新作プレビュー    『 フ ォ ー カ ス 』

◆ 錯覚、思いこみ、そして欲望 ・・・ につけ込む〝凄い、こいつら〟

フォーカスP
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 ウィル・スミスのこの最新作も、この前の『セッション』みたいに、何にも解説めいたことは書きたくないです。
 内容が、あの手この手の狡猾な詐欺話だから、何か書いてもそれが何かの暗示とかヒントに思われて、察しのいい映画ファンにはすぐにピーンときちゃうから。

 だから、〝詐欺の話〟ってのも本来は言っちゃいけないのかもしれない。そうなると、ウィル・スミスが詐欺師だってことも禁句になって、その後の展開についても何も言えなくなって、結局は「見るべし」ってことしか書けなくなってしまう。

 TVで流れたこの作品のCMでも内容や詳細は随分ボカしてたでしょ。ああいうふうにしかならない。ノーマルな作品以上に内容紹介には気を使っちゃうわけですよね。

 だから、もう、この辺で紹介するのは終わり・・・とも思ったけど、見るととても面白かったし、楽しかったんで、とりあえずサワリだけでも書いちゃお。

 Fメイン
 ▲ 男殺しの視線をニッキー(ウィル・スミス、左)に送る妖艶なジェス(マーゴット・ロビー)。
   もしかしてコレって〝 裏 〟がある?
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〔 物凄~くリッチなレストランでくつろぐニッキー(ウィル・スミス)は、どう見てもエグゼな実業家タイプ。で、そのバー・カウンターには、スケベ男にしつこく口説かれてるジェス(マーゴット・ロビー)がいて、ニッキーはそんな彼女を救う事になる。彼女は悩ましいセクシー・レディ(?)だから、口説かれるのも当然なんだが、そんなジェスとニッキーは意気投合して、ニッキーの部屋へ。
      そしてなりゆきで、二人はベッドインするが・・・?! 〕


と、こんなオープニングのほんのサワリ程度しか紹介しません。このジェスがどういう素性の女で、ベッドインした時、何が起こったか、という重要な事は劇場でご確認下さい。

・・・ただ、こういう内容の映画でもウィル・スミスは物腰がスマートで垢抜けてるから、安心して見ていられる。未見だけど、実子と共演した映画(『幸せのちから』『アフター・アース』)があったでしょ、ああいうのをあんまりやらない方がいいんじゃないかな、と個人的には思う。売り出しの頃の 『私に近い6人の他人』 (1993)で演ってた口八丁手八丁の青年役、ああいうのが適役じゃないのかな。当時、確か、淀川さんが『私に~』のウィル・スミスを見て、将来ハリウッドを背負って立つ才人、だって褒めてた気がするけど、あの役柄の発展形がこの『フォーカス』のニッキーだ、って気がジャズめはしました。

 Fスミス
 ▲ グラサン姿もサマになってるウィル・スミス。カッケ!
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 で、まあ、こんなトコですか。鋭い映画ファンなら、〝詐欺師〟、〝かっこいいリッチな男とセクシーな女〟、ってキーワードだけで、頭の中に過去のクライム・アクションの名作がバババッと閃いて、あのタイプかな、このタイプかな、なんてシュミレーションし始めちゃう。

 でも・・・それは「正解」です。ジャズ野郎も見ていて前半の真ん中あたりで、あー、これってジェームズ・コバーン主演の○○○かな、とかいろんな犯罪映画が脳裏をよぎりましたから。で、最終的には、それでよかった(間違ってなかった)、って事でしたけれど、だからってネタバレして詰まらなくなった、って事はない。
  むしろ、それがこのお洒落で都会的な犯罪トリックムービーの良さであり、新しさなんですから。

 実際、コレを見るまでは名前を聞いたこともなかった、監督のふたり--グレン・フィカーラジョン・レクア--のドラマの進め方が、スピーディーながらも押さえるツボはちゃんと押さえていて、最後まで飽きさせない。あー、もう、次から次といい監督がアメリカ映画には出て来ますネ。

 一見、何でもイイから観客をダマしやろうという意図ミエミエの、雑な仕掛けの軽~い映画に見えるけど、意外に映画ファンの、そう、あえて言うならB級映画ファンの琴線を震わせるのは、奇をてらうだけではないその描写の正確さだったり、過去の名作へのオマージュだったりする部分でしょうネ。

 そこを見てほしいですね。でも、それを説明しちゃうとツマラナイ。ホンの少し説明しても、判っちゃう人は判っちゃうから。

 そーいうわけで、あなたもウィル・スミスにダマされに劇場へ行きましょう。             


 F水着
 ▲ ジェス(M・ロビー、左)の水着姿・・・当ブログ「映画の災難」初のセクシー・ショットでござい
   ます!
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     『 フォーカス 』 公式HP : http://wwws.warnerbros.co.jp/focus/

 ■  5月1日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・
        シネマ札幌ほかにて全国ロードショー 配給:ワーナー・ブラザース映画  ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 文芸坐とて極楽 <パラダイス> ではない ・・・ <その4>

