新作プレビュー  『 ジャッジ 裁かれる判事 』  < 前編 >

  2015年、明けましておめでとうございます。
            本年も当ブログをお引き立てくださいますよう、
                           よろしくお願い申し上げます。
    

 と、遅まきながら新年のご挨拶。いろいろ事情がありまして、年明けから2週間もたっての謹賀新年とはなりましたが、早速、今年も新作映画のご紹介からスタートします。

                   ************


◆ 『 ジャッジ 』 ・・・ デイヴィッド・ドブキン監督の最高傑作!

ジャッジ メイン
▲ 法廷の父と息子。判事のジョセフ(R・デュバル、右)と弁護士のハンク(R・ダウニーJr.)
  (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC.
  AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


  このブログで、今年最初の <新作プレビュー> で、この作品を紹介できることを、誇りに思います。

 昨年の暮れ、試写会で終わりの方に観たのがこの 『ジャッジ』 でしたが、観終わって帰る道すがら、いい映画を観た余韻に浸りました。いつもの、ジャズ野郎の早計なクセが出て「もう15年のベストワンはこれだ」などとも思ってしまいましたが、2015年、この作品以上に胸を震わせる映画が果たして出るでしょうか・・・おそらく、出る、でしょう、毎年、そうだから。
 洋画は「あ、コレいいな。コレが一番だ」と思っても、さらにいいのが出て来る。層が厚い。その点、邦画とは違います。

 とにかく 『ジャッジ』 には感動した。ジャッジ、つまり裁判でいうところの判事ですが、この場合のジャッジは地方の裁判所で判決を言い渡す役職で、言うなれば裁判長。インディアナ州の片田舎の町で40年余も判事を続けてきた、いわば町の正義を司ってきた判事の父と、大都会ロスに出て高給獲りの敏腕弁護士として名を馳せる息子の葛藤を描く・・・ま、それだけの話なら今までにもあった。
 
 だが、この映画は父の判事が交通事故を起こして被害者を死亡させてしまい、その弁護を息子が担う、という展開を見せる。

   エー、父親を息子が弁護するってェ? 
            同じ肉親同志で弁護したり、されたりしていいの? 
                       しかも父は法律関係者の判事だってのに・・・?

 などと法律関係に超疎いジャズめは思いましたが、向こう(アメリカ)ではどうもいいようですな。でないと、このドラマ、成立しませんもん。

 監督は デイヴィッド・ドブキン で、この人は劇場長編第1作の 『ムーンライド・ドライブ』 (1998)は犯罪スリラーだったものの、『シャンハイ・ナイト』 (2003)とか 『ウェディング・クラッッシャーズ』 (2005、日本未公開)、『ブラザーサンタ』 (2007)といったようにコメディ系のイメージが強い。そんな人が製作・原案を兼任、つまり自分で撮ろうとして温めていた企画だったってわけだが、コメディの監督が親子の感情をとてもデリケートに綴るシリアスな題材をやろうとした。そういう意味では、ドブキン監督、なかなか志が高い。

 とはいえ、アメリカの監督さんはコメディ系のディレクターでもシリアス・ドラマを撮れって言われれば、実に上手く撮ったりする。懐が深いし、実によく勉強している。
 アメリカにおける監督の職能、つまりフィルム演出はいわば技術職で、決まった期日までに何カット撮っていないといけないって事。よって今日は最低でも10カットは撮る、となればそのスケジュール通りに、適切・的確に撮る、というのが眼目で、日本のようにいつまでも粘りに粘って撮るのが 映画監督の <演出> だ、っていうのとは違う。
 おまけに、そんな具合にビジネスライクに撮影したフィルムが、きちんと売り物になる画になっていて、繋げるとちゃんとクオリティの高いドラマになっている・・・これは大した事だし、その上で「上手い」「下手」といった評価が監督に下される。
 だからコメディだろうか、犯罪モノだろうが、アクションだろうが、ラブ・ロマンスだろうが題材を厭わずに、撮る時はきちんと撮る。その上で、この監督は喜劇が得手だ、とか、恋愛物が上手い、ってことになるんだろうけど、ドブキン監督は実に巧かった。

 今回、ドブキンさんはシナリオから関わっているので、ドラマ(映像)の細部に目配りがなされているのも当然なんだろうけど、それにしても・・・

               お見それしました! って感じでしたね。

                 素晴らしい2時間22分でした。

〔続く〕

         ポスター
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

         ※『ジャッジ 裁かれる判事』 公式HP : www.thejudge.jp

     ■ 1月17日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにて
                 ロードショー   配給:ワーナー・ブラザース映画  ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >





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新作プレビュー  『 ジャッジ 裁かれる判事』  < 中編 >

◆ 反りの合わない老父とどう向き合うか・・・法と正義、そして愛憎!

