映画の語り部・淀川さんの想い出 < その4 >

◆ 小松政夫による、史上最笑の淀川モノマネ <前篇>

 この 「お正月映画全部見せます」 式の番組というのは、局アナや芸人さん、タレントさんがMCで出て来て、順序よく作品を紹介してゆく。大体、目立つ大作っていうのは洋画だから、例えば 『007/私を愛したスパイ』 (1977・英) とか 、『ジョーズ2』 (1978・米)とか、 『マッドマックス』 (1979年・豪、今、来年公開の新作 『マッドマックス 怒りのデスロード』製作中)あたりから紹介されていき、中頃あたりで〝男はつらいよ〟シリーズとか〝トラック野郎〟シリーズ 、加えて 高倉健&吉永小百合 が共演した 『動乱』 (1980、コレは正月第二弾だったかな。劇中、札幌は中島公園にある 豊平館 が大本営本部かなにかの軍司令部として出てくる)なんて邦画の目玉(特作)が出てくる。

 MCの局アナやタレントさんは紹介作品の間をつなぐわけですが、「お正月映画全部見せます」だとそのツナギの途中で〝淀川さん〟が出てきて(!)、作品解説をする。「日曜洋画劇場」はテレビ朝日で、当時の淀川さんはいわばテレ朝専属みたいな感じがあったけど、他局にも出てました(テレビ東京では「淀川長治 映画の部屋」って新作映画の紹介番組もやってたし)。NHKにもよく出ていた。
 でも、こういう映画特番で日テレに出てくるのはちょっと、なんだか、場違いみたいな気がするナ・・・と思っていたら、この〝淀川さん〟は淀川さんじゃないのですな。小松政夫さんのモノマネなんです。

 小松政夫 さんってコメディアン、今の若い人は馴染みが薄いかもしれないけど、植木等の運転手から芸人に転身して、植木ほかクレージーキャッツの面々とザ・ピーナッツが出ていた伝説のTVバラエティ 『シャボン玉ホリデー』 とか当時のお笑い番組で人気を博した笑芸人。
 一番有名なのは、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったアイドルの キャンディーズ がコントをやってた、テレビ朝日のバラエティ 『みごとたべごろ笑いごろ』 で、派手な猛獣使いの衣裳を着た 伊東四朗(ベンジャミン伊東) さんとともにやった〝電線マン〟のコント。

   「 人の迷惑顧みず、やってきました、デンセン音頭~ッ! 」
 とベンジャミン伊東がけしかけるように紹介すると、

   〝 チュチュンがチュン! チュチュンがチュン! 〟
 の合いの手にのせられてテンション高の小松さんがちゃぶ台に上がり、

   「 デンセンに~ッ! 雀が三羽とまってたァ・・・ 」

 と唄いながら(いや、絶叫しながら)踊り狂う、という何がなんだか分からないシュールな寸劇というかコントが人気を博した。

 かと思うと、思いっきり悲愴なポーズで小松さんがさめざめと--

    「し~らけ鳥、飛んでいく、南の空へ、ミジメ、ミジメ・・・」
   
 と唄う「シラケ鳥の唄」って定番ギャグ(っていうかコミックソング)もあって、とにかく全力投球でやってました・・・コレ、今、DVDが出てますから、そちらをご覧あれ。      〔続く〕


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その5 >

◆ 小松政夫による、史上最笑の淀川モノマネ <中篇>

 しかし、ジャズめは〝デンセン音頭〟や〝シラケ鳥〟のような派手なヤツよりも、小松さんが時々発する、小松さんならではの、特異で意味不明なコトバの数々(ギャグといえばギャグですかネ)! コイツが好きだった。
 それは大体、鼻唄を歌うような、いい調子で語られるもので--

         ♪ ニントス・ハッカッカ、ハァ、ヒジリキ・ホッキョッキョッ ♪

と、意味のないコトバを早口でポッと言う。コレがその前後の間(マ)がいい事もあって、もう腹を抱えて笑っちゃうわけです。
 「ヒジリキ・ホッキョキョ」ッて何? なんてマジメに考えちゃダメですよ! 意味なんかないんだから。コレ、すべて小松さんの巧妙かつシュールな言語感覚からくる、インスピレーションの賜物です。
「ニントス~」以外にもこういう小松コトバってあって、あと好きだったヤツ(ダジャレ)に、小松さんが他の人と喋ってて、いきなり、

     ♪ アー、アレいいねッ! アレよし、アレよし、アレよし(有吉)佐和子 ♪ 

 とダジャレる・・・アハハ、クダラね~!
 コレ、作家の有吉佐和子がその場にいたわけでも、話に出て来たわけでもない。ただ〝アレよし〟と〝有吉(アリよし)〟の語呂が似てるから、「有吉佐和子」って言ってるだけなんだけど、そんな人を突然出してくるところが凄い。

         このコトバ選び(チョイス)のセンス、天才ですな。

 でも一般的な小松政夫のイメージ(ギャグ)は、オカマ口調になってすねる--

    「シラナイ、シラナイ!」
     とか
    「ドーシテ、ドーシテ○○なの? オセェーテ」
     とか、
   十円ハゲのあるカツラをカブった小学生姿の小松さんが、母役の伊東四郎に向かって言う、
    「おカアーたま(お母さん)!」
     とか、
    ヤクザの親分に扮した着流し姿の小松さんが、子分に呼ばれて、奥から--
    「ズンズンズンズンズンズンズンズン、小松の大親分!」
    と自ら言いながら登場してくる・・・。

 そして、困った状況になって責められそうになると、両手をこめかみに当て、顔の皮を後ろに引っ張りながら、両目を細~~~く横に伸ばして--

    「ドーカ、ひとつ、長~~~い目で見てヤッテください!」

     と哀願するポーズですかネ・・・アハハハ、思い出したら笑っちゃう。

 とにかく、ジョークを言うときに、何故かオカマ口調になったり、ノドを詰まらせたようにして 「アハッ、アハッ、アハハハーーッ」 とエヅいたように笑うのが、いわゆる小松政夫流です。 〔続く〕


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
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新作プレビュー  『 フライト・ゲーム 』  <前篇>

◆ リーアム&ジャウマの〝アンノウン〟コンビ、再び!

フライト・ゲーム ポスター
▲ 『フライト・ゲーム』 ポスター (C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.


