新作プレビュー  『 ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 』 <後編>

◆ 人生も旅も面倒臭いけど、旅の終りはなんか「いいね!」

    ストーリーをば。

〔 応募してもいないのに--
  「おめでとうございます、アナタに○○が当たりました!」とか
  「懸賞に当選しました!」
 という知らせがいきなり届くって事、ありますよね。もちろん、詐欺のインチキですが。
 ネブラスカに住む老人ウディ(ブルース・ダーン)が受けとったそれには〝100万ドルに当選した〟とある。
 「詐欺に決まってるわ!」と古女房のケイト(ジューン・スキップ)と息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)は一顧だにしないが、当選通知を真に受けたウディは、その賞金を受けとるために遙か彼方のネブラスカまで行くと言ってきかない。オープニングで、高速道路をトボトボ歩いていたのも、そのためだ。いくら説得しても「行く」と言ってきかない。
 そこでデイビッドは、「そこに連れて行けばオヤジも納得するだろう」と、ウディを車に乗せてロング・ドライブに出かける。自宅のあるモンタナ州のビリングスからネブラスカ州のリンカーンまでは1500キロの長~い道のり。
 途中で立ち寄った親戚の家で、ウディが周囲に懸賞当選を吹聴しちゃったから、さあ大変! 
 ゲスい甥っ子兄弟や腹黒な旧友たちが、ウディの〝大金〟に群がってきちゃって、
 もう大騒ぎ・・・! 〕


メインカット
▲ 旅に出た父と子は、ネブラスカで本当に100万ドルを手に出来る?
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 この映画の予告編を見た人はお気づきでしょうが、この映画は全編モノクロ(白黒)。

 かつてはウディ・アレン監督がよく使い、最近ではアカデミー賞を受賞した 『アーティスト』 (2011年・仏、ミシェル・アザナヴィシウス監督)、戦争映画などでは今もモノクロで描かれる事はありますが(例えばスピルバーグ監督の 『シンドラーのリスト』 1993年)、白と黒そしてグレーで定着したモンタナ ~ ネブラスカまでの風景、その旅はどこかノスタルジックで切なくて。
 映画ファンなら、すぐに 『ラストショー』 (1971年・米)や 『ペーパームーン』 (1973年・米、ともにピーター・ボグダノビッチ監督)あたりを想起しちゃうところですが、ウディとデイビッドが向かう目的地のネブラスカは、ペイン監督の故郷ってことで、監督はこの映画のシナリオを一読した時からこの映画をモノクロで撮ろう、と決意したとか。

 モノクロで映し出された、このアメリカ中西部の風景というのは、人っけもなくて、閑散というか荒漠としていて、冬の北海道の雪原のように広大で寒々しく、淋しく見える。
 途中で泊めて貰う親戚やその町の人々、かつてウディが通っていたバーに集う旧友の姿がスクリーンに映ると、思わずほっとするような、そんな安堵感はあるものの、やはりみんな、腹にイチモツある俗物ども で、いい奴かと思いきや、ケチで強欲でなかなかに扱いずらい。

 せっかく旅に出たのに、なにか下世話な人間社会の縮図に飛び込んだようで、ウディとデイビッドはいまいち気勢が上がらない(こういう所が、蒲田=大船調ですな)。日常生活や人間関係の煩わしさやイヤな部分があちこちに顔を出してきて、〝生きるって面倒臭いなぁ〟と思ってしまう。

 そんないまいちハジけない旅で、この親子がどうなっていくか、をじっくりと、心を平らにして御覧頂きたい。笑っちゃうとこも、泣いちゃうとこもある・・・けれど、それはあえて書きません。ペイン作品を1本でも見ている人なら、容易に予想できますから。

ウディと奥さん
▲ 旅先にやって来た妻のケイト(J・スキップ、右)と食事するウディ(B・ダーン)
(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 ジャズ野郎も父を亡くしましたから、こういう父と子のロードムービーってのは、それだけでちょっと弱い。でもこの作品には、見ながら亡父を思い出して涙する、ってのはなくて、そうした感傷よりも、父親が息子をどう思い、また息子が親父をどう思っているか、というその感情の流露がよく描かれてて、面白かった。

 老人っていうのは、ジャズめの亡父や今一緒に住んでる母親もそうですが、急に呼びかけたりすると、ビックリしたような顔をしてコチラを振り向くことがある。
 耳が遠いからなのか、老人特有の表情なのか--その両方かもしれませんが、この映画で時折、ウディ役のブルース・ダーンがそういう表情を息子に見せる。そんな時は、若い頃の、トレードマークの、目をまん丸くした顔でコッチを見るんですよね。
 その目を見ると 「あー、目だけは若い頃のまんまだー」 と嬉しくなった。
 頭髪は白くなり、禿散らかしてはいるけれど、我らのブルース・ダーンはしっかり生きてた。それだけで、この映画を観て良かったナ、と思いましたよ。

    ■ 2月28日よりTOHOシネマズ シャンテ&新宿武蔵野館、
       札幌シネマフロンティアほかにて全国ロードショー  配給:ロングライド  ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >


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映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

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