サブ ハンクとジョセフ
▲ 久々に会ったってのに、なんて顔してんだい、二人とも。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 ストーリーは、成功した弁護士のハンク ( ロバート・ダウニーJr. )が機せずして、故郷に帰らぜるを得なくなったことに始まる。それは母親の死が原因であった。

〔 妻に浮気され離婚を考えるハンクは、母死去の知らせを聞き、とるモノもとりあえず、故郷のインディアナ州カーリンヴィルへ。出がけに、幼い娘のローレンに行く先を告げる時、

            〝インディアナの誰も行きたがらない町だ〟

と言い捨てるハンク。どうも自分の故郷をよく思っていないよう。
 カーリンヴィルに到着し、兄グレン(ビンセント・ドノフリオ)や弟デール(ジェレミー・ストロング)と再会し、葬儀の集いで父とも会うが、互いに素っ気ない。
 老父のジョセフ・パーマー(ロバート・デュバル)は町の裁判所の判事で、42年もの間、カーリンヴィルの治安に寄与してきた。ハンクは今やロスで売れっ子の敏腕弁護士で、父と息子は互いに法を司るものとして話す事が山ほどあるはずなのに、二人は妙によそよそしい。きっと、過去に何かあったのだ・・・それも楽しくないことが。
 その葬儀の夜、ハンクは折り合いが悪い父と口論、激昂した父は自分で運転して外出。ところが翌朝、ハンクは父の車に何かが衝突した形跡を見つけ、ジョセフを詰問するが、やがて父は地元警察に逮捕される。
 ジョセフはその夜、車である男と接触し、その男を死亡させていたのだ。しかもその男はジョセフとは因縁のある元受刑者であった ・・・ 〕

 

 父で判事のジョセフが、この元受刑者を故意に轢いたのか、過失だったのかが裁判で争われ、いろいろあって、結局、息子のハンクが父の弁護人となる。しかし頑迷なジョセフはハンクに協力しないばかりか、憎まれ口を叩いて彼を困らせる--まずこの葛藤が見もの。
 これはどこの家庭にもある親と子の、ちょっと傍目にはバカバカしくも見える痴話喧嘩で、観ていると誰もが「そうそう、ウチもそう」って感情移入しちゃう。
 しかもジョセフは足許がふらついていて、要介護の状態。だが口だけは達者で、まったく手に負えない・・・。
 だからココには、こういう老人をどう扱えばいいのか、とどう付き合ったらいいのか、といった今日的な問題も提示されていて、深く考えさせられもする。

 そもそも父と息子ってのは仲が悪いもの。だからお互いに「しょうがねえなァ」って感じで、つかず離れず付き合うのが一番いい気がするけれど、ロバート・デュバル扮するジョセフは、昔気質の典型的なガンコ親父で、しかも厳格なる法の番人〝ハーパー判事〟だから、家の中ではハンクのみならず長男のグレンや知的障害の末弟デールにもキツく当たる。
 ハンクはそうした父のガンコさ、石頭に対してムカついていて、そのせいで反抗的なんだろうと思っていたが、徐々に明らかになっていく パーマー家の過去 (傷跡) を知るにつけ、その苛立ちは父の性格よりももっと深刻な家族の歴史に端を発していることが判ってくる。
 同時に、その家族史に起因する、ハンクの悔恨や兄グレンの苦痛、そして父ジョセフの心境というものが痛いくらいに判ってきて、胸を突いてくる。

 この映画のシナリオが巧緻なのは、これらの状況を、殊更、説明的に映示するのではなく、事件の進行に合わせて、台詞でもって少しずつ見せていくところで、例えば何度も回想場面のワンシーンを意味ありげに小出しに見せて興味をひく、というありがちな語り口を使っていないところが素晴らしい