 まー、とにかくオモロかった。
 期待に反して、というか、あまり期待してなかったのが良かったのかもしれない。テレビCFを見ても分かるように、地上1万2千メートル上空の旅客機内でタイヘンなことが起こるんだが、その趣向が巧いし、描く手際が速くて、緊張しっぱなし。見ている間中、アタマの芯がジンジンいうような、そんな秀作です。
 
 おそらくこの作品でやった、携帯やメールなど最新のITアイテムを使ってたたみかけるように描いていく手法、って今後のサスペンスの流行(はやり)になっていくでしょう。
 でも、この映画くらい、それを巧く使いこなした作品が生まれるか、どうかは判らない・・・そう思うほどに『フライト・ゲーム』の語り口は、お世辞抜きに、巧かった。

 そして監督の ジャウマ・コレット=セラ と主演の リーアム・ニーソン の息がピターッと合っている。コレがあまりにも〝合っている〟ので、二人が最初に組んだ 『アンノウン』 (2011) ってのをDVDで見てみたら、コレがすんごいですな! 

    なんでこんなすんごいサスペンスの傑作を誰も教えてくれなかったんだァーーーッ! 

って見ながら叫びましたもの・・・といって、勝手に映画の情報を仕入れていなかった(疎かった)ジャズ野郎が悪いに決まってるんですが、この映画って 東日本大震災 があった後の公開で、最初の邦題『消息不明〔原題:UNKNOWN〕』が震災で行方不明になった方々を連想させる、という理由で、タイトルが原題の〝アンノウン〟に変えられたりした。ワーナー映画の作品で、ワーナーさんは試写会に呼んでもらえるんだけど、何故かコレは招待が来なかった。ま、そういう事はしばしばあるので別にいいんだけど、あの震災の時期だけにヒッソリ公開され(ヒッソリ中止になっ)たせいかもしれない、同じワーナー作品の(これまた大傑作だった) 『ヒア アフター』 (2011、クリント・イーストウッッド監督)もそうだったから・・・。

 なにが〝すんごい〟って、『アンノウン』はアタマ(オープニング)からお終い(エンディング)までいいんですな。しかも--こういうとちょっと映画通の人は勘違いしちゃうかもしれないけれど-- アルフレッド・ヒッチコック監督の映画 のイメージや〝記憶〟をこんなに巧く劇中に再現したサスペンス映画っていうのは、ちょっと稀有なんじゃないですかね。
 ヒッチコックのイメージとかなんとかっていうと、大体の人は 『サイコ』 のシャワールームの殺人シーン をそれらしく真似て撮ってる、とか、断崖絶壁の上に主人公と犯人がいて格闘しながら落っこちそうになってハラハラさせる、とか、そういう映像的なイメージ(の模倣。ブライアン・デ・パルマ監督がよくやる)を思い浮かべると思うんですが、ジャウマ・コレット=セラ監督(この際、この長い名前を覚えましょう!)のやり方はそうじゃない。
 あくまでも『アンノウン』のプロットを正確に忠実に再現(描写)していって、その過程でヒッチコック映画に出て来るようなシーンやシークエンスにぶつかったら、ちょっとだけソレを匂わせるサインを見せる。そう、ほんのちょっとです。ほんのちょっとヒッチコックの匂いを醸し出す・・・だから、もしかしたらそれはジャズめの穿ちすぎた見方でもって、実際にはヒッチコックの真似でもオマージュでもないのかもしれない。
 しかし、それでも--

● 殺し屋に追われ屋根に逃げたリーアム・ニーソンが、落っこちそうになりながら必死でつかまる= 『めまい』 で同様な目に遭うジェームズ・スチュアート
● リーアムが写真展の会場で女房に詰問する=『めまい』の美術館で運命の女(キム・ノヴァク)を見かけるジェームズ・スチュアート
● フランク・ランジェラが○○時の画面(えづら)= 『海外特派員』 のあるシーンや 『サイコ』 でマーチン・バルサムが△△される時の階段
                         ※○○や△△は、未見の人のために伏せた部分。

 なんてあたりが出て来るのでハッとしますわな。
 その出し方に無理がなく、しかもコレ見よがしにやってないから、真似の仕方が大人です。だからヒッチコック・ファンでもそうと判らないかもしれない。ま、そんな事判らなくても、十分面白いんで、いいんですけどね。

 まー、でも『アンノウン』はリーアム・ニーソンが空港にアタッシュケースを置き忘れて、突然、事件に巻き込まれていく、というノッケ(冒頭)からしてヒッチコックですよね。コレって 、『三十九階段』 『北北西に針路を取れ』 『暗殺者の家』 『知りすぎていた男』 といったヒッチコック十八番の〝巻き込まれ型〟ですから。
 おまけにリーアムの妻が細身のブロンド美人(『北北西に針路を取れ』の エヴァ・マリー・セイント 似)だから、も ろヒッチコック・ヒロイン (金髪で長身でスレンダーで脚のキレイな、知的でホットな美女)ってわけで、ここまでやってて「ヒッチコックに寄せてない」なんて事はない。

 まだ未見の方々のために、ストーリーもなんも一切書きませんけど、絶対見てほしいですね。ジャズめはもうDVDを買う気でいます。

                             アンノウン J写
  ▲ DVD『アンノウン』 価格:1429円(税抜) 発売元:ワーナー ホーム エンターテイメント
             (C) TM & 2014 Warner Bros.Entertainment Inc. All rights reserved.
※映画『アンノウン』の公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/unknown/index.html


 ・・・なんだか『アンノウン』に入れこみすぎて、本題を忘れかけました。次回こそ、そのリーアム&ジャウマの新作 『フライト・ゲーム 』の紹介です。   〔続く〕

■ 9月6日より東京・新宿ピカデリー、
   札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかにて全国ロードショー
                                 配給:ギャガ ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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新作プレビュー  『 フライト・ゲーム 』  <後篇>

◆ 天空の密室で、ワン・オブ・ゼムを探し出す!

                             リーアム・ニーソン
        ▲ 脅迫メールの予告殺人を阻止しようとして、先手を打とうと焦るビル(R・ニーソン)
                (C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.


 「次回こそ、リーアム&ジャウマの新作『フライト・ゲーム』の紹介です・・・」と言ったって、モノが犯人捜しのサスペンスだけに、うかつな事は言えない。実際、何にも知らないで観た方が、面白いに決まっているので、あまり書きたくはないですが・・・とりあえず、出だしだけ--

〔 リーアム・ニーソン演じるビル・マークスは連邦航空調査局の調査官。彼は勤務でNY→ロンドン行きの旅客機に乗り込むが、少々お疲れ気味。だから何事もなく、スルッとロンドンまで飛んでいってくれー、と念願するが、離陸直後に事件発生。何者かが、ビルの携帯電話に、脅迫メールを送ってきたのだ。メールならば、旅客機の外、つまり地上のどこかからでも送れるわけだが、ビルに届くメールには、今現在、機内にいて、どういう顔をして、何をやっている、といったビルの一挙手一投足が詳細に書き込まれている!
 つまり--

    犯人は機内にいて、じっとビルの行動を監視しているってワケ!