 またまた名画座巡りの話に戻ります・・・ が、2回ほどでまた新作紹介に ・・・ 今度はこの春イチの注目作 『 ラン ・ オールナイト 』 ( ワーナー映画配給 )でございます。お楽しみに ・・・。

                   ******


 この上映中のケンカ、何が原因だったのかは知らないれど、ジャズめが思うに、恐らく痴漢なんでしょう。きっと殴られた親父が傘で殴った方の男へ、上映中、チョッカイをかけたんだ。

          ナニを〝触った〟ってことじゃないのかな。

 映画館で痴漢、っていうのは女ばっかじゃない、男も遭うんだ。大学の頃、友人から聞かされた話に、浅草の映画館で男の痴漢につきまとわれた、ってのがある。浅草の映画館っていったら、その昔はそれこそ映画興行における日本最大のエリアでもって、浅草の一流館にどれだけお客が入ったかでもって、その映画の興行価値が決められた、ってほどの場所だけれど、ジャズめが上京した昭和50年代には落ち目で若者が行かない街だった。それでも昔からの流れで映画館は多く、当時、映画を観に行くっていうと 「ぴあ」 「シティーロード」 って情報誌を片手に持っていったもんだけど、そうした雑誌に映画館(の数)が一番多く載ってたのが浅草エリアだった。

 なのに、ジャズめは・・・今考えると行っとけばよかったなあ、と思うけど・・・浅草で映画を観たことが一度もないのです。ストリップはある、コレは大学の友人に連れてってもらった(おかげで、今、永井荷風やなんかの事でストリップとかフーゾクの話が出て来ると、ああ、アソコなのか、なんて追体験できる。この友人には感謝してます)。

 それなのに、映画館は行った事がないんですよね、浅草で観た事がない。

 大体、ジャズ野郎の世代だと、植木等主演のクレージーキャッツの東宝コメディ(『日本一の無責任男』など)とかゴジラ映画の類は浅草で観ているのが普通。ここにあった「浅草東宝」(だったかな)のオールナイトでよくこれらの映画を上映していたから。ジャズめも行きたかったんですがね、ホモの痴漢が出る、っていうんで、ソレが嫌で・・・。

 そもそもジャズ野郎をストリップ(フランス座)に連れていってくれた学友が、それに遭ってんですから! さっきも言ったように、昭和50年代の浅草ってのは若者が寄りつかない、さびれた歓楽街で、当時、人気の街っつったら原宿、青山、代官山、六本木、銀座、新宿・・・あたり。だから浅草の映画館(こや)は、特に昼間は客が少なくて、その友人が言うには数人しか客がいなくて、いつも空いた場内で気楽に映画を観てられた、と。

 ところがある日、例によって空いているのに、隣の席に労務者風のオッサンが座ってきた、と。

 で、「なんだろ、この人 ・・・? 」と思ってたら、ケツのあたりにモゾモゾ動く手が・・・!

 エエッ!? と思って、それを払いのけて別の席に移ったら、また横に座ってきた・・・とこんな調子でつきまとわれ、観ていられなくて映画館を出て来た、って話を聞いて、
    
            「オレは浅草には絶対行かない!」

 と心に決めました。浅草はよく〝出る〟、とその友人は言ってました。

 だからって文芸地下のケンカもそれが原因かどうかは、定かじゃありませんが。

 男の痴漢、それも汗臭い筋肉質の労務者ふうの男って聞いた時、ホモとかゲイってのは、江戸時代の陰間 (かげま。茶屋で男客相手に売春した男娼。男娼には美少年が多かったので、時には女も買いにきた) みたいになよなよしたオカマ、要するに優男タイプだと思ってたから余計に〝恐怖〟しました。
 優男じゃない力強いヤツもいるんだァ・・・って(もっとも優男って、結構、短気で凶暴でケンカが強かったりするようですが)。

  優男じゃないタイプってのは、つまり HG = ハードゲイ ってヤツですか。

 アル・パチーノがHGを演じて当時、スキャンダラスな話題を巻いた『クルージング』(1981、ウィリアム・フリードキン監督)公開は、ジャズめが高校3年の時。
 エ、もちろん、観てませんよ、そんなもん。ただ警察帽をハスに被った、レザージャケット姿のパチーノは、妙に似合っていたけれど。         〔続く〕


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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 文芸坐とて極楽 <パラダイス> ではない ・・・ <その5>

 ・・・で、何で小津映画を観に行ったのに、『爆裂都市』だったかというと、小津作品の上映は来週からだったのです! 要するに上映日を間違えてたわけで、笑うに笑えない、泣くに泣けないドジ話なんです。

 『爆裂都市』の上映が終わってから、文芸坐の「しねまうぃ~くりぃ」を見たら、チャンと「小津特集、次週上映」と書いてある。文芸地下の入口や壁のポスターにも来週からの予定が書いてあって、「小津安二郎監督の『早春』、11月5日~」と出ているのに、まったくそれに気付かなかった・・・。土砂降りで、持ってた傘が煩わしかったからそれに気を取られて、壁の告知やリーフレットをロクに見ずに客席に着いてしまった -- ということはあったけれど、もともとその日の朝、「行くべきか、行かぬべきか」で悩んだ時に、

     なぜもう一度、日にちを確認しなかったのか!!!!