ハーパー3兄弟
▲ 兄グレン(ビンセント・ドノフリオ、右端)と弟デール(ジェレミー・ストロング、
  左端)とハンクの関係もいろいろあって・・・。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 やがてハンクは、町一番のダイナーで高校時代の恋人サム(ベラ・ファーミガ)と再会するが、交際途中で町を勝手に出て行った過去があるだけに、ハンクは少々居心地が悪い。かつての恋人やその恋人の娘とハンクが交流するシークエンスも、一見、〝里帰りの光景〟によくあるヤツに思えるが、これがハンクの(若き日の)素行を描く上で重要なポイントで、彼の幼い娘を巻き込んでそれを説明しきっている。ココには〝あの娘は誰の子? オレの子か?〟みたいなユーモアがあって、女に手の早いハンクが我が身の不徳を思い知ってドキッとする。そんなところも面白い。

 つまり、一見、重厚な裁判劇に見えるこの映画は、里帰りした不肖の息子が、
〝過去に何をやらかしてきて、そして今何を成すべきか〟
という悔恨と贖罪を描いた再生劇として鮮やかに成立している。

           そこが一番巧まざるところだと思うんですよね。

 ハンクのように、東京に出て故郷に戻ってきたジャズ野郎にしてみれば、一切ならず共感するポイントがいっぱいあって・・・もう、とにかく上出来ですな、このホン(脚本)は。 〔続く〕


サム
▲ ハンクの元カノ・サム(V・ファーミガ)。女好きのハンクは知らずに彼女の娘に手を出して・・・。
  まったくハンクはとんだトンチキ野郎だ、しかもその娘は・・・。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

         ※ 『 ジャッジ 裁かれる判事 』 HP : www.thejudge.jp

    ■  1月17日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにて
                  ロードショー     配給:ワーナー・ブラザース映画  ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
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新作プレビュー  『 ジャッジ 裁かれる判事』  < 後編 >

◆ フランク・キャプラ映画の芳香とR・ダウニーJr.〝 稔りの時 〟

判事ハーパー
▲ 『ゴッドファーザー』(1972)のトム・ヘイゲンや『地獄の黙示録』(1970)のキルゴア中佐、
『勇気ある追跡』(1969)ではならず者ネッド・ペッパー、『鷲は舞い降りた』(1976)ではチャー
チル暗殺作戦の失敗の責任を取って自決するナチ将校、TVシリーズ『将軍アイク』ではアイ
ゼンハワー将軍などなど、その長いキャリアの中で印象深い役柄をいくつも演じてきたロバ
ート・デュバル。『パパ』(1980、ルイス・ジョン・カルリーニ監督)という小品ではガンコ親父
(軍人役)を演じていたが、『ジャッジ』のジョセフ役はこの〝パパ〟が年老いた姿とも言えます。
 (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT
 INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 〝自分の居た場所に還ろう〟--ってビートルズの 「ゲットバック」 じゃないけれど、アメリカ映画には、いや、古き良きアメリカ映画の伝統には、この原点(ふるさと)回帰ってのが脈々と流れていて、形(映画の形態やジャンル)は様々に変わっても、その根底にはそうした、フォスターの「峠の我が家」みたいな感情が生き続けている。

 『 ジャッジ 』 みたいな作品に出会うとそんな事を思い起こしてしまう。言うなれば、フランク・キャプラ 監督の映画のような・・・。クリスマスの定番映画 『素晴らしき哉、人生!』 とか 『スミス、都へ行く』 、『群衆』 『或る夜の出来事』 など〝笑えて泣ける〟って映画の元祖みたいな監督だけど、数年前から邦画で流行ってる、安っぽい〝泣ける映画〟とどう違うかというと、キャプラ映画には一貫して ヒューマニズム (の精神、伝統)がある。笑いながら、泣きながら、ヒューマニズムの力強い一撃がズンと腹に残る。痺れるような感動と共に、そうした伝統に包まれて、幸せ~な気分になる。

 『 ジャッジ 』 には、そんなキャプラ監督が得意とする〝笑って泣かせる〟、いわゆるキャプラ・タッチってものはない。でも見終わってつくづく考えると、根底に流れているのは「アメリカ映画の良質な伝統、キャプラ映画の・・・」と思い至っちゃうんですよネ。
 それは、終り際に出て来るある場面で、明確に提示されている気がします(ナイショ)。

