映画の語り部・淀川さんの想い出 < その1 >

◆ ハイ、またお会いしました・・・

 「淀川さんの想い出」つったって、個人的な思い入れはないし、原稿を依頼したり、受け取ったり、といった仕事の上でのお付き合いもない。ただ映画ライターをしていて、各映画会社の試写室に映画を観に行って、その都度、そのお姿を遠くから拝見していたってことにすぎないわけで、そんな程度の事だから「想い出」もなにもないのだが、最近の若い人たちは 田中角栄 すらも知らないというから、ジャズめが抱いている 淀長 ( ヨドチョー、淀川さんのニックネーム。あと〝サヨナラおじさん〟ってもありますね)さんの印象や想い出を書いておいてもいいだろう、と思って、久し振りにブログに載せた次第です。


 今から40年ほど前、中学に上がるか上がらないか、ってあたりから、ジャズ野郎はテレビで放映される映画を見始めましたが、その頃、淀川さんはすでに万人に映画を紹介する、有名な映画解説者であり、博識な映画評論家でありまして、なによりその独特な語り口が楽しいスピーカー( 話芸の持ち主 )でありました。今、テレビ朝日の 「日曜洋画劇場」 (日曜夜9時)の枠では映画をたまにしか放送しなくなりましたが、この番組が絶好調の頃、オープニングとエンディングに登場してその日に放送する映画の紹介を、見どころや監督・スターの話題とともに面白可笑しく伝えていたのが淀川さん。

 そのやや早口でユーモラスな語り口は名人芸の域で、モノクロ・サイレント時代の明治・大正期から昭和の戦前戦後にかけてずっと映画を観ており、大量の映画の記憶を有しているから話題も教養も豊富(確か、生まれた直後の記憶があるとかで、自分が産まれてきた時、母親の胎内から押し出されてくる産道の映像を覚えている、とかなんとかスンゴイ事を語ってました・・・まさに〝ホンマでっか!〟です)。

        だから子供心にも、映画といったら淀川さん。

 映画評論家・淀川長治 という名は、あの人なつっこい黒縁メガネのお顔とともに脳裏にしっかと刻み込まれたのでありました。   〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その2 >

◆ 名作がテレビで次々と放映された昭和 51 年春・・・

 ジャズ野郎が小学校から中学に上がった年(昭和51=1976年)の春には、テレビで アラン・ラッドの西部劇 『シェーン』 (1953・米) や ナタリー・ドロン ルノー・ベルレー 『個人教授』 (1968・仏) などの名作映画が放送されて、それらを観て「あー、映画って面白いなあ」と思ってたら、映画評論家の 荻昌弘 さんが解説をしていたTBSの 「月曜ロードショー」007シリーズの第1作 『ドクター・ノオ』 (1962・英) が放送されて、それで一遍に ジェームズ・ボンド にイカレた。ジャズと同じ世代の50代前後の人で、映画好きになったって人には、大体この辺りで007映画に出会って夢中になった向きが多いんじゃないかな。

 『ドクター・ノオ』 と 『サンダーボール作戦』 (1965・英) は「月曜ロードショー」で、 『ゴールドフィンガー』 (1964・英) は 水野(晴郎)さんの 「水曜ロードショー」(日テレ) での放映だったと思うけど・・・といった具合に、当時、テレビで映画を紹介したり、解説したりしていた人達には、荻昌弘とか水野晴郎とか 小森和子(小森のオバチャマ) なんて人がいて、あと評論家じゃないけど、フジテレビの 「ゴールデン洋画劇場」 で解説していた「イエ~!」のかけ声でお馴染みの俳優の 高島忠男 がいました。小森のオバチャマは、(テレビ放映の)映画の解説はしていなかったけど、情報番組やワイドショー的な番組で映画について話していた、と記憶してます。
 ただ、映画のコアな話(評判、批評)ってより、男と女の話(色恋沙汰の話)が多くて、ガキのジャズめは苦手だった(小森さんの〝男女の話〟は、昭和60年代になって、より体験的に、より濃密に、より下世話になっていきましたな)。

 とにかく、当時、映画解説者にはこういう人たちがいた。で、その中でも、淀川さんはピカイチだった。やっぱり、名人芸と言われた、あの語り口が魅力的だった。そして、今、お笑いの若手芸人達が売れようとしてキャッチーなウケるギャグをゲットしようと必死だけど、淀川さんにはすでにそれがあった。

