新作プレビュー 『カフェ・ソサエティ』 (その1)

◆ 懐メロなジャズが流れてこそのアレン節

カフェ・ソサエティ380
 Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC


 以前、ブログで「今、晩年のアレン氏に、最後の最盛期が来てる」(*1)なんてことを書いた手前、今回の新作についても何か書かなきゃと思ってはいたが、3月、4月と体調を崩し、GW中もヒザ痛に悩まされたいせいで、まったく文章を書く気にならずにグズグズ。そしたら『カフェ・ソサエティ』とっくに封切られて、今、公開中です。

 今更でなんですが・・・ちょっと書きますか。ちょっと書くと言っても、今回、アレン監督が描くのは1930年代のハリウッド(の物語、というか裏話)だから、「ちょっと」ってわけにはないかない。スティーブ・カレルが演ってる業界人フィルの台詞には「グロリア・スワンソンが出演を拒否したって」とか「(セシル・B)デミル監督が乗り気だってよ」などと当時の大スター、大監督、要するにハリウッド・クラウンの名前がぞろぞろ出てきて、それを聞いてるだけでもムフフと楽しいのだが、30年代ってのは本当はその前の〝ローリング・トゥエンティーズ〟、つまりハチャメチャだった狂騒の1920年代の末に起こった世界恐慌(1929年、ウォール街の株価大暴落に端を発する)を受けて、本当なら経済沈滞、失業者増大で社会不安がいやが上にも増した〝意気消沈なご時世〟のハズ。
 ところが「不景気の時は映画とパチンコ屋が流行る」の道理か、映画業界はまだまだ安泰でご陽気でゴージャスでありまして、『風と共に去りぬ』が製作されたハリウッド黄金時代のピークと言われる1939年まで突っ走っていく。
 
 そんな不況知らずのハリウッドの状況を、アレン監督は、敏腕エージェントのフィルがプール付きの豪邸で毎夜盛大なパーティをやってるシーンをスケッチするオープニングからさらりと巧いこと見せていく。

 お得意のオールディーズなジャズをフィーチャーして。

ボビーとヴォニー
▲ ボビー(J・アイゼンバーグ)が恋い焦がれるヴォニー(C・スチュワート、右)
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC


 もー、このジャズを使われちゃうと途端にウディ・アレンの薬籠中に入れられて、手際の良い演出(語り口)で最後まで見せられちゃうから、アレン・ファンはイイ気分だし、そうでない人は〝それなりに〟楽しめると思うが、果たしていつでもこのジャズの使用でいいもんだろうか?
 というか、どんな題材の作品でも何でもかんでも口当たりのいいジャズをフィーチャーしちゃっていいのかな? 確かにどれもこれもウディ・アレン印のお墨付き作品にはなっている、でも同時にどれもこれも代わり映えしない同じモノになる危険性もある。題材によっては、ノンキな軽い調子で語られちゃ困る、シラケる題材もあるだろう。

 また同時にこうも考える。アレン作品からこのオールディーズ・ジャズを取り除いたら、または別ジャンルの曲を使用したらどうなるのかな、と。そしたら前作の『教授のおかしな妄想殺人』(2015)ではまさにそれを実践してた。メインで使ってる「The ‘In’ Crowd」(*2)はジャズだが、1960年代の曲でしかもクラブ録音。だから観客の手拍子や歓声などがオフで聞こえてくる。ヘー、なんでこんなの(洗練とは正反対な曲調)を使ったんだい? と観ている間中ずっと違和感だったし、彼のドラマではジャズナンバーをドラマのバックに流しているのが常なのに、なんにも曲を流さずにホアキン・フェニックスとエマ・ストーン(『マジック・イン・ムーンライト』に続くアレン作品出演)のツーショット(会話)でいたり、となにかいつもと違う感じではあった。

 なーるほど、ジャズを使わないとこうなるのか。こんなに彼の映画らしくなくなるのか。

 もっと言えば「凡庸な普通の作品になるのか」ってことを痛感したのだが、それは当のアレン氏も同じだったらしく、『カフェ~』ではまたもとの調子(ジャズ曲使用)に戻している。
 ま、戻すも戻さないも、(おそらく)ここで使ったジャズ・チューンは当時、流行っていた曲だと思われるから、時代的にも正解ってことでしょうが。 <続く>

       ★ 『カフェ・ソサエティ』 公式サイト:http://movie-cafesociety.com/

*1 その記事は2015年4月11日付の「新作プレビュー『マジック・イン・ムーンライト』<前篇>」http://ag4nematwc.blog.fc2.com/blog-entry-403.html
*2 「The ‘In’ Crowd」・・・ラムゼイ・ルイス・トリオによるワシントンD.C.の「ボヘミアン・キャヴァーンズ」での演奏曲。
このデータは映画サイト「ムビコレ MOVIE COLLECTION」の伊藤隆剛さんの「【映画を聴く】『教授のおかしな妄想殺人』後編 ライヴ録音のテーマ曲が劇場効果を倍増!」より。参考及び引用させていただきました(感謝!)。詳細を知りたい人は以下のサイトへ。
http://www.moviecollection.jp/news/detail.html?p=9832


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