 その犯人をどう捜す? 全乗客をホールドアップして、一人一人調べれば事はすむ、しかし飛行中の機内でそれをやればパニックを誘発する。じゃ、どうしたらいい? パイロットやキャビンア・テンダントに協力を求めようか・・・と考えているビルに暇を与えず、犯人は--
 「これは殺人予告だ、あと20分後に乗客を一人殺す」
 「犯人は乗客とは限らない」
 --といった、常に先手を打ったブラックメール(脅迫)を送ってくる。
  この姿なきハイジャッカー、真犯人の目的はいったい・・・? 〕


 <前篇>で書いた〝携帯やメールなど最新のITアイテムを使ってたたみかけるように描いていく手法〟ってのが、このメールによる姿なきハイジャッカーの脅迫の仕方なんですが、コレがまぁ、もう、あまりにも速くメール(の返事)が来たりするんで、「そんなにすぐにメール送ってくるのなら、指や腕はもちろん、肩が激しく動くハズだし、第一、無理だろう」なんて考えちゃう。
 リアルに考えがちなアナタなら、きっとそう思うでしょう。
 でも、今やメールの早書き&速攻送信なんてのは、JK(女子中・高生)さんなら当たり前。しかもこうしたITに強いテロ犯っていうのは、まぁ、いろんなテクを持ってるわけで・・・と、ココをあまり説明しちゃうとツマラナイから、サラッと避けます。
 そして、メールを打つのに手や指、肩が動くなんてことは、リーアムも判っていて、ヒッカケメールを犯人に送って、その着信直後、メールを読んで返事をよこそうとする 犯人の〝動き〟 を見つけるために、ありとあらゆることをやっていく・・・この頭脳戦がスリリングです。

 なにせ、乗客乗員146人 〔 THEM=ゼム 〕 の中から一人 〔ONE=ワン 〕 を探し出す闘いですからね、そりゃあ、もうタイヘンなんだ。

乗客たち
▲ 携帯や機内テレビで情況を知る乗客達・・・この中に犯人が!
  (C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.


 しかも、そんな決死&必死のリーアムの味方っていえば、善人だか悪人(犯人?)だか見分けが付かない ジュリアン・ムーア の女性客と、PC通の黒人男 ぐらい。犯人を出し抜こうとしても次々と見透かされて、逆に窮地に、どん底に追いこまれるリーアム・ニーソン。孤立無援に等しい彼に〝秘策〟はあるか!? 

 映画のオープニング--旅客機に乗り込む前のロビーで、リーアム扮するビルが飲酒癖のために視界がボヤけて、非常に不安定な感じになってる映像があるのですが、コレが不安感をあおります。アル中の後遺症だと後に判るけど、ジャズめは老眼なんで朝方、よくこんな感じになりますから感情移入しました。だから〝秘策〟はないのかもしれないリーアムに、グッと見入っちゃう。

 グッと見入っちゃった証拠に、この映画の試写を観る前、ジャズめはスポーツ・ドリンクのペットボトルを座席のドリンク・ホルダーに置いてましたが、観ている間中、一度も口をつけることなく見終えました! 8月のまだ暑い頃だったのに、飲むのを忘れてしまっていた。あまりにも引き込まれて、あまりにもハラハラしちゃって! 
    ウソだと思ったら観に行って下さい!

                             R・ニーソンとJ・ムーア
             ▲ ビルは座席を譲った女性客ジェン(J・ムーア)に協力を求めるが・・・。
              (C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.

■ 9月6日より東京・新宿ピカデリー、
   札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかにて全国ロードショー
                                     配給:ギャガ ■

      ※『フライト・ゲーム』のオフィシャルサイト http://flight-game.gaga.ne.jp/


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その6 >

◆ 小松政夫による、史上最笑の淀川モノマネ <後篇>

 そんな芸達者な小松政夫がブルーの背広を着て黒ネクタイを締めた、よく淀川さんがするスタイルで、画面に正対しつつもやや顔を傾けた感じで現れ--

「マー、マー、マー、まーたお会いしましたァ~。淀川でございます。今日はね、正月映画の、マー、粒ぞろいの作品をた~っぷり紹介しますよ~。マー、マ-、楽しみですね、コワイですね~」

 とかなんとか言ってモノ真似る。
 この時、淀川さんのトレードマークの黒縁メガネの上に、(おそらく)黒紙をダンボールに貼っつけて作った〝マユゲ〟が2本付いていて、それに紐がついており、その先が小松さんの手に握られている。で、時々、それを引っ張ると(アザトイまでに)黒紙のマユゲが上下にピョコッ、ピョコッと動く! これをオーバーに何度もやるのだ!
 コレは、淀川さん本人が映画について解説する時、お話に夢中になると「ムムッ」といった感じに眉が上下するのだが、この時の眉毛の動きをさらにアザトくディフォルメしたもので、コレにはとてつもなく笑った! 

 淀川さんの口マネ、モノマネを多くの人がやったけど、一番似ていて笑ったのは、この小松さんのモノマネだった。
 
 で、さらに面白かったのは、そうやって調子よくニセ淀川が喋っていると、いつの間にか、カメラがスッと引いてロングになり(またはカメラが画面の右側にフラレて)、そこに本物の淀川さんがいる、という展開になる! 
 本物の淀川さんに気付いた小松〝淀川〟は、だんだんと喋るトーンが落ちてきて、じーっと睨まれているから口数が減り、バツが悪いのを誤魔化すように黒マユゲをピョコつかせたりする(ココも大爆笑!)うちに、逃げて画面から消えちゃうか、何かオチを付けてチャンチャンとなる・・・ココが面白かった(今のお笑い番組やバラエティには、こういう〝演出〟がナイんだよな。ただただワーワー喋って騒ぐだけで〝趣向〟ってモンがない)。

  こういう時、淀川さんは怒った風でも笑う風でもなく、また小松さんの肩や頭をド突くようなこともせず、ただ黙ってしげしげとモノマネを眺めていた。

 この淀川さんの〝本人登場〟は毎回ではなく、確か「お正月映画全部見せます」の後のほうの時(きっと昭和52年前後の回)で実現したと記憶する。
 それまでは、小松さんのニセ淀川に、局アナとかお笑いタレントが「アレー? アナタ、本当に淀川さん?」とか言って突っこむと、小松〝淀川〟はシドロモドロになって奥に引っ込む、というような展開だった。
 それがある年の「お正月~」、いきなり淀川さんご本人が登場してきたので、驚いたのなんの。で、やたらと面白かったというわけ。

 いつしかジャズ野郎は、小松政夫がマネる〝淀川さん〟を観たいがために、この番組「お正月映画全部見せます」を観るようになりました。だからコレが見られる、年末年始が愉しみでしたね。 〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その7 >

◆ テレビ画面では大きく見えたけど・・・

 今は有り難いことに、試写会に呼んでもらって一般の映画ファンより先に新作映画を観ているわけですが、映画を好きになり始めたガキの頃ってのは、そういうもの(タダで映画を観る、それも新作を人より先に観る)に飢えていて、地元で開催される 試写会 なんかにもよく応募しました。抽選で当たったりしたら、それはもう、天にも昇るような心地でしたね。

 試写会ではないけれど、淀川さんみたいにテレビで 映画を解説している人 に会えるっていうのもかなり有頂天な体験だった。淀川さんじゃないけれど、中2の時に007シリーズの第10作 『007/私を愛したスパイ』 (昭和52=1977年)が正月映画として公開された時(昭和52年の年末)、そのキャンペーンで 水野晴郎 さんが来札した。

 その頃のボンド映画はまだユナイト映画、ユナイテッド・アーチスト作品ですよ! 