 被告となった判事の父を助けるために息子の弁護士が法廷で、原告側のキレ者弁護士ディッカムと対決する。この弁護士ディッカムを演じているのが ビリー・ボブ・ソーントン で、まぁ、いわゆるシャープで抜け目のない、どちらかというと嫌味な感じの弁護士を演じているわけですが、ここにもちょっとした趣向がある。
 その趣向はもちろん、書きませんが、要するに被告のジョセフが長年地域に貢献してきた老判事であるという、法曹界の先輩だというあたりがポイント。
 裁判でジョセフを負かす事(第一級殺人罪にもっていく)、それはディッカムの職務だけれど、それを行うことはこの偉大な先輩の業績にケチをつけたり、威信や能力を愚弄することになる。

 いや、それは父を弁護するハンクとても同じ事で、ハンクは実の子供である分、ディッカムよりもその心理的プレッシャーは重い。ハンクは裁判の流れの中で、長い間、町の正義を司ってきた判事たる父の尊厳に触れ、それをツバするような展開にもなっていく・・・。
 法廷で繰り広げられる、父と子、ジョセフとハンクの白熱のディスカッションが、なんといってもこの映画のハイライト。


             息を飲みましたネ、素晴らしかった。


 ハンクを演じたロバート・ダウニーJr.。 親父は同じ名の映画監督(ロバート・ダウニー)で、そのせいで芸能界には長くいて、若い頃から次世代のスターだなんてチヤホヤされたせいか、薬物中毒にハマッてリハビリ施設に入れられ、何度も入退院を繰り返したので、トム・クルーズやケビン・コスナーのような地位に着くことができなかった。
 それが『アイアンマン』に始まるCG&3D駆使によるアニメ劇画の映画化アクションでようやくスタークラスになり、自身の妻スーザンと映画製作プロダクション 「チーム・ダウニー」 を立ち上げて、放った第1作がコレ。


       天は彼を見放さなかったね、素晴らしい企画を彼に与えた。


 父役のロバート・デュバルも名演で、特にバスルームで倒れ、失禁どころかクソを洩らしながらよろけるシーンには感動した。数年前、何があったか知らないがデュバルは、
「もうスティーヴンのようなバカ者と仕事をするのはゴメンだ!」
とか言ってスピルバーグ監督の映画に出るのを断ったといった具合で、まだまだ意気軒昂。

 デュバル、ダウニーの〝Wロバート〟の演技合戦は、まるで本当の父親と息子のような、激しく熱い感情のぶつかり合いでもって、誰もが圧倒される。


          親子の絆を改めて考えさせられますゾ、新年から・・・。


ハンク
▲ ディッカムに父の証言のウソを指摘されて苦悩するハンク(R・ダウニーJr.)
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          ※ 『 ジャッジ 裁かれる判事 』 HP : www.thejudge.jp


 ■  1月17日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにてロードショー
                         配給:ワーナー・ブラザース映画   ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
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新作プレビュー  『 ドラフト・デイ 』  < 前編 >

◆ K・コスナーがアメフトのドラフト会議で大バクチ!

  ドラフト・デイ メイン
  ▲ この写真を見ると、コスナー自身がドラフトで一位指名を受けたかに見え
    ますが、彼は選ばれる方じゃなくて選ぶ方。
   (C)2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


 アカデミー賞を受賞した 『ダンス・ウィズ・ウルヴス』 (1990)の栄光からはや四半世紀。その間、大作づいて失敗し、自身のスター・バリューも地に落ちて、悪役にも手を出す(『スコーピオン』『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』)など、低空飛行を強いられた ケヴィン・コスナー だったが、最近またちょっと光り輝いてきた。
 昨年、『エージェント:ライアン』や『ラストミッション』でアクション映画に返り咲き、『エージェント~』では主演のクリス・パインを立てる脇役だったが、存在感を見せた。
 何せ、柄(顔や雰囲気)がいいから、自分の企画を製作もしくは監督主演したい、という 無謀な野心 (『ワイアット・ワープ』『ウォーターワールド』『ポストマン』といった不毛な超大作)さえ捨て去れば、ハリウッド・セレブとして楽チンなスター生活を送れたハズ。それが出来なかったのは、ヤツが 〝何かを成し遂げたいと希がう男〟 だったという事かもしれませんが、そんなコスナーのもう一つの利点と言えば、スポーツ映画が似合う ってこと。
 実際に、野球はプロはだしで、メジャーを目指してマイナー生活を送った事もあるくらい。その経験を生かした『さよならゲーム』(1988)はコスナーの佳作の一つで、この他にも名作の 『フィールズ・オブ・ドリームス』 (1989)、『ティン・カップ』(1996、ゴルファー役)『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(1999)などがある。ユニフォーム姿が似合うというか、スタジアムやグラウンドにたたずむと画になる人ですよネ。

