新作プレビュー 『 ラッシュ / プライドと友情 』 <その3>

◆ラウダとハントに見るライバル観 -- 真に競い合うための〝資格〟

 〝ドイツGPの墓場〟と呼ばれる、世界で一番危険なサーキット、ニュルンブルグでラウダは事故り、瀕死の重傷で病院に担ぎこまれる。一命は取り留めたものの、彼の身体はヒドい火傷で・・・というその一切は、是非スクリーンで是非ご覧頂きたいのですが、そんな致命的とも思える事故から彼はたった42日後に復活! F1レースに戻って、サーキットを突っ走るのです。
 実話だから、ホントの事だけど、これには胸打たれましたね。だってヘルメット(あの密着度の高い、着脱するのがシンドいレース用のメットですゾ)を被るだけでも、もう、めちゃくちゃ痛いハズなのに、それをも乗り越えて、ラウダはサーキットに戻る。
 コレすべて、ハントに負けたくないという一念のため。医者や妻の止めるのも振り切ってレースに舞い戻る・・・もう意地ですな、男の意地。

                        ラッシュ ラウダの喝采
▲ 観衆の喝采に応えるラウダ
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.
ALL RIGHTS RESERVED.

 かたやハントの方も自堕落さから女房と離婚し、マスコミとも衝突して物議を醸すのだけれど、殊、レースとなるとラウダに負けたくないから猛然と頑張る。
 性格は正反対、価値観も生き様も違う、でも同じレースで雌雄を決するうちに、二人の心には通じ合う何かが・・・と書けば、その通りなんだけど、昨今の日本映画、特にスポーツもの(スポ根)で見られるように、ライバル同士が簡単に仲良くなったり、肩組んだりして、共に泣く、なんてヤワな寄り添い方はしないのです。
 会えばいつもお互いを中傷し、暴力こそ振るわないが、その口げんかのエゲツなさはかなりシビアで、友情の「ゆ」の字もない。しかし・・・いや、いいシーンがあるんですけどね、ココでは言わないことにしときます。


 話は変わりますが--去年の秋だったか、ゴルフの青木(功)さんが
「(試合を)楽しむ? ・・・冗談じゃない」
 というよう発言をしていましたが、本当のプロ、本当のライバル同士というものは、ゲームを真剣に、それこそ親の敵を取るような闘争心でもって臨むもの。
 だから、今の若いアスリート達がよく口にする「試合を楽しんできます」とか「勝負は負けましたが、楽しめました!」という言葉が、青木さんは許せなかったんだろう。
 青木さん達の世代(野球でいえば王・長島=ON、サッカーで言えば釜本・杉山、相撲で言えば大鵬・柏戸、プロレスでいえばジャイアント馬場とアントニオ猪木・・・)には、
 試合=勝負を楽しむ、などという発想は、
たとえ、それが自分のプレッシャーを抑えるための自己暗示だ、としてもなかった(但し、長嶋茂雄さんは例外です。この方は別格ですから)。

ラッシュ 晩年のハントとラウダ
▲ 晩年、レースを退いたハントはラウダに・・・
(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 『 ラッシュ 』で描かれるニキ・ラウダとジェームズ・ハントの関係には、なにかそういう昔気質の、一本スジの通ったライバル魂がある。これもまた友情だと思うんです。変にベタベタした、なれ合いのイヤラしいもんじゃなく、赤く焼けただれた尖った2本の火鉢が熱気を放ちながら、どこまでも交差せずに見合っている、というような。

 負けず嫌いで、おのおのが「俺が勝った」と思っている二人ではあるが、そういう頑固な勝負師があの時代(1970年代)にはフツーにいたような気がする。
 きっとジャズ野郎がこの映画に惹かれるのは、こうしたふたりの男の闘いが、(平成の今じゃなく)昭和のマンガ誌『ジャンプ』や『少年サンデー』『少年マガジン』で熱く描かれてたマンガ、スポ根マンガのそれを思い出させるからかも知れない。
 つまり、この映画はそれくらい分かりやすい、って事。ロン・ハワードの演出はスッキリしなやかで、結構大胆、そして分かりやすい。

 最後に、ニキ・ラウダを演じていたダニエル・ブリュールはラウダに似てたなぁ。もう、ほとんどクリソツで・・・マイッタ。
 
 ■ 2月7日より東京・TOHOシネマズ日劇、札幌シネマフロンティア、
          ユナイテッド・シネマ札幌ほか全国ロードショー 配給:GAGA ■


PS  一般の人はなかなか入手できないと思うけど、読む機会があったら、『ラッシュ』のマスコミ用プレスシートに載っている、芝山幹郎さんの解説( リスク・ジャンキーの祝祭 )と今宮純さんのコラム( “最速”と“最強”の邂逅~魂のサイド・バイ・サイド )は是非読んでほしい。ジャズ野郎がグダグダ書いたブログよりも内容充実、示唆に富んでいて素晴らしい。プレスシート自体もギャガさん入魂の編集でいい仕上がりデス。


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
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