 この時ほど己のオッチョコチョイに凹んだことはありません。

 『爆裂~』上映後、とっとと「文芸地下」を出たジャズ野郎は、嵐の中、早足で池袋駅まで行って西武線で帰宅しましたが・・・・この時ほど情けなくて泣いた事もない。

 もともと気の進まないところを無理して外出して、
 観たくもない映画を観るハメになって、
 観たくもないケンカを観て、
 雨風で手足が濡れて凍り付くように冷たくて ・・・ これで泣かなきゃ、なんで泣く?


 みなさん、観る映画のスケジュールや時間はちゃんと確認しときましょう(って、当たり前か)。    〔続く〕


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新作プレビュー  『 ラン・オールナイト 』   < その1 >

◆ 遅れてきたアクション・スター、R・ニーソンとセラ監督の最新作

 メイン
 ▲ 組織に追われる殺し屋 ジミー ( リーアム・ニーソン )。
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     それにしても ・・・ リーアム・ニーソンがこんなふうにバケるとは思わなかった。


 スクリーン登場は1981年のジョン・ブアマン作品 『エクスカリバー』 あたりからで、(80年代に売れっ子プロデューサーだった)デビッド・パットナム製作&ロバート・デ・ニーロ主演の 『ミッション』( 1986)やイーストウッドの 『ダーティハリー5』 (1988、バディ・ヴァン・ホーン監督)なんかに出てたってことだが、印象は薄かった(『-5』には、後にお馬鹿コメディで人気を博すジム・キャリーも出てる)。

 ニーソンの存在をハッキリ意識したのは 『ダークマン』 (1990、サム・ライミ監督)から。『バードマン』じゃないよ、『ダークマン』。オモロかったなぁ、この映画。悲劇と不運の二重スパイラルでダーク・ワールドの超人となってしまったニーソンが半泣きで活躍する、オフザケもちょっぴり入ったサム・ライミらしいダーク・コメディだったけど、端正なマスクで限りなくツイてない〝しくじり〟ヒーローを演じてたニーソンは、北欧風の顔(ホントは北アイルランド出身)には悲壮感や疲労感があって、ちょっと線の細い弱々しい感じもしたけれど、似合ってた。
 以後、その線=〝重荷や苦労を抱えた〟キャラクターを演じるようになるのだけれど、その代表作がスピルバーグ監督の 『シンドラーのリスト』 (1993)でしょうか。
 『マイケル・コリンズ』 (1996、ニール・ジョーダン監督)で賞を貰ったり(ヴェネチア映画祭主演男優賞)、再開したスターウォーズ〔エピソード1、1999〕で クワイ=ガン・ジン というキャラクターを演じたりと順風満帆で、これから先は歳を取っていくにつれ、自然と渋~~~い老け役がまわってくる・・・だから、無理せず、焦らず、ドーンとおさまり返っていればいい。

 とそんな具合に眺めてたんだけど、一体どうした事なんでしょうね、ここ数年のアクション志向は!  もはやアクション・スターといっても過言じゃない。
 そしてまたそれが似合うんだよなあ、意外にも。

 疲れた中年オヤジのハズなのに、まるで ジェイソン・ボーン みたいに素早く動き回って、ガンプレイもアクロバティックな格闘技アクションもバッシバッシと決めて、とにかく異常に強~~い。来月、63歳になるオッサンなのにだよ、マイッタね。

 このニーソン・アクションの流れがどこから始まったのか、は正確には分からないけど、まあ、あのフォックス映画 『96時間』 シリーズ (2008~14、全3作)あたりからじゃないのかな。
 
実はこの『96時間』の翌年の2009年に、彼は愛妻の ナターシャ・リチャードソン を亡くしている。ナターシャは 『侍女の物語』 (1990、フォルカー・シュレンドルフ監督)、『ネル』 (1994、ジョディ・フォスター監督)などに出た女優さんで、そのファミリーネーム〝リチャードソン〟からも判るように、英国の異才 トニー・リチャードソン 監督の娘(トニーと女優ヴァネッサ・レッドグレイヴの長女)で、前夫と離婚した後、ニーソンと1994年に結婚。
 ナターシャと結婚するまでのニーソンは、憂いを秘めたハンサムで背格好も堂々たるものだから、引く手あまたのモテ男でかなりのプレイボーイだったという話を 『 G Q 』 (『シンドラーのリスト』公開時の特集記事) で読んだ覚えがあるけれど、ナターシャと結婚してからは良き夫、佳き家庭人になったらしい。
 ところが2009年にその愛妻に先立たれた(子供2人あり)・・・ニーソンの悲嘆はひとかたならぬものであったと思うけど、どうも彼はその悲憤を仕事に叩きつけたようで、2010年以降は逆に映画出演が増えている! 

