ブログ1周年記念エッセイ <フィルムに埋もれる> 最終回

◆夢の中でも編集していた10日間

 「現場のプロ(の編集者)なら、オマエの映画なんか半日か1日で仕上げちまうゾ」
と正月休暇に入る前に、ジャズ野郎は講師に言われていた。
 だからして、それを10日かけてやっても出来ないオレはポンコツじゃないか、と自信喪失になり、ろくろく寝ないで編集しているから疲れが溜まって、いつの間にか、後ろのグル巻き蒲団によっかかって寝ちゃってる z z z

「ア、ヤバイ、やんなきゃ」
と慌てて目を覚ますと、知らぬ間に寝てたもんだから眼鏡はかけっぱなし。
 そのかけたまんまの眼鏡に自分の映画のコマがくっついてる ・・・ そんな時は正直、映画がイヤになりましたな

 それでも編集は続けましたが、フィルムと編集機を自室に持ってきた最初の感動は何処へやら。今や部屋中に散らばり、占拠しているフィルムが忌々しくなってくる。

 憎くて憎くてたまらなくなってくる。

 あー、もう、オレはこんな生活はイヤだ。映画は懲り懲りだァ--と自分の覚悟がハンパな事をさしおいて、すべての弊害を「映画」のせいにしてしまう

 ・・・と、そんなところで目が覚める。そう、コレ、すべて夢でやんした。

 眼鏡についた1コマを払いのけて、立ち上がって部屋全体に拡がったフィルムを見つめ、嘆息しては、またぞろ編集機のハンドルをキコキコ廻していたのは、なんと「夢の中」でだった!
 エー、夢かよぉ・・・と思う、その目の前に、夢に出てきた編集機。編集やりかけのフィルムが装填され、その映像が映っているモニターがコッチを見ている。
 夢でしていた作業を、現実で「また」やらねばならない。

 それはまるで、ブライアン・デ・パルマ監督がよく使う、夢の導入による〝悪夢の連鎖〟!

 要するに寝ても覚めても、「フィルムを編集する」という同じ作業をしているわけですな。馬車馬のように・・・24時間不眠不休で・・・何処まで続くぬかる溝。
 編集が終わらない、ということは「映画が完成しない」という事とイコールで、その不安に押し潰され、未完成に終わった場合は 「卒業できない」 という悪夢な結果が待っているから、精を出してやるのだが、編集のために設けた時間的猶予はどんどんなくなっていく・・・もはや、作品を良くしよう、とか、芸術的創造なんかはどうでもよくなってくる。

 とにかく〝終われぇ~! 終わってくれぇ~!〟

                    *****

 この時のこと、今でも時々「夢」に見ます。それほど鮮烈な、強烈な体験です。

 たった10日間でしたが、フィルムに埋もれるようにして寝て、起きて、生活していた。

              それは天国か、地獄か。

 ジャズ野郎は後者だと感じたから、その道を諦めたわけですが、劇映画の編集をしているプロのエディターの方々には笑われるでしょうね。
「そんなことで諦めるなら、映画なんかヤレねぇーよ」って。

 また一般の映画マニアは、そんな具合にフィルムに埋もれて、思う存分、映画と取っ組めたんだから
「幸せじゃないか!」
 とも思うでしょう。確かにそれは一理あります。ジャズめが、映画の製作にはいかない、と決断できたのは、良くも悪くもこの時、とことん 「フィルムに埋もれた」 からですから。

 フィルムに埋もれてもがいていた1986年の正月、郷里の高校時代の同級生(R・N)が上京して我が下宿を訪ねてくれなかったら、ジャズ野郎はノイローゼでどうにかなっていたかも知れない。もちろん、部屋はフィルムでわやなので、R・N君を部屋に招くことは出来ず、近くのファミレスでお茶しましたが、このひとときの「安堵感」というものは今でも忘れない。

      約 30 年前の、映画に淫していた頃のビタースイートな思い出です。       〔完〕


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懐かしい話をありがとう。

今の日芸映画学科の学生はフィルムに触ることすらないそーだ。みーんなビデオ編集だからね。現像場も稼働していない。

先日、現役の日芸映画学科生に聞いたところでは、16ミリの編集機材も骨董品のように編集室の片隅に飾られているだけだそうだ。

フィルム編集を知らない世代からは、とんでもない発言が聞けるから楽しいよ。

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