007ポスター
▲ 第1作『007は殺しの番号(ドクター・ノオ)』から第10作『私を愛したスパイ』までの日本版ポスター。長いことタンスに仕舞ってたので、折れた部分が伸びなくて・・・。このブログ記事を書いた2014年には手元にありましたが、ワケあって、私よりこのポスターを大事にしてくれる方に進呈。今、アタシの許に10枚のボンド・ポスターはありません。


 その水野さんがゲストの映画公開キャンペーンに、ジャズめも参加しました。水野さんの講演の後、握手会(握手してもらいました。肉厚な掌だった)、そして歴代ボンド映画のポスターのプレゼント(だったか、廉価な値段、確か 10枚1千円 での即売だったと思う)という、今じゃ信じられない、夢みたいなプログラムでしたね・・・だからジャズめは正規のルートで 『ドクター・ノオ』 から 『私を愛したスパイ』 までのポスター(10枚!)を手に入れ、今でも愛蔵しているわけですが、その時、初めて間近で見た水野さんはデッカかった! 背丈はそれほどでもないけど、横幅があってテレビで見るよりも大柄で貫禄タップリな感じがした。着ていた背広も覚えてる、確か厚手のツイード。 「水曜ロードショー」 でもよくこのカッコだったから、違和感はなかったけれど・・・。

 片や--間近で見た淀川さんは小さかった! エー、こんなに小柄な人だったの~、って感じでしたね。 【人生で一番長~~く居たい場所 <その14>】(7月4日付、参照) の中でも書いた、銀座の某社でアルバイトをしていた頃、築地にほど近かったその会社の周りを、お昼時か、何かの用事を言いつけられた時に外出した折りに、舗道を歩いていた老人とすれ違った。

          アレェ・・・なんか、どこかで、見たことがあるような・・・。

 すれ違ったその人には、背の高い男の人が脇についていて、その男に半ばサポート(介助)されるような感じで、ゆっくりと築地本願寺の方へ歩いていく。背中を丸めて、トボトボと歩く、その老人の俯いた顔を、遠くながらのぞき込むように見ていたジャズめは、それがあの淀川さんであることに気づいてとても驚いた。

              だって、すんごく小さかったから。

 テレビって映している人を大きく映しますよね。で、実際会ってみると、意外に小さいんでビックリする、ってのはよく聞く話。でも先の水野さんの例もあったから、淀川さんもそれなりの体格だと思っていた。それが・・・。
 かなりお歳を召しているようにも見受けられたし、歩くのが辛そうにも見えた。

 でも、ジャズ野郎が淀川さんを見たのはこの時が初めてじゃありません。ジャズめは札幌の学生時代に、淀川さんを2回ほどナマで見ているのです。〔続く〕


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その8 >

◆ 試写会に来ていた女と大喧嘩した淀川さん・・・ 〔 イ 〕

 札幌で、ナマで淀川さんを見た2回とはいずれも 試写会 で、確か最初(1回目)は中学3年の時に抽選で当たったリチャード・ドレイファス主演の 『グッバイガール』 (1978年・米)で、2度目は高校2年、ミュウ・ミュウ主演作 『夜よ、さようなら』 (1979年・仏)の時。
 おそらく映画をよく見るファンやマニアの人は、いつ・どこで・何の映画を観た、という記録(メモや日記)をつけていると思うけど、ジャズめもそうで、今、押し入れのダンボールから引っ張り出してきた昔の映画ダイアリーを見ると、それが中3、高2の時だったと確認できる。
 
それはそうと、最初の『グッバイガール』の時は別に何ということもなかった。いや、淀川さんの姿を初めて目にすることが出来て嬉しかったし、そのオシャベリ=話芸 (淀川節とも淀長節とも言われる) がとっても楽しくて、 映画も笑って泣かせる佳い作品だったから、鑑賞後はスキップするようなハッピーな足取りで家路に着いた、と記憶する。

 問題は2回目の『夜よ、さようなら』の時だった。淀川さんが客の女、つまり試写会に来ていた一般人と口論しちゃったんですな。ジャズ野郎はその現場に居合わせました。

 それは・・・とその一部始終を話す前に、その時の映画『夜よ、さようなら』のことを少し。コレはフランス映画で、私は(ご多分に漏れず)アクション映画好きの野郎(男の子)ですから、普通はおフランスのお高い映画とかヨーロッパ系の芸術映画は敬遠するんだけど、何せ、話題になる新作映画を片っ端から観ていた時分だから、そういうのも時には見て歩いてました。

 でも『夜よ、さようなら』の試写会に何故応募したのか、その動機は今もって定かじゃない。この映画の 「私は心をレイプされた」 ってキャッチコピーと、肌にピタッとフィットしたエナメル生地のテカテカしたツナギ(今で言う キャットスーツ ってヤツ)を着て、胸元はエッチにはだけているのに、表情は妙にシラケたというか、厭世的というのか、キッとしたキツい目線でもって、妙に退廃的なポスターの ミュウ・ミュウ (コレ、女優さんの名前です)に惹き込まれたのか・・・。
 思春期まっただ中の高2ですから、エッチな事には興味津々な時期ではありましたが、事前にエロい内容だって判ってたら、きっと試写会には応募はしなかったでしょう。
 「心をレイプされた」っていう、そのレイプって英語の意味も知らなかったんですから。 〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その9 >

◆ 試写会に来ていた女と大喧嘩した淀川さん・・・ 〔 ロ 〕

 やがて始まった映画 『夜よ、さようなら』 は街娼に転落した女の地獄巡りの実録ドラマで、 ミュウ・ミュウ は男に人生を狂わせられる役柄。だから彼女はシラケた冷めた表情をしてるわけ。

 で、何がビックリしたって、コレで初めてフェラチオ(英語じゃ、ブロウ・ジョブ、ですな)を見たってことです。
 青くさい時分だから、ジャズ野郎としては読んじゃいけない成人誌(読んじゃいけないったって、読みますわな)で 〝知識〟 としては頭に入っていたけれど、実際に(映画で)見たのは初めて。
 しかもこの映画でのソレは、パリのヤクザが裏切った子分(だったか)をリンチした揚げ句、ボスがそいつに自分のモノを無理矢理咥えさせる( もちろん、ボカシがかかってます )って趣向で、もう、まったくエゲツない事、この上ない。

