新作プレビュー  『 キリング ゲーム 』 <後篇>

◆ 狩る者と狩られる者・・・遙かなる『ディア・ハンター』へのオマージュ

 『キリング ゲーム』で展開される、山中での追跡や殺し合い、を見ているとジョン・ブアマン監督の 『脱出』 (1972年)なんかが思い出されるのですが、ああいうシャレにならない陰惨なシリアスさというのは、この映画の中に確かにある。
 また、ウィレム・デフォーが孤独な元傭兵を寡黙に演じた佳作 『ハンター』 (2011年、ダニエル・ネットハイム監督)にあった、山暮らしの知恵、自然に同化して生きる、といったエコロジカルな面もある。

 しかし、この映画を観ていて、脳裏をかすめてくるのはデ・ニーロ主演のオスカー・ムービー 『ディア・ハンター』 (1979年、マイケル・チミノ監督)だ。事実、この『キリング ゲーム』の中に、逃げてる最中のデ・ニーロが野生の鹿〔 DEER 〕と出くわす、というシーンがあったりする。偶然かもしれないけれど・・・。
 『ディア・ハンター』はヴェトナム戦争への鎮魂歌だったが、『キリング ゲーム』はボスニア紛争の後日談といった趣だから、お話にも共通性がある。
その『ディア・ハンター』で、故郷の山河では鹿を、ベトナムの戦場では敵兵を狩っていたデ・ニーロは、ココでは自分がハンティングされる(狩られる)側になるってわけで、そいつはなんとも皮肉な話だが、それは戦争に関わってしまった者の宿命なのかも知れない。ボスニア紛争は終結しても、戦争の悪弊はこういった形で尾を引いて、関わった人間を生涯苦しめていく。戦争はいけませんな。


キリングゲーム 2
▲ライフルをコヴァチ(J・トラボルタ)に向けるフォード(R・デ・ニーロ)
(C)2013 PROMISED LAND PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.


 『キリング ゲーム』の監督は、脚本家出身の マーク・スティーブン・ジョンソン (『ラブリー・オールドメン』〔1993〕ほかの脚本を担当し、『サイモン・バーチ』〔1998〕や『ゴーストライダー』〔2007〕のメガホンを執っている)って人で、荒涼とした山渓の映像には『ディア・ハンター』を思わせる自然描写も散見できる。だからこの映画には『ディア・ハンター』へのオマージュがある・・・とジャズ野郎は見ましたが。

 それはそうと、御年70歳のデ・ニーロにとってこの逃げまわる元兵士役はキツかっただろうと思うけれど、追っかけるトラボルタ(60歳)とてキツさは同じ。だからあと20歳ほど二人が若い時に撮れば良かったのに(50歳、40歳)、とは思う。「走る」「川に落ちる」などのアクション・シーンはみなスタントマンが演っているにしても、この山間部での殺陣や芝居は結構タフ。それをよく演じ切った、ご両人とも。
 だがデ・ニーロにしてみると、こんなのはまだ「軽い」ってトコかもしれない。何故ならデ・ニーロは、この後、シルヴェスター・スタローンとのリターン・マッチに臨む老いたボクサーを演じたってんだから( 『リベンジ・マッチ』 4月公開予定)。
 スタローン( 67歳! )はいわずと知れた『ロッキー』 (1977)で、デ・ニーロは名作『レイジング・ブル』 (1980)でボクサーを、それも世界チャンピオンを演じているけど、この齢になってもまだヤルとはねぇ・・・。まったく恐れ入っちゃう。

 オッと、トラボルタも忘れちゃいけない。今回、 トラさん はスキンヘッドに海苔みたいな頭髪をペタッと貼り付けたようなヘアスタイルで登場し、アゴ髭まで生やして、まるでスラブ系な顔付きになっていて驚く。驚くといえば、今回、彼は演技巧者のデ・ニーロに引けを取らない猛演で、その気魄が凄いんだ。ニタつかない、険しい顔のトラボルタを久々見た。それだけでもメッケもんです。

キリングゲーム 3
▲全編、殺気立った表情の〝トラさん〟(ジョン・トラボルタ)
(C)2013 PROMISED LAND PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.


 ■ 1月11日より新宿バルト9、ユナイテッドシネマ札幌ほか全国ロードショー 
             配給:ショウゲート/協力アミューズソフトエンタテインメント ■



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Author:高村英次
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