トレードマークの“烙印”探しこそが愉しい!

 『女王蜂』でスプリット・スクリーンを初体験した、と書きましたが、このスプリット・スクリーンを最も巧く使ったのは、ロバート・アルドリッチ監督じゃないでしょうか。少なくともジャズ野郎が識る監督ではそうです。アルドリッチは『24』みたいにのべつまくなしにコレを使わない。彼は自分の映画の中の、どこかで必ずコレを仕掛けるのですが、それをコッチの思いもよらないところで出してくる。「オッ、ココで出すのか!」てな驚きと興奮と、そしてそれを共有する愉しみが、この画面分割が出た時に一瞬にして沸き上がる。コレですよね、こういう粋な使い方をしないとダメです。

 アルドリッチ監督の『ロンゲスト・ヤード』(1974年)ではアメリカン・フットボールの試合がクライマックスにあって、ここでは一度に拠らず何度もスプリット・スクリーンやワイプ(画面を右から左、左から右にぬぐい取るように変える技法)、アイリス(その画面をだんだん丸く消したり、出したりする技法。*1)などを使い廻してますが、これは試合を面白くみせるための大サービスの使い方です。通常は劇中に1回、もしくは2回ほどポンと出す。 『北国の帝王』(1973年)では汽車タダ乗りの“帝王”であるナンバーワン(役名)が、「他のタダ乗りのエースと対決する!」という特ダネがタダ乗りホーボー(不況下の放浪者)たちに知らされる電信をうつシーンで、『飛べ!フェニックス』(1965年)では砂漠で死にかけた男達が「助かったァーーッ!」と歓喜に狂うエンディングで出ます。このスプリットが出てくると、理屈抜きに嬉しい。

 コレ、アルドリッチ監督の場合はスプリット・スクリーンですが、サム・ペキンパー監督の場合だとスローモーションって事になる。『ワイルドバンチ』(1969年)では有名なラストの大銃撃戦のみならず、オープニングの銀行襲撃シーンその他でスローをやりまくってますが、これも本当は映画の中の何カ所かで使ってみせるのが定法で、このスローモーション(大体、銃をブッ放すようなアクション・シーンでよく見られますが)が出ると、「あー、ペキンパーの映画だな」ってな感じで心が踊る。だからこうしたお決まりな描写やテクニックというのは、会社の屋号やトレードマークと一緒で、その監督のトレードマーク、“オレの作品だぜぇ~”という“刻印”ってワケです。

 市川崑の場合、その“刻印”は何か? 金田一シリーズでは、
殺人シーンでよく用いられるガラスを滴り落ちる血をドギツい色彩でみせる画面や、
回想シーンなどで使う白黒のコントラストを強調したモノクロ映像、
加えて前述のスプリット画面、
明朝体の文字を配したクレジット・タイトル--
 などと数多くありますから、それらは「1社に1つ」が原則のトレードマークの定義からすれば、もはや刻印とは呼べないかもしれません。

 でも敢えて一つあげると“襖”でしょう。それは金田一シリーズに限らず、そのずっと前の大映時代の『鍵』(昭和34=1959年)や『ぼんち』(昭和35=1960年)あたりから出て来ます。
 着物を着た妻や女中が日本間やお座敷を下がる時、ピタンと閉めた襖に着物の裾が挟まって、チョコンと飛び出る。やや間があって、この裾がピュッと引っぱられて見えなくなる--この描写を市川監督は必ずやる。ココが愉しい!
 コレ、秀麗な映像美とテクニックで鳴らした名匠・吉村公三郎監督なら、同じ襖でも襖を手では閉めず、開いた襖を女が脚を伸ばして閉める、というはしたなくも艶めかしいシーンになる。
 また日本映画の大巨匠・溝口健二に言わせれば、襖を男が後ろ手で閉めたら、それはその座敷にいる女を押し倒す“手込め”の暗示だ、というのですが、“襖”ひとつでもいろいろあるものです。

 映画に出てくる監督のトレードマーク-刻印-に注目しましょう。


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
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