 「男が男にヤッテどうすんだッ!? このオッサン、いったい何させてンだヨ~~~!」
 
 とジャズめは心の中で叫び、ドギマギしつつ、なんとなく目を伏せるような感じに・・・。だって、都会で女性が転落していく話だから試写の参加者は 圧倒的に女性 、それも若いお姐様方が多かった。そんな中で見ていたわけですから、なんとなく、じぃーっとスクリーンを見てるってのが恥ずかしくなる・・・今のオッサンのジャズ野郎と違いまっせ、純な高校2年生、ウブな17歳でっせ。

 そんなわけで映画自体は大人が見るアダルティーな内容で、ストーリーもなにも知らずに観に行ったジャズめはひたすら「失敗したなァ・・・」と帰りのバスの中で嘆息したもの。娼婦の話だから、男と女のチョメチョメもあったと思うけど、さほどじゃない(昂奮しない)んだ。それを期待するとガッカリするんで、コレを見てない人のためにお知らせしときますが。


 それはともかく、問題は映画が始まる前の、淀川さんの講演の時
 いつもの名調子、弁舌爽やかに語りまくっていた淀川さんが、もう、あと少しで講演を終えようという時、一人の女性が淀川さんに質問をした。

 コレが、淀川さんが舞台上から「誰か、私に訊きたいこと、ありますか?」と呼びかけて、それに応じたものか--
 その女がいきなり客席から「質問がありま~す!」と大声を張り上げて、淀川さんに訊いたものか--

 ハッキリとは覚えていないんだけど、とにかく手元に質問者用のマイクも来ないうちに、その女は大きな声で壇上の淀川さんに話しかけた。その質問内容はこうだった。

「淀川さんは、〝世の中に嫌いな人はいない、みんないい人〟、とおっしゃってますが、
                            それなら何故結婚しないんですか! 」

 〝世の中に 嫌(きら)いな人 はいない・・・〟は〝世の中に 嫌(いや)な人 はいない〟だったかもしれないが、コレはラジオなんかで常々話されていたことで、淀川さんの本にも 『私はまだかつて嫌いな人に逢ったことがない』 ってスンゴイ題名のがあるから、まぁ、淀川さんご本人の信条だったのでしょう。
 〝私はまだかつて嫌いな人に逢ったことがない〟だって! ウッソだろー、とは誰しも思うことで、淀川さんに自作映画を絶賛される前の 北野武 ( ビートたけし ) 監督なんか、

   「嫌いな人に会ったことがない、だってよ。ふざけンな、このヤロー! 
              偽善者もいいトコじゃねぇか! 冗談じゃないヨ!」

 などとよく毒づいていたもの。

 だから、試写会で淀川さんに質問をぶつけた女にも、そういう思い(不信感)があったのかもしれない。
 かなり強い調子でその女は淀川さんに訊いていた。その声はちょっと怒声に近く、不敬な響き すらあった。〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その10 >

◆ 試写会に来ていた女と大喧嘩した淀川さん・・・ 〔 ハ 〕

 女から不躾に質問された淀川さんは、(ムッとしたとは思うけど)極めていつもの調子で、笑いを交えて言い返した。ただ、何と言って返したのか、その辺がよく覚えていないが--

            「私、ゲイだから結婚しないんですヨ~」

 とは言っていなかった(当たり前か)。
 公衆の面前で淀川さんがそんな回答をするわけがないし、ジャズ野郎がそのこと( 淀川さんの ホモセクシャル )を知ったのは、もう、ずっと後のこと。
 コレはずっと後、別の講演会だったか、雑誌のコラムかで、淀川さんが言ってた(書いてた)事ですが--

 〝映画評論家でテレビに出ているといっても、食べられるようになったのは50歳を過ぎてからなんです。
 やっと普通に生活が出来るようになったと思ったら、もう50歳を過ぎてしまいまして、婚期を逸してしまいました〟

 もし、この時の無礼な女の質問者にマジメに答えるとしたら、こんなところじゃなかったか、と思う。

 そしてコレもこの『夜よ、さようなら』の講演の時かどうかは定かではないけど、

「よくワタシに〝小森のオバチャマと結婚すればいいのに〟なんて、無責任なコワイ事を言う人がいるんですよ。
 そんなアナタ、いけませんねぇ。
 そんなんで、ワタシを厄介払いしようとしてもダメですよ。アー、コワイデスねぇ

 てな意味の事を話していた記憶もある。そうそう、確か質問をした無礼な女にもそんな風に答えて、会場の笑いを誘っていたような気もする。

 普通なら、その笑いが出たところでチャンチャンとなるのだが、その無礼な女は、淀川さんがそんな風に笑いにしてケムに巻いたことが許せなかったのか、凝りもせずに

「先生、そんな風にゴマ化さないで、チャンと答えてください! 
 世の中に嫌いな人がいないんでしょ、なら、誰とだって結婚できるんじゃないですか! 嫌いな人がいないなんて、嘘でしょ! 
 先生は嘘つきですネッ! 
 テレビに出ている人が嘘ついていいんですか!」


 と、さっきよりもかなり辛辣な言葉の数々を淀川さんに投げつけた。
 そして淀川さんからの答えを待たずに、ベラベラと不満めいた事(訳の分からない事)をクッちゃべり始めた・・・。 〔続く〕


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映画の語り部・淀川さんの想い出 < その11 >

◆ 試写会に来ていた女と大喧嘩した淀川さん・・・ 〔 ニ 〕

 食ってかかるようにしゃべり出した女に対し、当初、淀川さんは何か言葉を返していたが、
 「どうもこの女はオカシイ人のようだ」
  と気づくと、かまうのを止め、聴衆に向き直って、映画の話を続けようとした。

 ところがその女はさらに食い下がって、大声で淀川批判を言い始めた。
 「バカヤロー!」「ウソツキーッ」の類の暴言まで発し始めた。
 
 ココにいたって、無視するつもりだった淀川さんもさすがに腹を立てて、

          「アンタ、いい加減にしなさい! 礼儀をわきまえなさい!」

  とかなんとか言って怒り出し、壇上と客席でけたたましい言い合いが始まった。

 ジャズ野郎はこの時、たまたま壇上に近い前列の右側の席にいて、その無礼な女はジャズめの2、3列前の舞台袖に近い左側に座っていた。だから「どんな女なんだろー!」と後ろから顔(横顔)を見てやったらば、30代後半くらいの、それこそ婚期を逸した感じのオバサンに見えた。なにかちょっとインテリ風で、身なりをかまわない感じ(地味な格好をしていた)で、髪は手入れをせずにフケだらけ・・・みたいな無精な女っているでしょ、ああいうタイプだった。

