新作プレビュー  『 ブロークン シティ 』

◆ 大都会の邪悪なプリンス(市長)を虫ケラ探偵が蹴り上げる!

 CIAやNSA(国家安全保障局)、もしくは警察絡みの陰謀・汚職モノは、少なくても毎年1、2本は公開されているけれど、この『ブロークン シティ』は筋立てから何から、どこか 〝懐かしい〟 感じ。懐かしい、ったって〝古い〟ってわけじゃない。そういうジャンルをよく手がけていた シドニー・ルメット 監督の警官(検察)モノや内幕暴露映画の匂いがするんですよね。だから、見ていて「あー、こういうの、久しぶりだな」って気になる。
 先にも言ったように、毎年、コレと同種ジャンルの作品は公開されているんで、久しぶりもなにもないんですが、その〝懐かしさ〟は採り上げるジャンルの共通性ではなくて、きっと不正(悪)を憎む正義感の熱さ、その熱量がルメット作品と同じ、ってことだと思うんです。

 都会派サスペンスらしく、お話は コンプリケイテッド --こみ入ってて、複雑である。

 レイプ犯を射殺した警官のビリー(マーク・ウォールバーグ)は、その犯人が未成年の黒人だったから射殺の合法性を巡って裁判にかけられる。結局、無罪になるが、ニューヨーク市長のホステラー(ラッセル・クロウ)に説得され、警官は辞めることに。
 7年後、浮気調査で糊口をしのぐようなケチな私立探偵に堕ちたビリーは、市長選のまっただ中、ホステラーに極秘に呼び出される。彼の依頼は、市長夫人、つまり彼の妻・キャサリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)に浮気の疑いがあるから、その現場を押さえて相手の男を突き止めろ、というもの。たったそれだけの事なのに、調査費は超高額! 普通なら「コレ、ちょっとおかしいゾ?」と勘ぐるところだが、ビリーの探偵事務所が金欠で左前だって事が、この依頼シーンの前にちゃんと描かれている。だからビリーが市長からの浮気調査を二つ返事で引きうける〝心理〟に無理がない・・・今ハリウッドで注目されている、この映画の脚本家 ブライアン・タッカー は、弱冠25歳だそうだが、最近は玄人のシナリオライターでもやらない、前フリや前セツの〝コマ〟をちゃんと振っておいて話を進めておる。なかなか優秀ですな。

 で、ビリーはキャサリンの浮気相手を突き止めるのだが・・・とこの先を話しちゃうと映画を見る愉しみがなくなるので止めますがが、まぁ、二転三転。ビリー、アンタ死ぬ気かい? ってトコまでグイグイ押していく。監督はジョニー・デップの『フロム・ヘル』(2001)、デンゼル・ワシントンの『ザ・ウォーカー』(2010)を手がけた アレン・ヒューズ 。ルメット監督のようなシャープさがあり、またルメット監督になかった「権力の暗部をモヤモヤと匂わせる、思わせぶりな余韻」もやはり、ない(!)。
 そう、明晰なんですよね、とにかく。だから「暗部のモヤモヤ~」が好きな人には、この明晰さは、どう映るか。

 しかしワルの市長ホステラーを演ってるのが、身ぶりがデッカい ラッセル・クロウ ゆえに「明晰」にしかならないってトコもある。タフな善的ヒーローも、ワルな暴君マッチョも演じられるクロウだから、そのワル(悪行)はいくら裏に押し隠そうともクリア(明晰)に前面に出て来ちゃう・・・。しかも今回のクロウはやたら堂々としていて、まさに悪の権化的なムード。ちょっと大げさに言えばマーロン・ブランドみたいな感じです。
 対するビリー役の マーク・ウォールバーグ も最近、良かですね。デビュー当時は線が細いと思ったが、『ザ・ファイター』(2010)あたりから、〝男〟を演じるツラに翳りと本気が混じってきた。今回の役柄(落ちぶれた探偵役)、ジャズ野郎はとってもイイと思うんで、是非ともコレ、シリーズ物にして欲しいですね。探偵事務所の紅一点、秘書の ケイティ と込みで。

 このケイティを演じているのは アロナ・タル といって、『メンタリスト』『モンク』『スーパーナチュラル』などのテレビドラマに出ていたキュートなブロンド美女、ちょっとスカーレット・ヨハンソン似。
 タル演じるバイトの女子大生みたいなケイティが、恋人に去られ、窮地に陥っていくビリーを側面から支えるんだが、その〝やる気があるんだか、ないんだか〟な態度と、〝でもビリーには尽くす〟といった恋愛関係の(まだ)ない、つかず離れずの関係がささくれた ニューヨークの裏街に光を差している かのようで、なにかとっても良かったネ。

■ 10月19日より新宿バルト9、ユナイテット・シネマ札幌ほかにて全国ロードショー 
                                     配給:ショウゲート ■



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映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
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