“最期”の金田一耕助

 第5作の『病院坂の首縊りの家』 、この作品をノーカットで見るのは高校2年の初公開の時以来かもしれない。一度、「水曜ロードショー」(日本テレビ)で放映した時見てますが、その時はアヴァン・タイトル(金田一耕助が横溝正史宅を訪れて、今度アメリカに行く、という件など)がバッサリ切られ、進駐軍バンドがジャズを演奏するシーンにタイトルが被さるところから始まっていて(そんな感じに始まっていたと記録してますが)、
「アレ、こんな出だしだったっけ?」と思ったもんです。

 他の金田一作品はビデオやDVDで何度か観たのですが、この作品だけ長い間、積極的に見ようとしなかった。それはこの最終作があまり好きじゃなかったから。重要なヒロイン役である桜田淳子の演技が固くて見ていられなかったのと、ドラマの終盤の謎解きが「?」だったからです。今回、すっかり忘れていた、その謎解きの「?」の部分を確認しましたが、確かにココは何度見ても納得でき兼ねますね(当ブログのご来場者が未見だとネタバレになるので伏せますが…)。
 でも全体的には、市川崑らしい編集の妙味(ギミック)もそこそこ冴えているので、
「まだ腕は落ちてないのに、なんでシリーズ辞めちゃったのかなぁ」
とは思いました。

 あと金田一の助手役になる草刈正雄が、当時、気に入らなかったんだ。なにか、こう出過ぎな感じで違和感タップリ、トボケた三枚目の役柄なのにどっかキザでわざとらしくていけない。この人って、この当時(1970~80年代)はハンサム顔が鼻についた感じで、キザでヤな感じでしたよね。
 それに加えて、ココではどうも松田優作を意識しているかのような演技をしている。おなじオトボケでも優作なら笑えるんだけど、草刈さんのはちょっと……ここもイマイチです。

 当時、この『病院坂~』は“最後の金田一耕助”って宣伝文句だったから、最後は僕ら観客に背を向けて去っていく、または去る前に一礼して去っていく ・・・そんなラストシーンを期待して見に行ったのですが、ラストはまたぞろ横溝邸に戻って面白くも可笑しくもなく終わってしまう。

 ところが--セルフリメイクした第7作目の『犬神家の一族』(平成18=2006年)では、ジャズ野郎がかつて思い描いた、このエンディングをやっていて、作品中、そこだけが感動的だった(映画全体としては、リメイク作はまったく買えませんが)。
 くるりと振り返り、観客に向き直って、照れながら静かにお辞儀して去っていく、石坂=金田一の姿を見た時、「金田一耕助シリーズも終わりなんだなあ」という感慨とともに、
「市川崑の映画もこれで見納めなんだ。市川監督は金田一耕助に託して、別れの挨拶を僕らファンに送ってくれている」と思い、万感胸に迫りました。

 このリメイク版『犬神家の一族』に続き、オムニバス映画『ユメ十夜』(平成19=2007年)の中の一篇を演出した翌年、日本映画にスタイリッシュかつモダンな映像美を刻んだ異才は、冥界に旅立ってゆかれました。享年92才。

 市川崑の“金田一耕助”シリーズのオープニング・タイトル、そしてエンディング・シークエンスはいずれも洒落ていて妙味がある。ゆえにジャズ野郎は、各作品のオープニングとエンディングだけをピックアップして、“タイトル集”としてDVDに収録し、時々見て愉しんでいます。
 「犬神家の一族」というタイトルとテーマ曲が出てくる直前から収録してもいいのですが、やはりの東宝のマークが出てきてアヴァン・タイトルの場面をちょこっと残しておくと、映画の劇的なムードを持続したまま、“タイトルがポーンと出てくる”感じがして、見てて気持ちがイイのです。エンディングも同じく、 「完」 が出る前のドラマをちょこっと残して収録<適当に編集> しているのですが、この“始まり”と“終わり”だけを第1作の『犬神家~』からずっと見ていくと、結局、各作品の本編が見たくなってくるんですよね。

 そして、この市川崑という映像作家がいかに周到な計算の上に、映像を積み重ねていて、なおかつ遊び心に溢れているかが、分かってくる。

 この華麗でグラフィカルなイマージュの精髄を継承する者は、果たして出現するでしょうか?


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