 で、壇上の淀川さんと女の口論が高まってきて、その女が立ち上がって演壇に近付くような感じにもなり、場内が騒然とし始めたとき、ようやく係りの人が出てきて女を抑えた。確か退場させたんじゃなかったかな・・・こういうお騒がせな人物がいちゃ、映画なんか楽しめませんもんね。

 こんな一幕はあったけど『夜よ、さようなら』はその後、無事上映されました。でも映画よりもこっちの方が面白かったことは確か (※)


 それにしてもこの一件はこの女が悪い。
「何で結婚しないんですかーッ!?」なんて言われたって、そんなの大きなお世話だし、大体、その事は映画と何のも関係ない。なのに、その女は淀川さんにそんなムチャブリをして大暴れした。

 でも、そんなイカレた女にムキになって淀川さんもつっかかっていったんだよなぁ。
 まだ若かったのか。


 とにかく血相変えて怒った淀川さんを見たのは、後にも先にもこの時が最初で最後。後にライターになって映画会社の試写室に通うようになった時も、テレビでもああいう淀川さんの激した顔ってのを見た覚えはありません。

 〝嫌いな人はいない、みんないい人ばかり〟ったって怒らない人間なんていないんだから、温厚だった淀川さんでも怒ることはあっただろうけど、随分、貴重なシーンを見たな、と今でも時々思い出します。      〔続く〕 

※ 書きながら思い出したのだが、その女は最初から淀川さんに〝何故結婚しないんですか?〟とは言わず、何ごとか話しかけて壇上の淀川さんと言葉を交わし、やがて激昂していった--というのがその場の正確な推移だった。
 だが、女が淀川さんに〝何故結婚しない? すればいいじゃないですか!〟と詰問し、それに淀川さんが立腹してケンカになった、という場面は実際にありましたね。今から30数年前の出来事だから、正確には覚えていないけど、もしこの時-- 昭和55(1980)年7月24日、札幌で行われた『夜よ、さようなら』の試写会に参加した人で、このケンカを覚えている方がいたらご一報下さい。
 試写会の場所は、道新ホールだったか、共済ホールだったか・・・。


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○ 追悼コラム ロビン・ウィリアムズ < 前篇 >

◆ 喋り続けた、〝悲しみ笑い〟のピエロの死

 淀川さんについては、高校時代にそんな想い出があって、十数年後、同じような(といってもジャズ野郎と淀川さんとは天と地ほども違いますが)仕事をすることになるわけですけど、その映画ライターを始めた、ほんの駆け出しの頃--平成2 ( 1990 )年、映画雑誌の編集者に時間と場所を教えられて観に行ったロビン・ウィリアムズ主演の 『今を生きる』 ( 1989年、ピーター・ウィアー監督 )の試写会で、淀川さんは上映前に解説をしていて、これがナマで講演する淀川さんを見た最後ということになる。
 この時も、そのシャベクリの巧さにやたら感心して帰ってきた記憶がある。

 もちろん『今を生きる』には感動しましたよ。ロビン・ウィリアムズはああいう役がピッタリだ。一見、ふざけた型破りで不埒な破天荒ヤロウに見えて、その実、人情深くて善い人って役が・・・。

 で、そのロビンさんも亡くなってしまいましたね。突然で驚いたけれど、内心では「・・・やっぱり」とも。やっぱり、というのは、「やっぱり自殺か」という意味です。

 ロビン・ウィリアムズの経歴はウィキペディアを参照されたし、ですが、スタンダップコメディアンとして頭角を現し、テレビのコメディ番組 『モーク・アンド・ミンディ』 で人気者となった当時、彼はすでにドラッグとアルコールに溺れていてヤバかった。
 そしてちょうどその時、人気バラエティ 『サタデー・ナイト・ライブ』 で超人気者であり、ロビンとも友人だった、あの ジョン・ベルーシ がヤク中で急死した。友人の死をいたく悲しんだロビンは、これを機にドラッグと酒を止めて立ち直り、テレビやスクリーンに復帰する・・・とかつて情報誌に書いた記憶があるんですけど、だから最近も再びドラッグやアルコールにハマッていて、その治療のために入院していた、という報道をネットで読んで、やっぱりなぁ、と・・・。

 一度ドラッグにハマると脳が冒されて、どんなに頭や感情で止めようとしてもどうしようもないらしい。生涯、治らないそうですね。昨今、悪評高い危険ドラッグなんかもっとタチが悪いらしいから、くれぐれも使用しちゃいけませんな。

 でも、ドラッグやアルコールに溺れたという過去だけでなく、そうした中毒禍の過去がなくてもロビンさんは、一風変わった人でした。この手のアメリカ芸人というか、(スタンダップ系)コメディアンといった人たちは、とにかく ハイ (ハイ・テンション)で ワイルド で、よくヤリ過ぎな言動・行動が多く、特にバカ陽気な人なんかは、いつまでも、ずーーーーーっと喋ってる

            ロビン・ウィリアムズもまさにそういう人でした。       〔続く〕


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○ 追悼コラム ロビン・ウィリアムズ < 後篇 >

◆ 自殺という自己救済を選んだクラウン ( ピエロ )

パッチ・アダムス J写
▲ DVD 『パッチ・アダムス』 ( 1998年・米、トム・シャドヤック監督 )
  価格: 1429 円( 税抜 )
  発売: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  (C) 1998 Universal Studios. All Rights Reserved.


 そう、ロビン・ウィリアムズはそういう人でしたよ。といっても、一対一でインタビューしたことはないんですが、アレは 『フラバー』 ( 1997年・米 )の時だったか、来日した時、記者会見に行って彼を間近に見たことがあります。

 モー、凄いんだ。出だし(登場)からして ハイ なんだ。何かのモノマネか、劇中の人物になりきった感じなのか、とにかくバババババッと喋りまくって、動き回って、止まらない!
 マシンガントーク が彼一流の芸というかトレードマークなのは判るんだけど、それにしても喋って、喋って、喋くりまくる。それがただただ騒がしい。
 日本のマスコミって、(お決まりの)テレビ・新聞・雑誌の記者さんとか芸能レポーターとかジャズめみたいなどーでもいい映画ライターもいるけれど、いわゆるベテランのエライ先生方(映画評論家)もいるわけで、そういう方々は最初はつき合って笑っているけど、そのうち、ムッとし始める。
 笑わせたり、陽気にふざける部分もあっていいけど、映画の話(作品のテーマとか、こう演じたという演技の話とか、観客にここを見てほしい、といったマジメなお話)はちゃんと話せよ、という雰囲気ってのが自然と漂ってくる。
 「空気を読め」 じゃないけれど、ま、普通は分かりますわな、そういうの。アメリカンとジャパニーズ、民族の違いはあっても、ね。