 そんなコスナーさんは今回、プロのアメフトチームのGM(ジェネラル・マネージャー)になって、虚々実々のタフなドラフト戦争に身を投じる。

 まずは、粗筋をば・・・。

〔 全米注目の2014年、NFLドラフト会議の当日だってのに、サニー(ケヴィン・コスナー)は朝から気分が悪い。彼はクリーブランド・ブラウンズのGM、つまりドラフトで指名する選手を選択決定し、来季のチーム作りを推し進める責任者だが、ブラウンズのフロントで共に働き、同居もしている恋人のアリ(ジェニファー・ガーナー)と口論が絶えず、職場に出ても彼女は冷淡。
 加えて新しくブラウンズのコーチに着任したベンが、「こんな選手を獲ってどうする!?」とか「なぜ使えるレギュラー選手を放出するんだ!」と口を挟んできて、対立。まったく気の休まるヒマがない。
 しかもライバルのシアトル・シーホークスに向こう3年間の1巡目の指名権を譲ることでようやく指名獲得に漕ぎつけた有望選手のボー・キャラハン(ジョシュ・ペンス)に良からぬ噂が・・・。

         コイツは本当に堀り出し者なのか、それともクズか? 

 さまざまな難題やイライラがサニーに押し寄せる中、ついにドラフト会議は始まった・・・ 〕


 〝新人選手を選び出して高い契約金を出して入団を促す〟--チーム作りの第一関門ともいえるドラフト制度は、アメリカン・フットボールのみならずベースボール(MLB)、バスケットボール(NBA)など全米のプロスポーツ界が採用していて、日本でもプロ野球行われ、その会議の模様は毎年、テレビ中継されている。
 しかしこの映画を見ていて、一番興味深く面白く感じるのは、その ドラフトの成熟したやり方 。日本のプロ野球のように、凄い球を投げたり打ったり、または将来性のある有望選手を〝公平に〟くじ引きで選んで決める、というド単純なやり方を、アメリカはしない。というか、そういうまっ正直なヤリ方はとっくに卒業しているようです。

 というのは、先の粗筋の中でも書いたけど、どうしても欲しい選手を指名したい場合、自チームが有する指名権(指名する順番)を相手に譲る事が認められているのだ。
 アメリカン・フットボールの全米プロリーグ= NFL では、各チームが1位指名をする場合、成績の悪いチームから先に指名するように、順番が決められている( 完全ウェーバー方式 )。
 もし最下位がシアトルだったらシアトルからその年一番有望な選手を(1位で)指名するわけ。で、ここでコスナーが扮するGMが指揮をするブラウンズは指名順が6番目(1巡芽の6番目)で、もしコスナーがシアトルの指名するキャラハン選手をどうしても手中にしたければ、自分が指名をする権利(順番)をシアトルに譲る事で、ドラ1(ドラフト1位)の権利(指名権)を持つことができる。
 そして、その見返りとして相手チーム(指名権をヤリトリしたチーム)に翌2015年以降の指名権を譲り渡さねばならない。もちろん1年の指名権ぐらいじゃシアトルは納得しないから、向こう3年分(15,16、17年)ものプレミアをつけて譲渡するってわけ。

 NFLのドラフトっていうのはこんな具合に高度かつ巧妙で、単にイイ選手を指名して入団させるというのではなく、欲しい選手を指名権を放棄することで獲得したり、また逆に自分の指名選手を相手に譲って来年の指名権(順番)をゲットしたり、また相手チームに所属する優れた現役選手を獲得する目的で指名権をヤリトリしたり・・・という具合に、自チームの強化を基本として指名の作戦を立てる。そしてソレに準じて、さまざまな交渉事(腹の探り合い、駈け引き)をドラフト前に取り交わしていく。

           その激烈さたるや、もはや 戦争! 


