新作プレビュー  『 エージェント:ライアン 』 <後編> 

◆ CIA局員の〝日記〟みたいなオリジナルを超越!

 監督は英国のシャイクスピア俳優で監督も手がける ケネス・ブラナー 。この人の映画っていうのは、器用貧乏っていうのか、なんとなく舞台風というかオペラチックな高級感を盛ろうとして、その割には映像がこじんまりして(よく、アップの人物の頭が切れてました)、ビジュアル感覚がイマイチで嫌でしたが、今回、場違いともいえるアクション映画を手がけている割には、非常によく撮っている。
 まるでアメリカ人の監督が撮ったみたいに。ま、誰が撮ってもハリウッドで編集されればアメリカ映画になってしまう、のが向こうの凄いところですが、アートなブラナー監督も素直にそれに従って、気持ちよくスパイ・アクション映画(演出)を楽しんでいる、という感じが伝わってきて、好感持てます。
 この作品の前に、マーヴェル・コミックの大作『マイティ・ソー』 (2011)で娯楽物をこなし、それが大ヒットしたから、味をしめたものか。いずれにしても、大人になりましたね、ブラナーさんも。
 加えてブラナーさんは チェレビン という、むくつけき悪役も演じていて、いい仕事してます。

エージェント・ライアン チェレビン
▲ ちょいと偏執狂的な悪党チェレビン(右、K・ブラナー)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 さらっと、シノプシス(ストーリー)をば。

〔 作戦中に瀕死の重傷を負った海兵隊員のジャック・ライアン(クリス・パイン)は、辛いリハビリを克服した後、その能力を評価されてCIA入り。表向きはウオール街の投資銀行の社員だが、国際的な経済犯罪の兆候を調査するアナリストとして隠密裡に活動していた。
 やがてライアンはロシアの大物投資家チェレビン(ケネス・ブラナー)の投資会社が不穏な資金操作をしている事に気づき、国際的な金融テロを計画している、と上司のハーパー(ケヴィン・コスナー)に報告。ただちに海外主張と称してモスクワに渡るライアン、ところがそんな彼の前にさっそく、刺客が・・・ 〕


 トム・クランシー・ファンの人には叱られるかもしれませんが、ジャズ野郎はクランシー・ノヴェルってのが苦手。だって長くてカッタるいんだもん。
 読んだのは『トータル・フィアーズ』だったか、アレでも、まー、延々とライアンの日々の行動が克明に書かれてますよね。

「朝、何時に起きて、何食って、新聞を読むと気になる記事を発見、するとTVのニュースでも緊急性の高い海外の事件を報じている。と、そこへCIAだか政府機関からの電話がかかってきて話し込み、女房子供との会話もそこそこに車で出発。指定されたところで要人と会い、かくかくしかじかと話を詰めて、局のデスクに戻って・・・(省略)・・・・夜、スポーツジムで汗を流して、帰りがけ、携帯に上司から電話が入って明日のスケジュールを確認しながら、帰宅。遅い夕食、入浴、妻と軽く語らって就寝。結局、この日は何もなかった。そして翌日も朝、目覚めて・・・」
 みたいな、コレが毎日続いていく。
 〝小説じゃないジャン、日記ジャン〟っていいたくなるよな本。

 上記の一連の流れ(「~」)は、あくまで喩えですけど、ほぼこんな感じの生活スケッチが長々と続いて、ようやく事件が動き出し、動き出してからも描写が詳細というのか、諄いというのか、ダラダラと続くんですよね。ジャズ野郎みたいな気の短い読書家には耐えられない“世界”です。
 それでも、こういうのがいい、という人はいる。亡くなった俳優の 児玉清 さんなんか大ファンだった。児玉さんはライアン原作物の後書きを書いてるくらいで、そこではこのクランシー・タッチを絶賛して「いつまでも読んでいたい」なんて書いてた(と思います)。
 そんな人もいるから、一概には言えませんけど、とにかくジャズめは原作は超苦手。

 だから、ハリソン・フォードの『パトリオット・ゲーム』(1992)も『今そこにある危機』(1994)も、原作の冗長な感じを引きずった緩慢な感じで、今ひとつスピード感がなく、
「(映画の中で)何が起ころうしていて、今どうなっているのか」
 ってのが判らなくて、見ていて焦れったかった。

 その点、今回の新生ライアンは、そんなオリジナル(今回のには原作はない、ようです)の調子を引きずらず、国際的な陰謀の渦中にある大国同士の駈け引き=情報戦の〝画にならない地味なやりとり〟をバッサリと刈り込んで、ヴィジュアル先行で徹底的に押して押して押しまくった、という作り方が奏功している、と思います。しかも見ていて分かりやすいし。

 見ていて分かりやすいし、見て損したという感じはない。それどころか、ビッグ・バジェットをつぎ込んだ大作感があって、デラックスで、アクションもキレている。

 アクション! そうですね、なかなかヤルんだよなぁ。〝コレがハリウッド・メジャーの力業だァー!〟、って感じで。どんな事やってるかは言いません、実際に観に行って下さい。


エージェント・ライアン ハーパー
▲ 重症のライアンをCIAにスカウトするハーパー(K・コスナー)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 あと、いいのは ケヴィン・コスナー の上司ハーパーかな。コスナーももう初老といっていいよな上官役を演るようになったんだなぁ、と感慨しばし。だって 『追いつめられて』 (1987=昭和62年)あたりの頃なんか、〝スティーブ・マックイーンの再来〟って言われたんだよ。それが今はまるで、野球で言うなら老練なコーチの態。
 でも、コスナーみたいな大物が上官で、クリス・パインの背後にデンと構えていると、作品の格が増すんですよね。ゴージャスな感じになる。
 キーラ・ナイトレイがライアンの恋人役で出て来る以外、めぼしい俳優もスターも出ないが、キャストを絞り込んで、その分、アクションにお金をかけているのがよ~く判る。

               ・・・だから、見てネ。

  ■  2月14日先行公開、2月15日から全国ロードショー  
                   配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン ■


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