大島渚もまた死す・・・

 いやはや、大変な年の始まりです。あの 大島渚 監督が亡くなるとは!


大島渚監督
▲ 在りし日の大島渚監督 〔1932 - 2013 〕
出典:「アメーバニュース」http://news.ameba.jp/image/20130115-547/
(C)THE KOBAL COLLECTION / Zeta Image


 それも1月15日といったら(昔で言う)成人の日じゃないですか。時の権力や古い体制に刃向かい、噛みつき、年がら年中怒って怒鳴っていた「万年青年」の大島さんには似つかわしい気がします。

 大島渚が京都大学を卒業して松竹大船撮影所に入社したのは 昭和29年(1954) 。昨年物故した 若松孝二 は大島監督とは4つ年下ながら、映画界入りはだいたい同じ頃です。
 その年の松竹大船の助監督採用試験は物凄い数の受験志願者だったが、大島さんはその中から一番で通った。その同じ年に松竹に入社したのがあの 山田洋次 です。

 でも山田さんは落とされた。落とされて、日活がちょうど製作再開するというのでそっちを受けたらそちらは合格。
 そうしたら日活が監督や助監督の人材がいないものだから、松竹の助監督を大量に引き抜いた。その引き抜かれた人達ってのはもう逸材揃いです。今村昌平中平康蔵原惟繕 斎藤武市西河克巳 、 小林桂三郎 (実は大学時代、ジャズ野郎はこの方に映画演出を教わりましたが、この方は逸材ではないです)、そして 鈴木清順神代辰巳 、すでに監督だった 川島雄三 ・・・こういう人達が抜けたので、松竹の人材、特に助監督が手薄になり、そこで一旦落とした山田監督に採用通知が来る……。
 そこで山田監督は、松竹か、日活か、どっちに入ったらいいかで悩むのですが、それを 山本薩夫 監督に相談した。

 何で山本監督なのか?
 山本薩夫は 日本共産党員 だったからです。山田洋次も共産党員、だから映画界入りしている先輩に、知恵を授けてもらいに行った。
 でも山本薩夫はどっちへ行けとは言わなかったらしい。

 思案の末に山田さんは松竹を選び、大島渚や 吉田喜重 といった派手なインテリ新人助監督たちとは対照的に、地味~な助監督としてセッセと仕事をこなしていった。

 大島渚は政治的で革新的で、それは『日本の夜と霧』(昭和35=1960年)なんか見ると解りますが、大学時代に演劇をやっていたから左翼的で、一時期、日本共産党に入ろうかどうか迷ったらしい。
 でも入らなかった。一方、山田さんは入った。

 大島渚と山田洋次・・・この二人は、まったく松竹の同期でありながら、それも京大、東大という名門を出ていながら、日本共産党の入党の有無のせいばかりではないけれども、あまり交流しなかったようです、同じ大船撮影所なのに。そこが面白いというか何というか。おそらくライバルなんでしょう(それとも思想信条の相違か)。

 助監督時代の二人は、陽性、陰性の違いはあれ、撮影所の古参のスタッフ達からこぞろって嫌われます。
 何故なら、大島や吉田、高橋治(後の直木賞作家、もともと松竹の助監督がふりだし)って人達は理屈っぽくてお洒落で、あまり熱心に働かなかった。しかも、およそ機能的ではない背広を着て助監督仕事をやっていたりする。
 だから「キザだ」って呆れられた。「そんな格好で助監督が出来るか」と現場で眉をひそめられた。実際あまり仕事が出来なかったという話もありますが、それでも大島さんなどは、ロケ費の会計から撮影のセッティングまで万事にそつなくやってのける「デキる助監督」と言われ、
その時すでに松竹から日活に移っていた今村昌平以来の逸材だと目されていた(その今平さんの前のデキる助監督は西河克巳で、さらにその前は 木下恵介中村登 、さらにその前は 吉村公三郎 といった具合に、松竹という会社は助監督=新しい才能の宝庫でした。そういうデキる助監督が払底した時、松竹大船は事実上、終わってしまった。松竹大船の終焉は、日本映画の主流の終焉です)。

 また大島さん達、松竹ヌーベルバーグの面々は、出たくない現場には来ないで(ほとんど助監督修業をさぼってたって話も)、毎日カンカンカクガク議論を戦わせたり、監督に昇進するための脚本を書いていた。

 一方、山田監督も嫌われた。山田監督が自分で言ってます、先輩監督によく苛められたって。
 でもそれはそうなんです、山田さんは一本芯が通った人で、助監督につくように命じられた井上和男監督の
戦争映画 『予科練物語 紺碧の空遠く』 (昭和35=1960年)を

     “戦争を賛美する映画の製作には手を貸したくない”

と拒否して付かなかった! 


山田洋次監督
▲ 演出中の山田洋次監督 
出典j:松竹映画「男はつらいよ」公式ホームページ https://www.tora-san.jp/supported/yamada.html
(c)松竹株式会社


 上下関係の厳しい映画会社で、入ったばかりのペーペーの助監督が作品のテーマに反対して現場を拒否するなんて・・・山田さんってすごい信念の人ですね。従来から大船の助監督部は独自性があって、助監督がどの監督に付くかを助監督部が決められたし、また助監督もある程度、付きたい組(監督)を選択できたと言われますが、それでも作品のテーマが気に入らないから付きたくない、といって拒否したのは前代未聞だったらしい。
 だから、先輩助監督などに生意気だと疎まれる・・・。そんな行き場のなかった山田さんを助監督に付けて育てたのが、 『張込み』(昭和33=1958年)『砂の器』(昭和49=1974年)野村芳太郎 です。

 野村芳太郎は、自分がチーフ助監督の時には、デキる助監督として一目置かれていたが、かけ麻雀ばかりやってるとか女癖が悪い等と、とかく悪評の高かった今村昌平をセカンド助監督に迎えて育て、自身が監督になってからも初めての時代劇 『慶安水滸伝』 (昭和29=1954年)に今平さんを付かせたりしている。大島渚が助監督として最初についたのも、この野村組です。

 鬼の今平を映画で叩いて鍛えたのは、今平が最初についた 小津安二郎 と川島雄三、そして野村芳太郎なんです。

 怒りの大島に映画のイロハを教えたのも、野村芳太郎なんです。
 (大島さんは 小林正樹堀内真直 などの監督についたが、特に 大庭秀雄 組をよく担当した)
 
 喜劇の山田洋次に、やはり映画のテニヲハを教えたのは野村芳太郎なんです。

      野村芳太郎は偉大ですね。


野村芳太郎監督
▲ 野村芳太郎監督
出典:シネマサイト「シネマトゥデイ」 http://www.cinematoday.jp/page/N0072904
(c)松竹株式会社


 それはともかく・・・松竹ヌーベルバーグの旗手として華々しくマスコミに登場し、やがて『日本の夜と霧』上映中止問題で松竹上層部と喧嘩して辞め、社会派な問題作を連作し、日本初の ハードコア『愛のコリーダ』昭和51=1976年)を撮り、常にスキャンダラスな硬派なムードの中にいた大島渚と、
撮った喜劇映画がヒットしなかったので日蔭の身が長く、『男はつらいよ』シリーズでようやく大当たりをとり、 渥美清 が亡くなるまでこのシリーズ1本で映画会社の松竹を支えた山田洋次。

 偉大な二人ではあったが、松竹大船という同じフィールドでは並び立たなかった。

 こういう二人のような話を、2013年の現在進行形の話として書きたいですが、

 そういう映画人は今いないから。・・・合掌


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