新作プレビュー  『 ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 』 <前編>

◆毎度お馴染みのしみじみとした語り口、ブルース・ダーン主演!

ネブラスカ サブ4
▲ 次男のデイビッド(W・フォーテ)と旅をするウディ(B・ダーン、左)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 『アバウト・シュミット』 (2002)、 『サイドウェイ』(2004) 、 『ファミリー・ツリー』 (2011) ・・・といった諸作を見ていると、その監督アレクサンダー・ペインという人は、実に手堅い、というか、諦観的というか、しみじみというか、常に惻々と心に染みるタッチでもって家族のドラマを描きます。
 そして、その静穏なムードや淡々とした話の進め方は、どうも日本の、小津安二郎監督の作品を思わせる。庶民の泣き笑いを、第三者的な視点で見つめ、時折、ちょっぴりワサビを利かせて泣かせる、とでもいうような。

 とはいえ正確にいうと、ムードこそ小津映画のようでいて、内容やドラマ作りの性格はまるで違う。
 ペイン作品は、往々にして旅映画(ロードムービー)の形をとり、その旅路の過程で出会う人々や事件を通じて、今自分の立っている〝甘辛い現実〟を思い知る--というもので、ドラマのバックシーンが常に動く。でも小津映画では背景は動きません(ついでに、人物達も、そしてキャメラもあまり動きませんが)。

 だから両者は違うんだけど、なんというか、視座が同じとでもいうのか、とにかくペイン監督の作品ってのは日本映画、小津とはいわないまでも、五所平之助蒲田=大船調)、松竹育ちで東宝でその作品世界が開花した成瀬巳喜男が描く市民生活、そのペーソスの〝匂い〟が同じように思うんです。

 先に挙げたペイン作品は、いずれもその年のアカデミー賞の候補に上っていて批評家筋にも高評価。アチラでもペインの描く、古き良き松竹〝蒲田=大船調〟がウケている、というのは意外な気もしますが、この事実を知ったら、その蒲田=大船調を定着させた城戸四郎撮影所長やオヅヤス、チョコ平(五所平之助)、〝やるせなきお〟の成瀬さんも草葉の陰で喜んでいることでしょう。

 前回の『ファミリー・ツリー』ではジョージ・クルーニーがアカデミー主演賞にノミネートされましたが、今回の『ネブラスカ』ではなんとブルース・ダーンが候補になっている! ブルース・ダーンといえば、西部劇の王様=ジョン・ウェインを撃ち殺した男(を演じた)ですゾ。
 〝スクリーンでは絶対死なない不屈のヒーロー〟だったジョン・ウェインを、卑怯にも背中から撃って殺した・・・この作品『11人のカウボーイ』 (1972年、マーク・ライデル監督)は、映画の半ばでウェインが死に、11人の少年ガンマンがその弔い合戦に悪党のダーンを追跡する話。だから1970年代から(映画館で)映画を観てる映画ファンにとってブルース・ダーンは忘れられない男優(おとこ)ですが、ジャズ野郎はブルース・ダーンっつうと、もうアルフレッド・ヒッチコック監督の『ファミリー・プロット』 (1976年)ですな。
 この〝ヒッチコック映画の中で最も好きな作品〟の中で、色ぼけなガールフレンド(バーバラ・ハリス)と楽しくも怖い「富豪の相続人捜し」に乗り出す、長身で元気いっぱいのタクシー・ドライバーがダーンの役どころで、オバカでよかった。
 時折、目をまん丸にする表情がコミカルで、どの映画でどんなキャラクターを演じていても、そのお目々のせいで、どこか憎めない。

 そんな、かつては西部劇スターを倒すヒールも演じた、タフだったブルース・ダーンも今は老いさらばえ、頭も半分ボケかかっているような感じ。足下もおぼつかなく、ヨロヨロとほっつき歩いているのですが、その場所はなんと高速道路。しかも逆走(逆歩行)!
 「じいさん、しっかりしなよ」とお巡りさんに両側から抱えられ、エスコートされながら連行される。その侘びしい姿が、『ネブラスカ』の開巻シーン・・・ときに時間は残酷です。  〔続く〕

ネブラスカ ポスター
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

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