 2009年以前は、年平均3本だったものが、以後は4~5本平均というハードさ。

 そんな中、2011年だけは出演作がたった1本。

 それが ジャウム・コレット=セラ 監督との初コラボ 『 アンノウン 』 (※)

 この作品でニーソンとセラ監督は、どうやら〝同志〟になったようでございます。  <続く>

  『アンノウン』 については 【 新作プレビュー 『 フライト・ゲーム 』 <前篇> 】〔2014年9月5日付〕 を参照のこと。


             ポスター
             (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

    『 ラン・オールナイト 』 公式HP : http://wwws.warnerbros.co.jp/runallnight/

 ■ 5月16日より東京・丸の内ピカデリー、ユナイテッド・シネマ札幌
               ほかにて全国ロードショー 配給:ワーナー・ブラザース映画 ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
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新作プレビュー  『 ラン・オールナイト 』   < その2 >

◆ 巧妙に絡んだ展開の妙、〝夜映画〟の粋

 サブ
 ▲ 堅気の息子マイク(ジョエル・キナマン、右)と追っ手を逃れるジミー(R・ニーソン)。
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 『アンノウン』 『フライト・ゲーム』 ときて、ジャウム・コレット=セラ監督と3度目のタッグを組んだ今回の作品、〝ラン・オールナイト〟って題名を聞いた時、きっと キャロル・リード 監督の 『邪魔者は殺せ』 (1947)みたいな話なんだろーな、と予想しました。
 IRA(アイルランド共和軍)の内部対立ではじき出された若い活動家ジョニー( ジェームズ・メイソン )が、裏切り者とみなされて刺客を差し向けられ、重傷を負いながら夜の街を逃げまわる・・・。昔観たから定かじゃないけど、確か全編、夜(のシーン)じゃなかったなぁ。とにかく暗~い感じの画が多かった。

            こういうのをジャズ野郎は〝夜映画〟って呼んでます。

 クリント・イーストウッドの 『バード』 (1988)とか、『ダークシティ』 (1998、アレックス・プロヤス監督)、最近だとロマン・ポランスキー監督の 『ゴーストライター』 (2010)も夜映画。
 『ゴーストライター』には昼のシーンもいっぱいあって、「夜ばっかじゃねぇだろ」と思う向きもあるかもしれませんが、なんというのかな、映画全体の雰囲気、トーンが〝夜〟って感じがするんですよね。ま、この他にももっといっぱいあるでしょう。

 そんな夜映画の極めつきっていうと、ジャン・ピエール・メルヴィル 監督ですか。


 それはともかく『ラン・オールナイト』はタイトルで〝オールナイト〟って謳ってるわけですから、逃げも隠れもない。ストーリーをば--


〔 NYの闇社会で殺し屋を生業としているジミー(リーアム・ニーソン)。彼はマフィアのボス、ショーン(エド・ハリス)に飼われている彼の手下だが、ショーンとは固い絆で結ばれ、彼の命令で今まで汚い仕事をさんざんやってきた。そんなジミーを息子のマイク(ジョエル・キナマン)は毛嫌いし、よってジミーは妻子とは縁を切って、一人孤独な日々を生きていた。
 一方、ショーンにも息子がいる。マイクとは幼なじみのダニー(ボイド・ホルブルック)それで、これがロクデナシときていて、闇社会に売り出そうとデカい麻薬取引の話を父親に持ってくる。ドラッグを嫌うショーンは息子の頼みをすげなく拒否。そうなると、売人から巨額の手付け金をもらっているダニーは、ただちにそれを返さなければならない。
 しかしダニーは暴走し、その無謀な迷走は、やがてマイクに、そしてジミーの身の上に災難を及ぼしていく・・・・ 〕



 というわけで、その災難を被ってジミーは夜通しニューヨークの街を逃げまわることになるのですが、そのキッカケに至るまでの展開がやたらと凝っている。まるで 『仁義なき戦い』 (1972・東映)の脚本家・ 笠原和夫 が書いたんじゃないのか、というくらいに、複雑な事件と人物が巧みに絡み合い、緻密に交錯して、〝危機また危機〟のドラマが織り上げられていく( 脚本はブラッド・イングルスビー )。

                   やー、見せますな、マイりました。

 事件と人が多岐に渡って絡むから、映像表現としてちょっと変わった、というか、面白い事をやっていて、それを嫌う人もいるかも知れないけれど、コレがあるから良く解る、ってこともあると思う(どんな表現なのかは言いませんよ~)。

 ジャウム・コレット=セラ監督はニーソンと最初に組んだ 『アンノウン』 でも、容疑者になされたニーソンが夜のベルリン市内を逃げまわるプロセスを実に巧く見せていたけど、今回のNYの逃走シーンも手に入った巧さでもって関心しました。夜の都会のダークでクールなルックと、それと対照的にメチャメチャ焦って汗かきまくって走って逃げる人物との対比をいい距離感(併走感)で描いてる。この距離感は、旅客機という〝密室〟を舞台にした前作の『フライト・ゲーム』でも同様にキープされていて、コッチの場合はニーソンが逃げる方じゃなくて、追いかける方だったが、ニーソンと客&犯人の距離はつかず離れずで、本来動きが取れないハズの狭い機内を縦横に利用。そして展開が進むにつれて、ギューーーッと1点に焦点が絞られていく。この絞られていく瞬間が快感ですな。

 『ラン・オールナイト』でも1点に絞られていく=ゴール(終点)に迫っていく、あたりのドキドキがたまらなかった。巧い監督(ひと)ですね、セラさんは。                 <続く>


