新作プレビュー  『 プリズナーズ 』  <前編>

◆ イーストウッド映画を思わせる、抑制した、語らないタッチ

ポスター
(C)2014 Alcon Entertainment, LLC. All rights reserved.


             アナタは〝この男〟を許せるか!


・・・なんて書いちゃうと、誘拐事件を描いた犯罪モノだから、当然、〝この男〟ってのは誘拐犯のことだと思うでしょうね。もちろんソイツは許せない。だがこの映画で描かれる〝この男〟ってのは下手人のことじゃないんです。なんと、〝この男〟ってのは被害者のオヤジのことなんです。
 『レ・ミゼラブル』ヒュー・ジャックマン が熱演している、誘拐された少女のオヤジ・ケラーはその怒りに任せてとんでもない所業に走っちしまう。いや、とんでもないなんて事はないのかもしれない、これは卑怯な誘拐行為に対して、その被害者が行うべき 〝正当な違反行為〟 なのかもしれない。


メインンカット
▲ 苦悩を深める誘拐されたアナの父ケラー(H・ジャックマン)
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 『プリズナーズ』 はそうした現代社会の闇をそこここに偲ばせながら、巧妙に誘拐事件の暗部をまさぐっていく。新機軸といってもいい、新たな視点ですな。
 監督はカナダ出身の ドゥニ・ヴィルヌーヴ で、この作品は長編劇映画の6作目って事だが、4作目の『灼熱の魂』(2010)では母国カナダのジニー賞8部門に輝き、米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされているから、なかなか実力のある人のようだけど、それは映画を観れば解る。
 なぜかというと・・・ア、その前に、あんまり紹介したくないけれど、チビッとストーリーをば。

「 感謝祭の日--ペンシルヴェニア州の郊外の町に住むケラー(H・ジャッックマン)と妻グレイス(マリア・ベロ)はラルフとアナの子供を連れて、少し離れた友人フランクリン(テレンス・ハワード)の家を訪問。6歳のアナはフランクリンの娘で仲良しのジョイととも、「自宅にお人形を取りに行く」と言い出すが、グレイスは「ラルフと一緒じゃなきゃ外出はダメよ」と釘を刺す。
 しばらくして家の中に二人の姿がないのに気付いたグレイスは、ラルフが別室でTVを観ていてアナとジェイに付き添って外に出ていなかったことを知ると慌て始め、夫のケラーとフランクリンも家を飛び出して、捜索に駆け回る。
 かくして--二人の少女は町から忽然と消えた。
 押し潰されるような日々の中、参考人として意味ありげな青年アレックス(ポール・ダノ)が警察に拘束される・・・ 」


 ヴィルヌーヴ監督が巧いのは、冒頭の二人の少女が誘拐される直前のシーン。アナとジョイが外で遊んでいた時、あるキャンピングカーに興味を持って、車の後部のステップにじゃれつき、昇っていこうとしたりする。それを兄のラルフがたしなめて、二人をフランクリンの家に連れ帰る。この時、家に帰っていく子供達をキャンピングカーの後部の窓から、犯人がジィッと見ているのだが、犯人の姿は示さず、犯人の見た目の映像--遠ざかっていく子供達の後ろ姿--を淡々と映し出す。
 この瞬間が妙に不気味だ。この何気ない、犯人の見た目のボーッとした映像が恐い。
 もしも、アナタがコレを見て、誰かの映画に似てるなぁ、と思ったら、なかなかの映画通。
 そう、コレは クリント・イーストウッド監督 のタッチによく似ている。『プリズナース』の全編には、どことなくイーストウッドの

〝無表情なシーンの連続。即物的に描いているようで、そこに何かが暗示されている〟

ような感じがあり、そうした感覚は映像(撮影は『バートン・フィンク』や『ショーシャンクの空に』『007/スカイフォール』の名手 ロジャー・ディーキンス )もさることながら、編集をイーストウッド組の ジョエル・コックス が担当しているおかげ、でもある。

サブ
▲ 反目するケラーと事件担当のロキ刑事(ジェイク・ギレンホール、左)
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 イーストウッド監督のタッチに似てるから、って何がいいってワケ? なんて反動的な(反抗的な)意見や反論をぶつけてくる人もいるでしょうね。ウフフフ・・・コレが映画が進むにつれて、リアリスティックな効果を生んでいくんでゲス。  〔続く〕

  ■ 5月3日より東京・有楽町丸の内ピカデリー、
              札幌シネマフロンティアほかにて全国ロードショー
                           ポニーキャニオン&松竹共同配給  ■