 ブラッド・ピットの 『マネーボール』 (2011)は野球の、MLBの話だけれど、ここでシーズン・オフ、ピットのGMが他チームとのトレードをまとめるために、受話器を置く間もないくらい電話をかけて話しまくって、選手をゲットする様子が描かれていました。『ドラフト・デイ』でもまさにああいう事がドラフト会議直前まで繰り広げられるのです。

 そうした駈け引きが実に面白い。事によっちゃ相手チームにスカ(ダメ選手)を思いっきり高い値段で掴ませたり、逆に芽が出ていないが将来活躍しそうな選手をバカ安な移籍金でゲットできるわけで、これはただちに来季のチーム成績に直結する。

 新人選手指名の場であるドラフトを巡って、なんと成熟&白熱したヤリトリが交わされていることか。交渉事っていうのは、まさにここまで徹底してやらなきゃウソで、そういう意味では、

          ホントにアメリカは大人だなあ、ビジネスを極めてるな、

 という気がします。

 NFLのドラフト制度のシステム説明をしてきましたが、それでも日本人には馴染みが薄いので、よく判らないって人もいるでしょう。
 でもご安心を。
 映画が始まる前に 親切なガイダンス・クリップ(解説映像) が流れて、事の次第を判りやすく説明してくれる。配給元のキノフィルムズの親切なワンポイントサービス、さすがです。      〔続く〕

             ポスター
             (C)2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

          『 ドラフト・デイ 』 公式HP : http://draft-movie.com/#p

 ■ 1月30日より東京・TOHOシネマズ日本橋、
        ユナイテッドシネマ札幌ほかにて全国ロードショー  配給:キノフィルムズ ■



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新作プレビュー  『 ドラフト・デイ 』  < 中編 >

◆ NFLのスター・プレイヤーがファン垂涎の大挙出演!

ドラフト・デイ 1
▲ 着任したばかりの新コーチ(デニス・リアリー、左)と口論が絶えないサニー(K・コスナー)。
   (C)2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


       しかし映画は大変面白かったけど、残念なことが2つ。

 それはもっとNFLを知っていれば、もっともっと楽しめただろうナァ、というコチラのアメフト知識の乏しさ。
 ジャズ野郎の年代でアメフトっていえば、中学に入った時分(1970年代後半)に日本で NFLの大ブーム があった。例えば下敷きやエンピツ、クリアファイル、筆入れなんかに選手がガッツンガッツンぶつかっているプレーシーンとNFLのロゴが入ったカックイイ文房具が大量に売り出された。ジャズ野郎もバンバカ買いましたな。
 下敷きなんか何枚も持ってて、ロサンゼルズ・ラムズや海賊マークのオークランド・レイダーズ(一時はロサンゼルス・レイダース)、ピッツバーグ・スティーラーズ、デンバー・ブロンコス、ダラス・カウボーイズ、ニューヨーク・ジェッツ、サンフランシスコ・49rs・・・なんて名前が今でもパッと出てくるくらいで、当時はこれらNFLの全チームのチーム名を覚えたもんです。
 そしてNFLのスーパースターとなれば、すべての面でスーパースターだから、映画に出るような本当のスターも出てきた。その一人が O・J・シンプソン

 O・J・シンプソン ・・・この人は今やタブーみたいなもんですが、当時は『タワーリング・インフェルノ』(1974)や『カサンドラ・クロス』(1976)、『ダイヤモンドの犬たち』(1976、*1)、『カプリコン・1』(1978)なんて超弩級の大作に、大物スターと肩を並べて出演した超VIPだったんですよね。
 なのにO・Jは、1994年、自分の元妻と友人を殺害した廉で逮捕され、全米注視の裁判に発展。ところがO・Jを取り調べた捜査官が人種差別者で、捜査の過程で違法行為があったとかなかったとか、って事で無罪になった(刑事では無罪だったが、民事では友人殺しで有罪をくらう)。
 この逮捕の時、警官を振り切って車で逃走したO・Jは、ハイウエイを猛スピードで疾走し、パトカーと派手なカーチェイスを繰り広げた後にお縄になる、というまるでアクション映画もどきの醜態を見せ、またそれが空撮の撮影クルーによって逐一、生中継されてしまった。
 いくらアメリカだって、こんだけの騒ぎを起こせば、無罪になったといっても表舞台には復帰しにくい。おまけに無罪といっても、限りなくクロに近いグレーなイメージがつきまとったから、評判ガタ落ち。
 おまけに2007年、仲間と強盗を働くという名選手にあるまじき悪さをしでかして、またもや逮捕。なぜ強盗に入ったか、というと、裁判で多額の費用がかかったから、偉大なカレッジ・フットボーラーに贈られる大賞「ハインズマン・トロフィー」を売るハメになったのだが、それが惜しくて取り戻すために展示していたホテルに盗みに入ったという・・・もはやトホホの極み(なもんで、今も服役中)。

