新作プレビュー  『 アメリカン・ハッスル 』  <前編>

◆〝華麗〟とはほど遠い、シケた詐欺師一派のヒッカケ大作戦

 このブログを始めた1年前にも、その監督作品( 『世界にひとつのプレイブック』2013年1月28・29日付 )がアカデミー賞にノミネートされていた デビッド・O・ラッセル 監督ですが、なんと今回もまたこの『アメリカン・ハッスル』でノミネート。
 しかも作品・監督・主演男優・助演男優・主演女優・助演女優・脚本・美術・衣裳デザイン・編集の最多10部門で候補にあがってるって事ですから、アチラでの評価はますます高まっているようですが、じゃ今度の『~ハッスル』はどんな映画かいな、と思って見てみたら、これが期待を裏切らない、〝いつも〟のラッセル調で安心いたしました。


アメリカン・ハッスル ポスタービジュアル
▲ 『アメリカン・ハッスル』 日本版ポスター   (C)2013CTMG


 というのは、ポスターを含めた派手な各種ビジュアルや、ノリのいい予告編などを見、お話が詐欺師を使って汚職政治家をカモって逮捕したという実話〝アブスキャム事件〟がベース・・・と聞くと、どうも〝いつも〟の< どーしよーもない人間達とその関係 > に密着したラッセル映画から外れている感じで、どことなく垢抜けててカックイイ。
 ゆえに「 『スティング』 (1973年・米)みたいな映画になってんのかな?」と危惧したわけですが、いやいや、そこはちゃんとラッセル監督の世界になっておりました。

 ジャズ野郎はひと安心するとともに、こんなジャンルを手がける時でも--
「ダメダメな人間達とそのグズグズな関係。絆さえもズタボロなのに、しかしそれにしがみつこうとする、哀れで可笑しく、醜くて気高い生き様を活写する」
 --という己の視点を貫くんだなあ、と感心もしました。

 では、そのラッセル調が今回どのように展開されているか、というと・・・それは言いたくないんです。昨年の 『ゼロ・グラビティ』 を紹介した時みたいに、本当はその内容も良い所も何にも紹介したくない気分です。

 というか、その良い所ってのは・・・そうですね、紹介しようにも紹介できない、というか、見た人が勝手に判断して欲しいタイプのもんですな。だから「ちっともオモロクねぇジャン」って人もいるかもしんない。ま、それならソレでしょうがない。
 でも「オモロクねぇ」って事はおそらくない・・・ンー、まぁ、粗筋ぐらいは書いときますか。

〔 1979年--詐欺師のアーヴィン(クリスチャン・ベイル)は妻子持ちでありながら、パーティで知り合ったシドニー(エイミー・アダムス)にひと目惚れ。彼女に詐欺師の正体を明かし、意気投合した二人はケチな詐欺に没頭。そこそこ詐欺稼業も軌道に乗ってきた矢先、シドニーがFBIに逮捕されてしまう。
 逮捕した捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)は出世欲に凝り固まったアホな男で、カムデン市の市長カーマイン(ジェレミー・レナー)を汚職であげるために、アーヴィンとシドニーを利用。リッチーがアーヴィンに考えさせた市長をカモる作戦は、市長が建設しようとしているカジノ・エリア〝アトランティック・シティ〟に対してアラブ某国の大富豪シーク〔王族〕が投資するように見せかけて、その現場を収賄行為として押さえようというもの。もちろん、アラブのシークってのはインチキで・・・〕


 と、こんな感じでアーヴィン一派にしてみれば、〝細工は流々、仕上げをごろうじろ〟といきたかったが、これがさまざまなトラブルに見舞われて、作戦(ストーリー)がアッチャコッチャと蛇行する・・・。      

 そうです、この映画、ひと筋縄にはいかない

 それはストーリー展開もそうですが、クリスチャン・ベイル、ベイルの妻役のジェニファー・ローレンス、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパーら主要キャストがみな弱さを抱えた、愛すべきろくでなし で、ベイルがアダムスと、そのアダムスがクーパーとそれぞれ惚れ合い、からみ合うから、もう、その関係がグッチャグチャでマイッちゃう。


アメリカン・ハッスル メイン
▲ アーヴィン(C・ベイル)に肩を組まれている中央の人物が
  カモのカーマイン市長(J・レナー)    (C)2013CTMG

 ところが--本来〝騙しの快感〟を描くべきこの映画は、その果てしもない、グズグズな人間関係のあり方こそが、見ていて楽しい。ホントなら本筋の脇にちょっと描いてあればいいような、それぞれの(変人)キャラクターが濃密に描かれていて(これこそが、デビッド・O・ラッセルのラッセルたらんとする部分ですが)、収拾がつかぬほどに面白い。
 いつもの、せっかちなジャズ野郎なら焦れったくなって、「早く本筋に戻ってよ!」と怒るところですが、いやいや、このグズグズが面白いのです。
 だからお話そっちのけでずっと見ていたくなるんですな、このろくでなしどもの行ったり来たりを、すったもんだを!      〔続く〕

   ■ 1月31日より東京TOHOシネマズ みゆき座、札幌シネマフロンティア、
       ユナイテッドシネマ札幌、シネプレックス旭川ほか全国ロードショー 
                                 配給:ファントム・フィルム ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >





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Author:高村英次
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