巨匠のムチャブリ-島津保次郎 オヤジの蛮行 <その2>

◆ 島津オヤジを語る前に-大正期の映画界 <後篇>

 往事の撮影所には ゴロツキ のような荒っぽい輩がウロウロしていた・・・とは言え、教養や文才が不可欠なシナリオライターや、テクニカルな知識と熟練を要するキャメラマンほかの専門スタッフ、そしてそれらを統括する監督やプロデューサーの中には、学問と良識を備えたインテリ(知的階層)はいたわけだから、撮影所は無法地帯というわけではない。だがそうした常識人よりも、下働きのスタッフにはどこぞの組から流れてきたような荒くれ者や無頼な人間が多かったのだ。

 どうしてこういう人たちが映画会社や撮影所にいたのか。とどのつまり、経営者がそもそもそうした人であったのです。
 松竹は違いますが、松竹が映画製作を始めた大正9年の前後には、それこそ大小の映画会社が濫立しており、その中にあった 河合映画 の場合は、オーナーの 河合徳三郎にしてからがソッチ系の人で、身体全身にクリカラモンモンが彫ってあったという侠客上がりの土建屋であった(男性器にも彫り物があった、というからまさに〝筋・金〟入りである)。親方がヤーさんなんだもん、その配下は幹分(子分)ってことでさぁね。

 当時はサイレントだから映画はチャッチャとすぐに出来て、公開すればガバッと儲かった時代ゆえ、それを見越して空き工場なんかを改造して即席の撮影所に設えて、キャメラとフィルムを買いそろえて映画製作に乗り出す。札束で顔をひっぱたいて他社のスターを手っ取り早く引き抜き、監督はまだしも、下っ端のスタッフなどは涙金程度の安い給料でこき使われ、安手な映画を量産しては上がった儲けで左うちわ・・・。映画会社さえ始めれば儲かる、という、今では夢のような時代が日本でもあったのです。

 東京や大阪・京都のみならず、アッチでもコッチでも映画が作られ公開されていた、という時期があったのです。それは1980年代、全国的に跳梁跋扈したビデオレンタル店みたいなもんで、それが次第に淘汰されていくのですが、とりあえずメジャー会社では日活松竹、ちょっと落ちて 天活(天然色活動写真株式会社) 、この天活が吸収されて 国活(国際活映株式会社、コレが後に 帝国キネマ になり、さらに 新興キネマ になる) になり、他にマキノ省三主宰の マキノ映画大活(大正活映。文豪・谷崎潤一郎が製作陣にいた) 、 河合映画東亜キネマ、この河合と東亜が合体して 大都映画 になったり、とそれはもう複雑怪奇な流れとなっていくわけですが、詳しくはこの種の映画史の本を当たってみて下さい。

 映画は当たる、映画をやれば儲かる、という爆発的な気運が日本全国に巻き起こり、そうなるとこういう儲け話に目がない小金、いや大金を持った資本家(投資家、素封家、企業経営者、起業家、そして興行の裏表に明るい任侠道を歩む方々)が我先に映画に群がる。 特に〝興行の裏表に明るい〟方々などは、堅気の縄張<シマ>に強引に割って入る腕力と悪知恵を持っていますから、資本家と組んで開業資金をこさえて、たちまち映画製作を始めてしまう。
 すると、出演者たる俳優やスターが集結する撮影スタジオには、彼らを見んものと有象無象のファンが群がる。それらの中からスターや女優に悪さをしたり、撮影所に潜り込んで撮影を妨害するなど騒動を起こす輩も出てくる。そうしたトラブルの防止とセキュリティ対策(用心棒)として、ヤクザの組関係者、平たく言うとチンピラが撮影所に入り浸るようになる。
 そういう人達が、映画好きになってスタッフとして本採用になる場合もあるから、自然、映画の撮影現場(いうなれば工事現場と同じ)というものは荒っぽくなり、使う者(監督)も使われる者(スタッフ)も蛮カラな感じになっていく。

 前回の【野村芳亭】のところでも、当時の侠風あふれる撮影所のことに触れましたが、今回の 島津保次郎 は監督自身が暴力オヤジである。ゆえにこうした当時の気風を再確認していただきたい。でないと、島津オヤジだけが、野蛮な暴力クソ野郎ということになってしまうので・・・(ま、実際に暴力クソオヤジなんですけどネ)。   〔続く〕



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