松竹の監督系譜-蒲田(大船)調の行方 <その15>

◆芳亭から芳太郎へ  松竹カラーは生きている <前篇>

 国立フィルムセンター が出している隔月刊誌 『NFCニュースレター』 の、やや古い「2007年8-9月号」の中に 『野村芳太郎-松竹“暗い抒情”の系譜として。』(浦崎浩實) と題した小論がある。
 表題からも分かるようにこの中で浦崎氏は、野村芳太郎の作風を“暗い抒情”として論を進めているのだが、これを初めて読んだ時、「野村芳太郎って、暗い抒情かなぁ」とある種の抵抗を覚えた。
 しかし、今は全面的に浦崎さんの論に賛成である。この一文を最初に読んだ時には、ジャス野郎は芳太郎の父・芳亭さんの作風のなんたるかを全く知らなかった。その後、今年の3月(18日)からアップしてきた【野村芳亭、知られざる巨人】の草稿を書くため各種の映画本をあたっていったら(2011年)、前述したように、芳亭映画とはその多くが〝泣きの悲劇〟ばかりであり、 〝湿っぽさ〟 〝哀れさ〟 が作品の基調であることが判ってきた。

 この芳亭監督の〝泣きの悲劇〟は、ただちに息子・芳太郎〝暗い抒情〟と全く同じであるとは言えない(前から言うように、ジャズ野郎は野村芳亭作品を一つも見ていないから断言は出来ないのです)のだが、父親の作風と芳太郎の作風が、その作品に漂う匂いが共通しているであろう事は判然としてくる。なるほど、確かに「野村芳太郎は“暗い抒情”の系譜にあるんだな」と感得することが出来た。まったく、「ありがとう、浦崎さん」である。

 その浦崎さんの小論を全部紹介することはできないから、要点だけ抜き出すと、

 今日、松竹を代表する監督といえば、まず小津安二郎、木下惠介あたりから名前が上がるに違いない。
 が、このお二方は、松竹がバックボーンとしてきたはずの蒲田→大船調といわれる明朗な家庭劇、人生肯定主義の主流にはいないはずなのだ。その名作群に“家庭”を主題にしているものが多いのは確かだけれど、お二人のそれは、どこかシニカルであり、懐疑的であり、悲しみの源泉ですらある。
 

 浦崎さんは、この後、渋谷実や吉村公三郎、小林正樹、野村芳太郎らの名を挙げ、この人たちも主流といえるだろうか、と疑問を投げかけ、松竹ヌーベルバーグの監督達は松竹の 「異端児どころか、松竹のむしろ正統なのではなかろうか」 と続ける。
 ジャズ野郎は、先に松竹ヌーベルバーグ派を“鬼っ子”と書いたが、実は主流に抗した大島渚らの行動は、創業当時の娯楽系の主流派であった野村芳亭に反旗を翻して“蒲田調”を打ち立てた城戸四郎の行動とダブる面もあるから、“松竹のむしろ正統なのではなかろうか”というこの意見は、心密かに嬉しく思っている。

 大事なのは、この後である。

 少なくとも戦後の松竹映画を眺める限り、向日的な大船調は、むしろ傍流か、さもなくば幻影だったように思えてならない。
 松竹作品の“主流”は、明るく前向きな小市民性などにはなく、むしろ“悲傷”や“暗い抒情”にあったのである。
(以上「NFCニュースレター第74号 2007年8-9月号」発行・著作:国立美術館/東京国立近代美術館)


 〝明るく前向きな小市民性などにはなく、むしろ“悲傷”や“暗い抒情にあった”〟という、これこそが松竹作品の主流、つまり芳亭派と小山内派=城戸四郎がない交ぜになった蒲田=大船調の正体なのである。   〔続く〕

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