 サブサブ
 ▲ パトカーも大クラッシュ。もはやNYDP(ニューヨーク市警)をも敵に回し・・・。
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新作プレビュー  『 ラン・オールナイト 』   < その3 >

◆ エド・ハリスとR・ニーソン、夜を徹した〝男の闘い〟

            そんでもって最後は エド・ハリス ですか。

 なんだか、随分、お久しぶりな感じだけど、歳をとってさらに渋さが増しました。 うーん、なんだろう、この人の場合はハゲてても、ハゲてなくても、どっちでもかっこいいんだよね。こういう男になりたいよネ(なかなかなれないけれど)。

 エド・ハリスは前の < その2 > のストーリーでも触れたけど、殺し屋ニーソンの親分役で、まあ、いろいろあって、結局・・・・と書き進めちゃうと、ストーリーの美味しい部分をネタバレさせちゃうので書けないけれども(といっても、まあ、判りますよね)、とにかくニーソンと構えるような、そういう状況になっていく。そうなった時のハリスの迫力というか気魄が凄いんだ。マフィアの凶悪な凄味ってのが、ギラッと表面に出てくる。

                    さすが ・・・ と思いました。

 この人がこの手の殺伐系アクションで、こういう鬼神に満ちたツラを見せるのは、フィル・ジョアノー監督の佳作 『ステート・オブ・グレース』 (1991)以来かな、いや10年前の 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005、デビッド・クローネンバーグ監督) でも片目の恐ぇ~男を演ってたっけ。

 その頃からエド・ハリスは心身ともにちっとも、なまってない。なまってないどころか、凄味が増している。
 リーアム・ニーソンの殺し屋は「怖い」とは思わなかったけど、エド・ハリスのショーンが怒った時はマジで「恐い」と思った。

 ショーン・ペンとかコリン・ファレル、ダニエル・クレイグなど、そのまますぐにヤクザ役が出来そうなゴロツキ顔っていっぱいいるけれど、とどのつまり、エド・ハリスみたいに普通は温厚そのものってなフツー人タイプには敵わない。こういう知的な感じでグレてるヤツが一番凶暴なんだ。

 だからエド・ハリスとリーアム・ニーソンの対峙ってのは、この映画のひとつのクライマックスなんだけど、それだけじゃない。趣向はまだまだいっぱいあって、こんなにいろんな事件があるってのに、一晩で描ききれるのかよ、って観てて思った。

 とはいえ「陽はまたのぼる」ってわけですよ。どんなに長い夜でも朝は必ずやってくる。
 この、先の見えない、先の読めない、逃走と追跡にも終わりはやって来る。

 その終焉がどんな具合に訪れるのか ・・・ まぁ、それを見ないでは死ねない、ですな。 <続く>


 エド・ハリスと
 ▲ 腹を決めてレストランで向き合うジミーとショーン(E・ハリス、左)
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新作プレビュー  『 ラン・オールナイト 』   < その4 >

◆ 余談 ・・・ 『邪魔者は殺せ』 を褒めた フランソワ・トリュフォー

 というわけで、『ラン・オールナイト』 については以上の通りですが、最後に余談も余談な話をひとつ。

 < その2 > で、『ラン・オールナイト』は『邪魔者は殺せ』みたいな話かと思った、と書きましたが、その『邪魔者は殺せ』 についてジャズ野郎が思い出すのはヌーヴェル・ヴァーグの監督のひとりで、『大人は判ってくれない』 (1959)や 『突然炎のごとく』(1961) 、 『恋のエチュード』(1971)、 『隣の女』(1981) などを手がけた フランソワ・トリュフォー の賞賛。

 この時、トリュフォーは脳腫瘍の手術を終えて退院し、自宅に戻ったばかりで(1983年9月)、日本からお見舞いに訪れた映画評論家の 山田宏一 さんに向かって、


 『邪魔者は殺せ』という映画を見たか、とトリュフォーが言った。声に力がなかった。小さな、かすれたような声だった。しかし、それも大手術のあとなのだから当然なのだと、私は自分の体験から、思い込んでいた。
「 キャロル・リードの傑作の一本ですね 」と私が答えると、
「 そう 」とトリュフォーは言った。
「 むかし見て、大好きな映画だった。もう三十年以上も前になる。ジェームズ・メイスンが出ていて、じつにすばらしかった。これとヒッチコックの『北北西に進路を取れ』の悪役をやったのがジェームズ・メイスンの最高だと思う 」。



 女性と子供を愛した〝愛の映画作家〟フランソワ・トリュフォーは、この時の脳腫瘍がもとで翌年(1984)の年末に亡くなる。トリュフォーはさらに--


「 『邪魔者は殺せ』の思い出が急によみがえってきて、退院後、ずっと、あの映画のことばかり考えていた。重傷を負ったジェームズ・メイスンがその夜出航する船にのるために非常線を抜けて波止場までたどりつけるかどうか……長い、長い時間がサスペンスとして描かれていたでしょう。
 あの映画の時間が、ジェームズ・メイスンにわたし自身がなりきって感じられるような気がしました。
 もう一度見たいと思っていたら、偶然、つい先週、テレビジョンで放映された。やはり、すばらしい映画でした 」
       ( 以上『 〔増補〕トリュフォー,ある映画的人生 』 山田宏一、平凡社ライブラリー )



