新作プレビュー  『 あなたを抱きしめる日まで 』

◆ 引き離された〝息子〟を探す、母と〝息子〟の各駅停車ぶらり旅


「あなたを抱きしめる日まで」ポスター
(C)2012 PHILOMENA LIMED, PATHE PRODUTIONS, BRITISH FILM INSTITUTE AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION. ALL RESERVED.


 罰当たりな〝不信心者〟のジャズ野郎でありますから、日頃行う〝宗教行事〟といえば、せいぜい、朝、仏壇に手を合わせることぐらいが関の山ですが、キリスト教の中でも カトリック っていうのは「あれもダメ、これもダメ」と戒律が厳しくて、しかもそのカトリック信者が国民の8割以上を占める アイルランド は大変ですな。
 何せカトリックでは、離婚も避妊も中絶も(基本的には)NGだってことで、10代の娘さんで〝オイタ〟して子供でもこさえちゃった日にゃ、家族の恥、一族の恥、人間の恥、てな具合に迫害されて、一生、肩身の狭いを思いをして生きていかにゃあならない。 

  この映画『あなたを抱きしめる日』のヒロイン・フィロミナは、まさにそうした悲痛な境遇を生き抜いてきた女性です。

〔 フィロミナ(ジュディ・デンチ)は、今から50年前の10代の頃、若気の至りでうっかり妊娠。そのせいで、家から追ん出されて、修道院に入れられてそこで出産するのだが、衣食住にありつけたものの、産んだ我が子に会える時間は1日1時間。それ以外の時間は、すべて修道院に奉仕、つまりは死ぬほどただ働きをさせられる、ってことで、
           「はー、修道院ってそんな酷いトコなん?!」
 と思う間もなく、3歳になったフィロミナの赤ちゃん・アンソニーは腹黒いシスターによって、勝手にアメリカの里親に売り飛ばされてしまう!
 フィロミナは、その時の哀しみと苦痛、そして後悔を胸に秘めつつ、息子に会いたい一心で生きてきた。その間、何度も修道院に問い合わせたが、息子の消息は「不明」の一点張り。
 ところがひょんな事で職場を追われたBBCのジャーナリスト・マーティン(スティーヴ・クーガン)と知り合い、強力な取材力と押しの強さを持つ彼を味方に引き入れて、今、50歳になっているハズのアンソニーを探しに、アメリカへ旅立つ。
                そこで二人は早々に、ある事実に直面する…… 〕



「あなたを抱きしめる日まで」シーン1
▲ アメリカ到着--荷物と一緒にカートに乗ってご入来のふたり
(C)2012 PHILOMENA LIMED, PATHE PRODUTIONS,BRITISH FILM INSTITUTE
 AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION. ALL RESERVED.


 修道院で無理矢理、我が子と引き離されたフィロミナが、マーティンとともにアメリカに渡って、息子のアンソニーに近づいていく〝息子捜しの旅〟がちょいとスリリングで面白い。
 息子の知人達を尋ねていくうちに浮かび上がってくる〝我が子の人生〟--学校への入学(式)とかスポーツを楽しむ少年時代、大学を経て就職、友人達との交友などなど--本来、親も傍にいて一緒に楽しんだり、泣いたり笑ったりできたハズの人生を、息子の友人達の証言をもとに〝追体験〟するしかないフィロミナの切なさが胸に迫ってきます。

 同時にこのフィロミナ、結構クールで気の強い毒舌婆ちゃんなもんだから、マーティンと事ある毎に衝突
 重大事に直面すると「私、やっぱり辞めとくわ」と弱気になり、かと思うと、翌日には「やっぱり、やってみる!」と前言撤回を繰り返す・・・老人によくあるこうした気まぐれに付き合うマーティンには、この「修道院が赤ん坊を外国に売っていた」証拠を掴んで、人身売買のスキャンダルとして発表して第一線に復帰したい、てな下心がある。
 なもんで、フィロミナの御機嫌を取って、その気まぐれに付き合うんだけど、それでも時々、ムカついちゃって付き合いきれなくもなる。

 そんなフェロミナとマーティンの関係は、いつしか本当の親子のそれになっていく。
マーティンはフィロミナの〝息子〟みたいになっていき、口うるさい母親とビジネスライクな息子が旅先で言い争い、ちょいちょいムッとして、また仲直りして、またケンカして・・・そんな親子ゲンカが爽やかに展開していくあたりは、この前紹介した 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』 と同じ調子です。
 『ネブラスカ』は父と息子の旅だったけど、コチラは母と息子の旅ってわけです。どっちが感動的か、どっちが泣けるか、見比べてみるのもいいですね。


「あなたを抱きしめる日まで」シーン
▲ 007シリーズで「M」を演じたジュディ・デンチ(右)。でもココではシワも隠さぬ、
 ノーメイク(じゃないかと思うけど)で登場して、子を思う母親役を適演。
(C)2012 PHILOMENA LIMED, PATHE PRODUTIONS, BRITISH FILM INSTITUTE AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION. ALL RESERVED.


 監督は『グリフターズ』『クィーン』の スティーブン・フリアーズ ・・・昔あったトゲはなくなって、随分丸くなった気がするけど、無難な手さばき(演出)はこの題材にはマッチしてた。
 
 フィロミナは息子探しの旅の果てに、首尾良くアンソニーと巡り会えるのか・・・事の次第は劇場にて。

 ■ 3月15日より東京・新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、
     Bunkamura ル・シネマ、札幌シネマフロンティアほかにて全国ロードショー
                              配給:ファントム・フィルム  ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

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