 それは、もう、あまりにも有名な「日曜洋画劇場」のシメの台詞--

        「 ハイ、ではまたお会いしましょう。 サヨナラ、 サヨナラ、 サヨナラ 」

 この「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の後、画面はフェイドアウトして、スターの声をアテた声優さんやスタッフのクレジットが映し出されるのだが、そこにかかっていた重々しい曲が コール・ポーター 作曲の 『ソー・イン・ラブ』 。このクラシック然とした荘厳なエンディング曲を聴くと、

   「ああ、日曜も終わりだな、明日からまた学校かァ・・・」なんて気分が暗くなったもの。

 でもこの曲がコールー・ポーター作曲だったってのは、今から10年ほど前に公開されたポーターの伝記映画 『五線譜のラブレター』 (2004・米) で初めて気づいたんですけどね。軽くてお洒落でセクシーなポーター調と違うんで、「エッ、アレってコール・ポーターなんだァ?!」と、ちょっと意外に思いましたが・・・。   〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その3 >

◆ 面白かった、年末の正月映画特番

 映画業界の稼ぎ時は、昔からお盆と正月。つまり夏休みの時期と年末年始で、コレにかつての邦画メジャー・大映のプロデューサーの 加賀四郎 (加賀まりこの尊父)が名づけたといわれる ゴールデン・ウィーク (4月末から5月の連休)を加えた3季だと言われている。

 特に正月にはズラッと興行価値の高い大作や秀作がラインナップされますが、ジャズ野郎が中学生の頃は、その公開作の紹介をテレビで特集番組を組んでやってました。こういう番組、今も時々やってますけど、ジャズめが観ていた時のそれは、並んだ作品が良かったせいか、なにかとっても豪華に思えました。正確な番組名は忘れちゃったけど、確か 「お正月映画全部見せます!」 ってヤツです、日テレ系の(他局でも同種の特番があったと思う)。
 当時はまだ アラン・ドロン の全盛期(のやや落ち目になり出した頃)で、お正月映画っていえばドロンの新作がかならずフィーチャーされていた。憶えているのだけでも 『フリック・ストーリー』 (1975・仏=伊 ) 『ブーメランのように』 (1976・仏)とか。大作では 『キングコング』 (1976・米、ジョン・ギラーミン監督版) 、『カサンドラ・クロス』 (1976・伊=英=西独)、ピーター・フォンダの 『アウトロー・ブルース』 (1977・米)とか。いや、もっともっと有名どころがあったハズだけど、今、パッと頭に浮かぶのはこんなところ。

 ア、イーストウッド 『ガントレット』 (1977・米)も、その頃の正月映画だった! コレは初めて見た時よりも、その後、見返した時の方が面白く、楽しめましたね。オープニングの呑んだくれてヘベレケになった刑事のイーストウッドが夜明けの街を情けない格好でブラついているところにかかる、気だるいテーマ曲をあの アート・ペッパー が吹いている、なんて事は、ずっと後に気付きました。ジャズ&ブルース好きのイーストウッドだからペッパーを起用するなんて造作もないこと・・・と今なら分かるけど。

 ア、これまたついでに言うと、イーストウッドの新作 『ジャージー・ボーイズ』 (イーストウッドのミュージカル! マジか!)には感激しました! 今年のジャズめのベストワンです (9月27日公開)。

 話が横道に逸れました。とにかく、この「お正月映画全部見せます」で紹介された映画をせっせと観に行ったわけですけど、実は事前に映画誌 「スクリーン」 「ロードショウ」 で正月にどういう作品が公開されるのかは大体知っていて、知っているけど、予告編やクリップ映像を改めて見て「ワー、凄いなぁ、こんなシーンあんのか!」なんてやってるわけです。ソレが楽しかった。

 今は事前に新作の情報を入れたくないので、ネットや何かでサラッと「文字」で仕入れて、映像はあまり見ないようにしてます。観ちゃうとつまらないから・・・で、実際に観てホントにつまらないと、作り手を恨むばかりじゃなく、自分をも呪いたくなるでしょ。


                イジましいですな、映画ファンってのは。

 
 で、この「お正月映画全部見せます」には、あるお約束のオフザケがあった。そのおフザケに淀川さんが関係しているんです。さー、なんでしょう???   〔続く〕


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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

< プロフィール >
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趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
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