 脳にメスを入れた大手術のせいで、体力が減退し虚脱して思うように動けなくなったトリュフォーは、傷を負いながら夜の街を逃げまどう主人公の ジェームズ・メイスン に我が身を投影したものか。

 ジェームズ・メイスン は、『砂漠の鬼将軍』(1951) 『砂漠の鼠』(1953)の2本の戦争映画でドイツ軍の猛将ロンメル将軍を演じた、〝ミスター・ロンメル〟と呼んでもいい、押しの強い性格俳優だったけど、もともとはウエストヨークシャー出身のジェントルマン(英国紳士)。そんな彼の最高、つまり代表作が 『邪魔者は殺せ』 と 『北北西に進路を取れ』 (1959)だとシネフィル(映画狂)のトリュフォーが言うのなら、それに異存はないけれど、ではリーアム・ニーソンの最高は『ラン・オールナイト』ってことになるんかなぁ、などとジャズ野郎は考えた。

 でも、そいつはどうか ・・・ ニーソンは今月もう一本、同じく主演した 『誘拐の掟』 (未見)って作品が公開されるほど多作で、今後も出演作が増えそうだから、「コレが最高だ」と申し上げられないような気がする・・・(でもかなりの確率で、最高だ、と思うけど)

 とにかく『ラン・オールナイト』を見ている間、ジャズ野郎の脳裏を横切ったのは、『邪魔者は殺せ』とこの映画を褒めたというトリュフォーのこと。

 今、目の前で観ている映画(ラン・オールナイト)を素直に楽しめない、映画狂の悩ましい悪癖 ・・・ 一種のビョーキです。


 殺し屋を殺す殺し屋
 ▲ このビョー的に人相の良くないオッサンは何者? 答えは映画館で!
   (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

  『 ラン・オールナイト 』 公式HP : http://wwws.warnerbros.co.jp/runallnight/


■ 5月16日より東京・丸の内ピカデリー、ユナイテッド・シネマ札幌ほか
                   全国ロードショー 配給:ワーナー・ブラザース映画 ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 文芸坐とて 極楽 <パラダイス> ではない・・・   <その6>

 そういうわけで、またまた 【 すくり~んエッセイ 】 に戻ります。お付き合いくださいませ。

                 *******

 ・・・といったわけで、文芸坐では痛い目にも遭っているんですが、やはり〝我が心の名画座〟って事になると、文芸坐になりますか。

 先にも書きましたが、洋画封切りの「文芸坐」は入り口に映画スターの顔写真が貼られていて、それだけで戦後の映画黄金時代の香りが感じられるようで好きだった。建物は古くて、ロビーや劇場内の壁なんか薄汚れてて、がっつりヒビも入ってた。トイレも古くて暗くって、個室のドアの上の空間には金網が張ってあって、そこに埃や綿ゴミがこびりついていてメッチャ汚かった(と記憶する)。館内の壁にはポスターの剥がれ跡や煤けたスチル写真がアッチコッチに貼っついてたような気もする。

 客席のイスなんか注意して座らないと、座った途端にドスンと下に落ちる。イスの腰掛け部分の建て付けが壊れてて、何かで持ち上げてるんだろうけど、客が座るとその重さで下(床)に落っこちる! だから、「アー、ここ見やすい席だ、ココがいい」と思って座ると、そういう席ってのはみんな狙っててよく座られてるから壊れてることが多くて、このドスンに遭う。
 場内が満員だと、そんな一段も二段も目線が低くなる席に座って、2時間内外の映画を観ることになる。だからそんな座席に座っちゃった時には、鞄を尻の下に敷いてちょっとでも目線を上げる、とか、伸び上がって観るようなことになり、とっても疲れた。

 そこへもってきて、名画座ってのは大体〝ションベンシネマ〟って言われるように、トイレの悪臭(小便臭いのもあるけど、洗剤・消毒剤の濃厚な毒々しい臭い)が客席内に漂ってくる。

 小さな劇場(こや)ならいざ知らず、文芸坐なんか名画座のうちでもデカい方で客席も広かった。もちろん、上映中、各出入口のドアは閉まってる。なのに、あの何とも云えない臭いが漂ってきたんだから、相当なもんだったと思うけど、でも〝名画座で映画観る〟ってのはそういう事だと思ってたから、快適とは思わなかったけど普通に観ていた。

  むしろ、そういう環境で昔の名作、名画に出会える、っていうことが、特権的というか誇らしい気がしたもの。
 
 文芸坐のスピーカーはそこそこデカかったけど、オンボロでポンコツな、ただの〝箱〟みたいなもんで、それが2、3個、館内の壁にかかっていた。
 「こんなんで音出てくるのかな・・・」
 なんて思ったもんだけど、意外にデカイ音、出てたよね。         〔続く〕


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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 文芸坐とて極楽 <パラダイス> ではない・・・ <その7>