 このO・J・シンプソンの一連の騒動、ついこの前の事のように思っていたけど、もう随分前のことなんですよね。『アバター』(2009)や『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(2001~2003)を観て映画ファンになった若い人達は知らないでしょうけど。 

 そんなわけでジャズ野郎としたら、『ドラフト・デイ』で中学時代そしてO・J・シンプソン事件以来、久方ぶりにアメフトに触れたって感じがしますが、これだけじゃ、ちっとも楽しめないわけです。何故なら、この作品には現役の超スーパー・プレイヤーが本人役でもって、い~~~っぱい出演してるから。

 エンド・クレジットを見たら--
                      誰それ誰それ as Himself
                      ○○××    as Himself
                      △▲□□     as Himself
                       :        :
                       :        :

 てな調子で、as Himself だらけ! 有名プレイヤー(の名前)が本人役でズラズラ~~~っと出て来るので、そういう人たちをまったく知らないジャズめとしたら、
「チェッ、もっと選手を知ってたらなあ」
とちょっと悔しかった。

 おまけに、映画のアチコチにかつての名選手の名前--

     ジョー・モンタナ (サンフランシスコ・49rs、カンザスシティ・チーフスのQB)、
     ジョン・エルウェイ (デンバー・ブロンコスのQB)、
         他にもジム・ケリーペイント・マニングなどなど

--が出てきたり、コスナーがコーチと言い合いしている背後のテレビモニターに、過去のゲームの名シーンが映し出されてて、そんなのを見るとこの映画がいかにアメフト愛に満ちあふれているかが判ります。

 それはドラフトの指名権交渉で連絡を取り合う 各チームの本拠地スタジアムが出る ところでもよ~く判る。オーナーやGM、コーチ・スカウトらが居並ぶスタッフルームを映して「ボルチモア」とか「ロスアンゼルス」と字幕で出せばすむものを、いちいちその地元にあるデッカいホーム・スタジアムをドーンと映し出す。
 それもただ映すんじゃなくて、ヘリコプターにキャメラを載せて、遠くからスタジアムにググーーーーッと寄っていくという贅沢な空撮ショットで見せるあたりの手間ヒマのかけ方! アメリカン・フットボールって競技がいかにアメリカ人に愛されているかが判りますな。            〔続く〕

 スタッフルームのコスナー
 ▲ 指名選手の銓衡やチーム作りを検討する作戦ルームで策を練るサニー(K・コスナー)。
   パソコン画面に、往年のNFLプレイヤーの名前やプレイシーンが映ったりする。
    (C)2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

         『 ドラフト・デイ 』 公式HP : http://draft-movie.com/#p

■ 1月30日より東京・TOHOシネマズ日本橋、
       ユナイテッドシネマ札幌ほかにて全国ロードショー  配給:キノフィルムズ ■


*1 『ダイヤモンドの犬たち』  『ドラフト・デイ』とはなんも関係ないけど、このヴァル・ゲスト監督&ピーター・フォンダ主演アクションって、あんま評判良くないんだけど、ジャズ野郎はテレビ(の洋画劇場)でしか見た記憶がないけれど、結構面白かったと思ってて、とにかくあの豪快でスウィンギングなテーマ曲だけでも〝買い〟だと思ってます(音楽はジョルジュ・ガルヴァランツ)。ウソだと思うなら、ユーチューブにアップされてるから聴いてみ。  ダイヤモンドの犬たち 


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >





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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

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