名作・迷作探訪 〔邦画篇〕  メガヒット映画の功罪 <その8>

◆ 『籠の鳥』  当時の映画界を引っかき回した立石駒吉 <前篇>

 長らくご無沙汰しました。名作・迷作探訪 〔邦画篇〕の『籠の鳥』の続き、 【メガヒット映画の功罪】 を再開します。話の内容を忘れてしまった方は、 10月24日アップの【~ <その7> ◆『籠の鳥』 山本嘉次郎が先に作ってた?!】 をご参照下さい。

                       *****

 そういったわけで『籠の鳥』は本家・模倣作ともヒットとなり、それまでジリ貧生活にあえいでいた 山本嘉次郎 に背広を新調させるなど大いに儲けさせた。彼にとって『籠の鳥』は〝時の氏神〟であった。だが、コレに関わった人がすべて幸せになったか、というと、さに非ずである。

 まず沢蘭子主演の、つまりブームを巻き起こした本家『籠の鳥』を製作した 帝国キネマ だが、これが分裂してしまう。大正14年(1925)に始まった 帝キネの内紛劇 は、撮影所従業員の待遇問題に端を発したと言われるが、その遠因はこの『籠の鳥』の大ヒットにあった。

柴田  これには黒竜会の親玉だった立石駒吉さんが関わっています。帝キネは先の『籠の鳥』の大ヒットで当時の金で三十万円儲けたのですが(*1)、ちょうどその時何か新しいことをやりたいということで帝キネに入ってきた立石さんが重役でいたのです。そしてその新しいことというのが、各社から俳優、カメラマン、監督を引きぬくことだったのです。ある日、立石さんが私を呼んで「松竹では誰が好きか」と言うので、「五月信子が好きだ」となんの気なしに答えたら、「じゃあ」と言って本人を連れてきましたが、あれには驚きましたね。この引きぬきでマキノ映画などはガタガタになります。
 …(略)…。
 ところが、一番の問題は待遇が違ったことです。後から入ってきた人が非常に良いのに比べて、前からの人間は少しも〔ギャラが〕上がらないのです。せめて一緒になればよいのですが、格差が開いたままでしょう。それが第一の原因です。で、我々は自分たちで退職して、蘆屋派、アシヤ映画ということになります。
- この頃、阪東妻三郎が帝キネへいくことになっていましたが……。
柴田  阪妻は来たけれど一本も撮らないで辞めてしまったのです。
- それはどうして?
柴田  やっぱり面白くなかったのでしょう。阪妻だけですね、一本も撮らなかったのは。…(略)。 
          (柴田勝『聞き書き キネマの青春』岩本憲児/佐伯知紀、リブロポート)     
                           ※〔〕内、及び(*1)はジャズ野郎註。


 この後、帝キネは、アシヤ映画(蘆屋映画、芦屋映画の表記もアリ)、小坂映画、東邦映画と3つに分裂し、さまざまな紆余曲折を経ることになるのだが、立石駒吉という人は、そんな具合に映画界を操って、引っかき回すだけ回した希代の山師、トリックスターであった。

*1 「30万円儲けた」 柴田カメラマンは『籠の鳥』の興行収入を30万円といっているが、正確には35万円。10月22日付けの【名作・迷作探訪 〔邦画篇〕 メガヒット映画の功罪 <その5>】を参照のこと。


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