 この「文芸坐」で キューブリック 『バリー・リンドン』 (1975・米)も ロベール・アンリコ 『冒険者たち』 (1967・仏)も ルイ・マル 『ルシアンの青春』 (1974・仏=伊=西独)も観たんだよな。『冒険者たち』 なんか、ここで初めて観てガーーーンと感動して、翌日、もう一度観に行ったもの。
 サム・ペキンパー 『ワイルドバンチ』 (1969・米)も 『戦争のはらわた』 (1977・西独=英=仏)も「文芸坐」だった(この2本同時上映)。
 コレも観てかなりガッツーンときたっけ。

 この洋画を上映していた文芸坐では、時々、上映中の映画のポスターを売ってくれてた。大学で一緒だったバカな奴がよく

「オレ、ココで 『大脱走』 のタテ看買ったんだぜ」
なんて自慢してた。
「タテ看って何?」
て訊いたら、お前そんな事も知らないのか、ってエラくバカにした顔されて、
「タテ看ってのは、縦に長~いポスターの事で、1枚続きの長いヤツもあれば、2,3枚を繋げて1枚にしたのもあるんだ」
 なんて教えられたもの。

 でも、このポスター、毎回売ってるわけじゃなくて、時々売るんだよね。
 売る時は、作品と作品の合間の休憩時間に場内アナウンスでもって、

「只今上映中の 『ミッドナイト・エクスプレス』 、ポスターが欲しい方は劇場フロントまでお越し下さい」

 て告知が流れると、映画好きの若僧たちがバーッと席を立って直行するわけ。すると、もうズラッ~と並んでんだ。みんな、欲しいんだよね。
 特に50年代、60年代のハリウッド映画、ヨーロッパ映画の名作なんかのポスターってデザインがかっこいいし、ま、映画ファンなら欲しいもんですよね。『ワイルドバンチ』なんか買えるものなら、絶対、買って持っていたい。

 札幌にいた中学・高校時代はパンフレットとともにポスターをコレクションしてて、部屋ん中に 『気狂いピエロ』 (1965・仏=伊)とか 『タワーリング・インフェルノ』 (1974・米)のポスターをベタベタ貼っていた。
 『タワーリング・インフェルノ』のポスターなんか、タテ看板どころか、昔よく国道や市道に置かれていたタテ2畳くらいのデカさ(2畳はちょっとオーバー)のベニアのステ看板(戸板)に、ベタッと貼り付けてた、かなり巨大な宣伝用ポスター。コレ、今でも持ってます。

 そんな具合にマニアだったジャズ野郎にしてみれば、文芸坐で時々売ってくれた名作映画のポスターは嬉しかったネ。それも安かったな、確かいつも1枚100円だったと思ったが・・・(違うかも)。〔続く〕

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▲ 『 タワーリング・インフェルノ 』のデッカいポスター 〔 タテ1.5m × ヨコ1m 〕。30数年ぶりに引っ張り出してカーテンレールに吊ってみたけど、さすがにアチコチ傷んでた。この映画で、レスキュー隊の隊長に扮した スティーブ・マックィーン が火災現場の高層階にいて、そのビルから隣のビルにロープを渡し、それにぶら下げたゴンドラに救助者を乗せてた時、いきなり爆発が起き、一緒にいた隊員がはるか下の地面に落下しそうになる。咄嗟にその隊員の両腕をハッシと掴んだマックィーンが、苦悶の表情でずっと摑み続けるが、「もう限界!」とついに手を放す ・・・ あー、隊員は墜落死?! と思いきや、下に巨大な救命マットがあって隊員はそこに落下して命拾い -- ってスリリングなシーンがあるのですが、この瞬間、マックィーンは私のヒーローになりました。  (C)ジャズ野郎


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 銀座 「並木座」 への思い入れ  <その1>

 ポスターの話っつうと、銀座にあった東宝系の名画の老舗 「並木座」 はハズせない。
 ココでジャズめは黒澤作品のポスターを何枚かゲットしました。

 この話、あんまり書きたくないんだけど、当の「並木座」がもうなくなってるし、ポスターを売ってくれた映画館のその方(支配人?)も既に亡くなってるようだから、書いてしまいましょう。「亡くなってる、なんて失礼じゃないか」と思う人もいるかもしれないけれど、ジャズ野郎はこの方に思い当たるフシがありまして、確たるものがあるんでそう言えるんで・・・まあ、聞いて下さい。

 上京したばかりの大学1年の頃、詳しくいうと昭和57年(1982)の年末、この並木座で黒沢明監督特集が組まれた(こうした場合、名画座での「クロサワ」の表記は、黒澤ではなく黒沢で、簡単な方の〝沢〟が使われる)。
 その黒沢特集に先立つこと8ヶ月前、つまりこの年の春、文芸地下で行われた俳優・志村喬の追悼上映で、ジャズ野郎は初めて黒沢監督の 『酔いどれ天使』 (昭和23=1948年)と 『野良犬』 (昭和24=1949年)を観た。

               まさに、ガーーーーン! ・・・・でした。

 通の人は、『野良犬』を押すけど、ジャズめは『酔いどれ天使』の方にガツーンときて、結局、その日、『酔いどれ天使』を2回観た。『酔いどれ天使』を観て、次に『野良犬』を観、また『酔いどれ天使』を観る、といった感じで。