 ところがロビンは止まらない、オフザケを延々とやり続ける。正直、ジャズめも呆れて、「あーあ、もう帰っちゃおうかな」なんて思ってウンザリしました。

 ただその時、どこかの記者かライターの女性が隣の知り合いに、

 「ねぇ、ねぇ、ロビンって、アレ、病気らしいよ。躁鬱病なんだって。だから喋りが止まらないらしいの」

 って話しているのを聞いてしまった。
 あー、そうか、なるほど・・・そうだよな、いくら陽気なコメディアンったって、あんなにハイなのは「異常」だよな・・・とジャズ野郎は理解しました。

 で、そういうハイとローの落差が激しい症状の人ってのは、ローの時には気分が塞いでメチャクチャ辛いらしい。

 躁鬱病が原因だったかどうか、詳しくは知らないけれど、やはり自殺した上方の落語家・桂枝雀さんもああいう感じじゃなかったのかな。

 人を笑わせる人(芸人)ってのは、仕事の裏側や私生活の部分で孤独になると猛烈に凹んだり、暴力的(加虐・自虐)になったりするらしい。人をワンワン笑わせるパワーは、それが一転してダウンナーな状態になると、その反動でもってグングン落ちこんでいく。
 明と暗 -- その極端な情動の変化に堪えられなくなって、自死を選ぶ ・・・ 聞きかじりの知識ですが、なにかロビン・ウィリアムズもそうした病的な自分(内面)に耐えられなくなって、死を選んだんじゃないかな。
 初期の パーキンソン病 でもあったというが、ソレって脳の病気だから、かつて病んだドラッグやアルコールの影響もあったのかもしれないけれど、彼にはもともと精神的な疾患というものがあったのかもしれない。

 いずれにせよ -- ロビン・ウィリアムズは映画やトークでとても愉しませてくれました。

 それについては「ありがとう!」というしかないし、訃報が出た直後、アメリカでもロビンの自宅やハリウッドの 「ウォーク・オブ・フェイム」 でロビンの手形に花束を備えるファンがいっぱいいた。

 亡くなって、ちょっと時間が経ちましたが、日本のアナタのファンの一人として、謹んで冥福をお祈りします。

              さよなら、楽しい人--
                        さよなら、悲しい人--



              パッチ・アダムス
              Robin Williams   〔 1951 - 2014 〕

     ▲ 『パッチ・アダムス』で小児ガンの少年を癒す破天荒なインターンを演じたロビン。
       (C) 1998 Universal Studios. All Rights Reserved.


P.S.  先日も、ロビンに関するこんな記事がネットに出てました。
    「故ロビン・ウィリアムズ、親友への最後の電話で「I love you」を連発していた。」
      http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0923/tec_140923_0264975319.html


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新作プレビュー  『 ジャージー・ボーイズ 』  < 前篇 >

◆ あのイーストウッド監督による、まさかのミュージカル!?

ポスター
(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT


 今や監督としての存在感が大きくて、若い人などはこの人がかつてウエスタン(『荒野の用心棒』)や刑事アクション(『ダーティハリー』シリーズ)でヒーローを演じた俳優(スター)だったなんて事、知らないんじゃないかとすら思える クリント・イーストウッド
 彼は音楽マニアで特にジャズやブルース、カントリーなんかに精通していて、特に ジャズ は名サックスプレーヤーのチャーリー・パーカーの伝記映画 『バード』 (1988)を撮るほどの〝狂〟だし、劇場映画監督第1作の 『恐怖のメロディ』 (1971)ではエロール・ガーナーの名曲「ミスティ」を 、『ガントレット』 (1977)ではアート・ペッパーを起用したりとマニアぶりを遺憾なく見せている。
 また 『センチメンタル・アドベンチャー』 (1982)では自分の息子(カイル・イーストウッド)と親子共演を果たし、大陸を流れ歩くカントリー・シンガー親子のしがない旅を切々と綴る、といったように音楽モノには強い。

 だから・・・そういう音楽好きのクリントだから、 ミュージカル を撮る、ってのも別に驚くには当たらないのかも知れないが、でもミュージカルってのは音楽っていってもちょいと違ってまさぁーね。

 ジャズもブルースもミュージカルも、アメリカが誇るアメリカ発祥の音楽(ジャンル)だけれども、ミュージカルはなんというか、軽薄なまでに(そこがいいのだが)派手で、ダンスなんか群舞でもって出演者総出でワイワイ踊り狂う、ご陽気なもの。
 片やイーストウッドが撮る音楽モノは『バード』にしても『センチメンタル・アドベンチャー』にしても、非常に個人的で、孤独な個人の日常を淡々と綴っているよな内容で、デーハーな音楽シーンはあまり見られず、ミュージシャンが成り上がっていく、心弾むワクワクするようなサクセス・ストーリーとはまったく違う。むしろ、人間心理の暗い側面や、索漠とした人間存在の情況を淡々と描いていく、という感じだから、それと180度対極にあるミュージカルを撮るといっても、一体全体、どんな風に撮っているんだろー??? と思っていたら、意に反して、あまりにも当たり前に、ストレートに、まっとうに撮っているので、これまたビックリ!!!

 エー、あの暗い地平のヒタヒタをそのまんまヒタヒタと撮るような、素っ気なくもあり、一見味気なくもある 〝イーストウッド調 (または、イーストウッド節)〟 といっていいような、スタイルはどこいったの? と見始めた当初は、いや、物語の中盤過ぎまでは思っていましたな。

 それが・・・・と 〔ココから褒めまッせ!〕 この先を語る前に、ストーリーをば簡単に。

〔 題名の〝ジャージー・ボーイズ〟ってのは、ジャージを着てるガキども、って意味じゃ、もちろんない。ジャージーはニュージャージー州、その郊外にある町・ペンヴィルの少年たちって事で、これすなわち往年のポップ・グループ〝ザ・フォーシーズンズ〟を意味する。フォーシーズンズは、今でもCMでよくBGMに使われる『シェリー』とか『恋はヤセがまん』等のヒット曲を出して1960年代(ザ・ビートルズ登場前)に一世を風靡した。この映画は、地元で不良少年として鳴らし、片や夜は地元のクラブに出てアマバンドとして活躍していた彼らがヒット曲を連発してスターダムを駆け上り、ロック・スター並の有頂天人生を謳歌しながらも、仲間内でのトラブルや借金問題が露呈して苦節を味わう・・・という〝バックステージ・ドラマ〟であーる 〕

 エッ、いつものストーリーと書き方が違ってる、コレじゃ概説じゃねえか、って?! 
 その通り!
 ダレダレが出て来て、どうなって、こうなってって書き方はしたくないんです。ホントは ザ・フォーシーズンズ の物語ってのも紹介したくない。そういうのを全く知らないで観たほうがサプライズが倍加しますから。

