 みたいな、コレが毎日続いていく。
 〝小説じゃないジャン、日記ジャン〟っていいたくなるよな本。

 上記の一連の流れ(「~」)は、あくまで喩えですけど、ほぼこんな感じの生活スケッチが長々と続いて、ようやく事件が動き出し、動き出してからも描写が詳細というのか、諄いというのか、ダラダラと続くんですよね。ジャズ野郎みたいな気の短い読書家には耐えられない“世界”です。
 それでも、こういうのがいい、という人はいる。亡くなった俳優の 児玉清 さんなんか大ファンだった。児玉さんはライアン原作物の後書きを書いてるくらいで、そこではこのクランシー・タッチを絶賛して「いつまでも読んでいたい」なんて書いてた(と思います)。
 そんな人もいるから、一概には言えませんけど、とにかくジャズめは原作は超苦手。

 だから、ハリソン・フォードの『パトリオット・ゲーム』(1992)も『今そこにある危機』(1994)も、原作の冗長な感じを引きずった緩慢な感じで、今ひとつスピード感がなく、
「(映画の中で)何が起ころうしていて、今どうなっているのか」
 ってのが判らなくて、見ていて焦れったかった。

 その点、今回の新生ライアンは、そんなオリジナル(今回のには原作はない、ようです)の調子を引きずらず、国際的な陰謀の渦中にある大国同士の駈け引き=情報戦の〝画にならない地味なやりとり〟をバッサリと刈り込んで、ヴィジュアル先行で徹底的に押して押して押しまくった、という作り方が奏功している、と思います。しかも見ていて分かりやすいし。

 見ていて分かりやすいし、見て損したという感じはない。それどころか、ビッグ・バジェットをつぎ込んだ大作感があって、デラックスで、アクションもキレている。

 アクション! そうですね、なかなかヤルんだよなぁ。〝コレがハリウッド・メジャーの力業だァー!〟、って感じで。どんな事やってるかは言いません、実際に観に行って下さい。


エージェント・ライアン ハーパー
▲ 重症のライアンをCIAにスカウトするハーパー(K・コスナー)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 あと、いいのは ケヴィン・コスナー の上司ハーパーかな。コスナーももう初老といっていいよな上官役を演るようになったんだなぁ、と感慨しばし。だって 『追いつめられて』 (1987=昭和62年)あたりの頃なんか、〝スティーブ・マックイーンの再来〟って言われたんだよ。それが今はまるで、野球で言うなら老練なコーチの態。
 でも、コスナーみたいな大物が上官で、クリス・パインの背後にデンと構えていると、作品の格が増すんですよね。ゴージャスな感じになる。
 キーラ・ナイトレイがライアンの恋人役で出て来る以外、めぼしい俳優もスターも出ないが、キャストを絞り込んで、その分、アクションにお金をかけているのがよ~く判る。

               ・・・だから、見てネ。

  ■  2月14日先行公開、2月15日から全国ロードショー  
                   配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン ■


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
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新作プレビュー  『 ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 』 <前編>

◆毎度お馴染みのしみじみとした語り口、ブルース・ダーン主演!

ネブラスカ サブ4
▲ 次男のデイビッド(W・フォーテ)と旅をするウディ(B・ダーン、左)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 『アバウト・シュミット』 (2002)、 『サイドウェイ』(2004) 、 『ファミリー・ツリー』 (2011) ・・・といった諸作を見ていると、その監督アレクサンダー・ペインという人は、実に手堅い、というか、諦観的というか、しみじみというか、常に惻々と心に染みるタッチでもって家族のドラマを描きます。
 そして、その静穏なムードや淡々とした話の進め方は、どうも日本の、小津安二郎監督の作品を思わせる。庶民の泣き笑いを、第三者的な視点で見つめ、時折、ちょっぴりワサビを利かせて泣かせる、とでもいうような。

 とはいえ正確にいうと、ムードこそ小津映画のようでいて、内容やドラマ作りの性格はまるで違う。
 ペイン作品は、往々にして旅映画(ロードムービー)の形をとり、その旅路の過程で出会う人々や事件を通じて、今自分の立っている〝甘辛い現実〟を思い知る--というもので、ドラマのバックシーンが常に動く。でも小津映画では背景は動きません(ついでに、人物達も、そしてキャメラもあまり動きませんが)。

 だから両者は違うんだけど、なんというか、視座が同じとでもいうのか、とにかくペイン監督の作品ってのは日本映画、小津とはいわないまでも、五所平之助蒲田=大船調)、松竹育ちで東宝でその作品世界が開花した成瀬巳喜男が描く市民生活、そのペーソスの〝匂い〟が同じように思うんです。

 先に挙げたペイン作品は、いずれもその年のアカデミー賞の候補に上っていて批評家筋にも高評価。アチラでもペインの描く、古き良き松竹〝蒲田=大船調〟がウケている、というのは意外な気もしますが、この事実を知ったら、その蒲田=大船調を定着させた城戸四郎撮影所長やオヅヤス、チョコ平(五所平之助)、〝やるせなきお〟の成瀬さんも草葉の陰で喜んでいることでしょう。

 前回の『ファミリー・ツリー』ではジョージ・クルーニーがアカデミー主演賞にノミネートされましたが、今回の『ネブラスカ』ではなんとブルース・ダーンが候補になっている! ブルース・ダーンといえば、西部劇の王様=ジョン・ウェインを撃ち殺した男(を演じた)ですゾ。
 〝スクリーンでは絶対死なない不屈のヒーロー〟だったジョン・ウェインを、卑怯にも背中から撃って殺した・・・この作品『11人のカウボーイ』 (1972年、マーク・ライデル監督)は、映画の半ばでウェインが死に、11人の少年ガンマンがその弔い合戦に悪党のダーンを追跡する話。だから1970年代から(映画館で)映画を観てる映画ファンにとってブルース・ダーンは忘れられない男優(おとこ)ですが、ジャズ野郎はブルース・ダーンっつうと、もうアルフレッド・ヒッチコック監督の『ファミリー・プロット』 (1976年)ですな。
 この〝ヒッチコック映画の中で最も好きな作品〟の中で、色ぼけなガールフレンド(バーバラ・ハリス)と楽しくも怖い「富豪の相続人捜し」に乗り出す、長身で元気いっぱいのタクシー・ドライバーがダーンの役どころで、オバカでよかった。
 時折、目をまん丸にする表情がコミカルで、どの映画でどんなキャラクターを演じていても、そのお目々のせいで、どこか憎めない。

 そんな、かつては西部劇スターを倒すヒールも演じた、タフだったブルース・ダーンも今は老いさらばえ、頭も半分ボケかかっているような感じ。足下もおぼつかなく、ヨロヨロとほっつき歩いているのですが、その場所はなんと高速道路。しかも逆走(逆歩行)!
 「じいさん、しっかりしなよ」とお巡りさんに両側から抱えられ、エスコートされながら連行される。その侘びしい姿が、『ネブラスカ』の開巻シーン・・・ときに時間は残酷です。  〔続く〕

ネブラスカ ポスター
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

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高村英次

Author:高村英次
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