 その感動が忘れられず、並木座にまたかかると知ったから、高校時代の友達で東京の大学に受かって在京していた野口君(渾名が〝ニョグチ〟)を強引に呼び出して、一緒に観るように段取った。
 で、この時、一緒に『酔いどれ~』を観たニョグチがどんな感想を持ったのかは覚えていないのだが(映画好きじゃなかったから、まあ、そこそこ面白かった、みたいに言ってたと思う)、それはどーでもよくて、この時、『酔いどれ天使』 『野良犬』の上映の合間に、ジャズめは彼を残してトイレに立ちました。

 そして、これまたおぼつかない記憶で書くのですが、この劇場のトイレって映写室の横だったか階下にあって、とにかく映写室の近くを通ることになる(その地下に行く階段の上に映写室の窓かなんかがあった気がする・・・定かじゃないですが)。
 その時、映写室か事務所か、どっちかのドアが開け放たれていた。その開いたドアの向こうのテーブルに、『七人の侍』 『生きる』 『蜘蛛巣城』 などのポスターが、それも刷りたてのキレイなヤツが、積まれているじゃないですか!

 積まれてる、ったってそれは劇場前や内部に貼る映画の宣材だから〝ある〟のは当たり前なんだけど、黒澤狂と化していたジャズ野郎は、途端に「欲しいッ!」と思ってしまった。コレはマニアなら必然。

 で、図々しくも事務所の中に入っていって、どーか、1枚でも2枚でも売って下さい!!! と三拝九拝して頼みこんだ。すると事務所にいた劇場の人が困り顔で、

 「売ってくれって? アナタね、コレ、売りもんじゃないんだよ」
 「判ってます。けど、そこをなんとか!」
 「なんとかって言ったって」
 「黒澤監督が好きなんです~」
 「黒澤さんを好きなのはアンタだけじゃない。今日の番組観に来てる人はみんな、そう。
  だからアンタだけに売るワケにはいかないよ」

 「でもありましょうが、そこをなんとか・・・1枚でも2枚でも売ってくれませんか!」

〔続く〕


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すくり~んエッセイ  名画座という名のタイムマシン

◆ 銀座 「並木座」 への思い入れ  < その2 >

 札幌から東京に出て来て、いわゆる「~だぜ」とか「~ジャン」てなキツイ言葉づかいでモノを言う東京人に対してコンプレックスを持ち、ほとんど他人と喋れなかったジャズ野郎だったのに、この時はもう、喋りまくって、拝みまくって、頼み込みました。三拝九拝ってヤツです。よく、あんな図々しいことができたな、と今でも思います。
 すると 「並木座」の方は根負けして、

              「そうかい、じゃあ、もう好きなの持ってきな」

  と諦めたように言ってくれて、すると今度は、

「 ホラ、これ 『生きる』 だよ。君、観てっかい? 
  あぁ、でもこのポスターはリバイバルの時に新しく作ったヤツだから、そんなに貴重じゃないナ。
  こっちの『蜘蛛巣城』の方がよかァないか?
  それに『用心棒』よりもさ、『椿三十郎』。そう、コッチの方がめったに出ないヤツだから、コッチ持
  ってきな 」


 なぁんて、ポスター選びのアドバイスを親切丁寧にしてくれる。

                  嬉しかったねぇ・・・。

 結局、先に挙げた『生きる』『蜘蛛巣城』『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』 ・・・ あと『天国と地獄』もあったかな、ポスター。とにかくそんなあたりを譲って貰った。

 譲って貰った、っていっても、もちろん金は払いましたヨ。
 さすがに文芸坐みたいに、1枚100円ってわけじゃなくて、たしか物によって値段が違ってたと思う。大体、1枚1000円で、『七人の侍』みたいなプレミアなヤツは2000円とか2500円とか。コレだって、今、これらのポスターをいわゆる鑑定団的な所に出して査定してもらうと、こんな額じゃ買えないでしょう。

 この時、〝後で売ったら、価値があがってもっと高い〟とか、そんな不埒な事は考えも及ばず、とにかく黒澤映画のポスターをゲットした喜びに、ジャズめは打ち震えました。

 しかし、そこでなけなしの大枚(持ち金)をはたいたおかげで、その年末年始は惨めなもんでしたね。金がないから下宿にずっと引きこもって、ショボい自炊メシで空腹を満たし、夜中はテレビの深夜映画をず~と観ていた。

 確かその年末(昭和57)、テレビ東京(当時は東京12チャンネル)が大晦日に、夜の7時から朝方まで計5本か6本の映画を立て続けに放映した。当時はケーブルテレビもレンタルビデオもなかったから、これはダイナミックな企画で、きっと映画マニアの間では今も伝説的なプログラムになってるんじゃないか、と思う。

 そのラインナップに、ロバート・アルドリッチ監督の 『攻撃』 (1956・米)があった。モノクロの、埃っぽい戦場を敗走する米軍兵の物語、ジャック・パランス演じる責任感の強い鬼軍曹が独軍の戦車に片腕を轢かれて絶叫する・・・! 

           コレを観て、一遍にアルドリッチ・ファンになりましたナ。

           映画前の解説は、例によって淀川長治さんでした。       〔続く〕


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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

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趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
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