 でも ・・・ それだと書くことがないから、やっぱり書いちゃう( ホントは書きたい )わけですが、そのザ・フォーシーズンズは4人組のグループですが、ソロの(メイン)パートを担うのは フランキー・ヴァリ

 フランキー・ヴァリ・・・ってぇと、ジャズ野郎の世代では、ジョン・トラ(ボルタ)&(オリビア)ニュートンジョン 『グリース』 (1978・米)ですな。あのノー天気な60年代学園ミュージカル(ベトナム戦争前の明朗快活さ!)の中で、当時のハイスクーラーの憧れのアイドルって感じで紹介され、本人出演もしたのは同じ〝フランキー〟でもフランキー・アヴァロンの方。
 ヴァリさんはというとタイトル曲の「グリース」をしっかとご提供。この映画をリアルタイムで観、フィーチャーされた名曲群に感化されたジャズ野郎はさっそくサントラ盤を買い求め、聴きまくりましたよ(聴き狂った、というべきか)。

 そういったわけでフランキー・ヴァリって名前を覚えていたのですが、この人がザ・フォーシーズンズの一員だったって事は、この映画を観るまで知らず、しかもこの人が、ジャズ野郎が愛する名曲を最初に歌った人だってこともこのイーストウッド初のミュージカルで初めて知った次第。

 その名曲とは ・・・・・ < 中篇 > に続く。ついでに、この作品の褒める部分も < 中篇 > です。    〔続く〕

                      ザ・フォーシーズンズ
▲ 売れる前のザ・フォーシーズンズ。右から2人目がフランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)。
       (C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT

■ 9月27日より東京・丸の内ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにて
                    全国ロードショー  配給:ワーナー・ブラザース映画 ■


※ 『ジャージー・ボーイズ』 公式ホームページ : http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/



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新作プレビュー  『 ジャージー・ボーイズ 』  < 中篇 >

◆ 永遠の〝Can't Take My Eyes Off You〟はこうして世に出た!

 〝ついでに、この作品の褒める部分も < 中篇 > です〟なんて書いたけど、その部分はちょっと書くことが出来ないんですよね。だって書いちゃうとつまんない、観に行く楽しみがなくなっちゃう。
 だから本当は、この映画の中でいわば誕生秘話が明かされる〝名曲〟についても教えたくないのだが・・・でも予告編やTVスポットでも流れてるから、そこは言ってもいいでしょう。

           その曲とは --〝Can't Take My Eyes Off You〟
                   邦題名 --「君の瞳に恋してる」 

 今もCMやTV番組のBGMで流れるこの曲ですが、その場合のバージョンは、1980年代に ボーイズ・タウン・ギャング (BTG) がディスコ調にアレンジしたヤツですが、このカバー曲は、当時、メッチャ大ヒット! 
 ノリのいいダンサブルな曲調だから、隆盛していたディスコでもかけられまくっていたと思います。ちょうどこの曲がリリースされた1982年に大学に入り、東京にやって来たジャズ野郎は、来るべき卒業制作の資金(映画の製作費)作りのためにバイトに没入していて、そのバイト先のM歯科医院でよくこの曲を耳にしました。診察室のラジオからよ~くこの曲が流れてきたんですよね、何度も何度も。それこそ ヘビー・ローテーション です。

 で、コレが流れると、もう、M先生の後ろで治療の助手をしていたジャズめは黙っていられなかった。曲に合わせて歌いたくなり、軽快なリズムにのっかてモゾモゾと足でステップを踏む真似なんかして・・・。もう、落ち着かないこと甚だしかった。
 この時のジャズ野郎のバイトってのは、歯科医院で先生のお手伝いをする歯科助手というヤツ。コレ、素人の自分でもやれたから(当時は)資格はいらなかったんじゃないかと思うけど、どういう仕事をするかというと、患者さんを座席に案内したり、患者さんの歯のレントゲン写真を撮って現像したり、虫歯の型を取ったり、虫歯につめるアマルガム(詰め物)を練ってみたり・・・といった軽作業でほとんど楽チン。

 にもかかわらず、このM先生にはよく怒られた! 「マジメにやんなさい!」とよく言われた。
 確かにマジメにやってなかった、という自覚はある。しかし、マジメにやってはいたんだ・・・だけど、若気の至りで失敗ばかりやらかしていたのも事実。
 特に、患者さんが若い女性だったりすると、どうにも照れちゃって、その患者さんの顔が映るミラーに自分の顔が映る(鏡の中で目と目が合う)ってのが恥ずかしくて、なんとなく診察席から離れてちゃう。するとM先生に、
 「もっとコッチに来なさい!」と注意される。
 歯のレントゲン写真を撮ったはいいが、その現像に失敗して白衣を汚す(飛び散った現像液が白衣に黒々とした斑点を作る)と、
 「キミ、もっとちゃんとやりなさい! その白衣だって高いもんなんだゾ!」
 と脳天からガッツリ怒られた。

 これらはすべて、弁解の余地もなくジャズ野郎が悪いのですが、そんな事があっても、この歯科医のM先生は人情味があって、いつもバイト代を1万円余分にくれた
 そんな人、なかなかいませんよね。それほどの事をしてもらっていたのに、それを当たり前のように思って、だま~って貰っていたジャズめは、本当に世間知らずというか、恩知らずというか、バカというか。今、時々思い出すと涙なしにはいられないんだけど・・・M先生、ありがとうございました。


 普通、「君の瞳に恋してる」を巡る想い出といえば、好きな姉ちゃんと踊ったり、綺麗な娘をナンパしたりしたり、デートした時、ディスコのBGMとして流れていた、というようなロマンチックかつ欲望に満ちたエピソードだと思いますけど、貧乏な大学1回生のジャズめのそれは、こんなショボい出来事でしかない。
 そんなショボくて、ミジメで、暗~い想い出しかないにもかかわらず、やっぱり「君の瞳に恋してる」は聴けばハッピーになり、ドリーミィーで、それこそアゲアゲな気分にさせてくれるから、名曲には違いない。

                       フランキー・ヴァリ
                     ▲ 熱唱するフランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)
        (C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT


 BTG がカバーしたポップで、グルーヴィーな名曲が、いつどうやって生まれてきたのか、ってのがこの 『ジャージー・ボーイズ』 で描かれる。それをまったく知らずに観ていたので、そのエピソードが出て来た時には 身体が震えました
 もちろん、それをフランキー・ヴァリが歌うシーンも出て来ます。もちろん、オリジナルのアレンジだから、僕らが知ってるディスコ調のそれではない。

 でも泣けまっせ、どういう思いでヴァリがこの曲を歌ったか、ってのを知ったら・・・。    〔続く〕

■ 9月27日より東京・丸の内ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにて
                  全国ロードショー  配給:ワーナー・ブラザース映画 ■


※ 映画『ジャージー・ボーイズ』日本版ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/


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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

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