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  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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新作プレビュー  『 プリズナーズ 』  <後編>

◆ 誘拐事件の負の連鎖を巧妙に描いた秀作サスペンス

 (この映画に限らずですが)ストーリーを何も知らずに観るのが一番ショッキングでよろしい--だからこの映画を虚心で味わいたい人は、 【『プリズナーズ』 <前編> 】 だけを読んで、この<後編>はお読みにならない方がいい ( 劇場で映画を観てから、読んで下さい )。

 でも、<前編>の冒頭で、被害者の ヒュー・ジャックマン のオヤジが・・・と書いちゃったので、それについてちょっと述べなくてはいけない。というのも、ストーリー上の新しさ(新趣向)がそこにあるからで、そこに触れなきゃお話にならないわけです(もちろん、真犯人とか後半以降の展開とか、ネタバレに繋がるコトは書きませんが)。


サブ3
▲ ケラーはアレックス(ポール・ダノ、下)をつけ回した揚げ句に・・・
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 つまり--ジャックマン扮する少女アナの父・ケラーは、一旦、警察が容疑者として逮捕し、その後、釈放した青年アレックスを誘拐犯だと決めつけて、ある場所に監禁し、「娘の居場所を吐け!」と脅迫に及ぶのです、それも目をおおうような暴力を使って・・・。

 娘を誘拐された肉親の辛い気持ちは良く判る。ケラーの妻は半狂乱になり、家庭生活はボロボロ。しかもそれはいつまで続くのか解らぬ、〝生き地獄〟
 それを終結させるには、娘を奪回することしかない--だから責任感の強いケラーは猪突猛進する。娘を愛する、いいパパであればあるほど、その反動でアレックスに対する所業は残酷となり、
「お前が犯人だろ! 居場所を吐け!」
と詰め寄る表情はサイコ・キラーのよう。

 このサスペンス、被害者が加害者になり、誘拐犯以上に猛烈にサディスティックな罪人(悪魔)に変貌していく、という点がミソなんです。誘拐というのは、こんな感じに被害者やその関係者を悲しませ、その揚げ句に狂わせてしまう、というのをまざまざと見せつけるわけで、コレはなかなか今日的なテーマです。
 こんな世の中だから、一歩間違えれば誰でもこうなる、とも言えましょう。

 それはそうと、こういう役--娘を愛しているとはいえ、犯人ではないかもしれない人間を袋だたきにする--をヒュー・ジャックマンがよく演じた、よく受けたなぁ、と思いました。『レ・ミゼラブル』なんかで彼が築いてきた、スター・イメージ(好印象)が吹っ飛ぶような、ネガティブ(悪感情を持たれる)な役ですからネ。


サブ5
▲ フツウの今どき刑事のロキ(J・ギレンホール)も時には激昂する
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 このジャックマンの父親も人間臭いんだけど、同じように人間臭いのは ジェイク・ギレンホール 扮する刑事のロキで、このデカがまぁ、そこそこ一生懸命やるってタイプのフツウの男。
 ロキが所属する地方署の中年署長は、捜査の進め方やマスコミ対策がいい加減。そんな大ボケ署長にロキ刑事は毒づいたりするんだが、彼も結構、行き違いやミスで捜査のポイントを見過ごす。あと一歩踏みこんで調べれば、重大な証拠を発見できて「一件落着!」となるところを、「ダリィ~なァ~」って感じでパトロールしてるから、決定的な瞬間をまんまと見逃す。

 この辺りがリアルでよろしい。

 テレビの刑事物やアメリカのポリス・アクションに出てくるような、飯も食わずに犯人を追っかけて、勘をはたらかせてヒントを摑み、たちまち事件を解決に導く、てな 出来スギの熱血デカさん ではないところが良いですね。普通はこんなもんでしょう。
 「どうせ〝他人の不幸〟だ、解決したって一文にもならねぇ」とそこまでシラケきってはいないけど、とにかくギレンホールのフツウの刑事像は(ちょっと焦れったいけれど)〝共感〟できやした。

 劇中、尾行するギレンホールの刑事をジャックマンの親父が叱り飛ばすシーンに、冷たい氷雨が降っている。氷雨も降るし、雪も降る。ペンシルヴェニアの田舎町はどうも寒々しい風情で、そうした季節感も謎めいた誘拐事件を索漠と盛り上げている。

   ■ 5月3日より東京・有楽町丸の内ピカデリー、
                 札幌シネマフロンティアほかにて全国ロードショー
                            ポニーキャニオン&松竹共同配給  ■



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