新作プレビュー  『 とらわれて夏 』

◆しあわせの階段をのぼり始めた〝想い出の夏〟

とらわれて夏 1
▲ 不慮の〝侵入者〟フランクにおびえるアデル(右、K・ウィンスレット)
(C)MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank's Pie Company LLC. All rights Reserved.


 ケイト・ウィンスレット・・・そう、あの 『タイタニック』 (1997)でヒロインを演った女(ひと)ですが、この間までこの女優さんが好きじゃなかった。いや、今でも特に好きな女優(ひと)ってわけじゃない。ちゃんと演技を勉強してきた、叩き上げの実力派だってことはよく判る。
 だが、きっと『タイタニック』のヒロイン役のせいなんだろうけど、見かけも含めて「何にも感じない」んだ。大体、あの豪華客船が沈没するまでを延々と見せただけの『タイタニック』が気に入らんのよ。長くて死ぬほど退屈な上に、クライマックスがヒドい。
 レオナルド・ディカプリオ が氷の海ん中に落っこちて、「君は生きろ!」とばかりに女の瞳を見つめながら、ブク、ブク、ブクゥ・・・と海中に沈んでいく。
 あそこ、ホントなら『ロミオとジュリエット』だよね。
 女の方も「アナタ一人を死なせない、私も死ぬ!」とか叫んでドボンして一緒に死ぬ。それなら解るけど、生き延びちゃうんだよなぁ、あのヒロイン。あれは白けた。
 それに、ケイト嬢はああいう下層階級の青年が憧れる上流の娘にしちゃ、肉厚で、エレガントなところがなくて、〝いかにも(英国の)ロイヤル演技教習所(?)から来ました〟、って感じでね。ああいうスペクタクル大作のヒロインってのは、少々演技が出来なくても、それなりに美人でキュートな感じの人(ひと)でいい。
 それがケイト嬢では、男が命を賭けてまで助けようとはしないだろー・・・と思うんですけどね。

 てなわけで『タイタニック』以降、苦手だったケイトさんへの印象が変わったのは、やはり 『愛を読むひと』 (2008)から。あのハンナという女の役は良かったネ。
 アレは、エロいところもあったけど、意味あるエロさで、またそうしたエロいシーンを演じてても、肉厚な、はっきり言うとオバチャンっぽいケイトさんだけに、コチラもそれほどホットにはなれず(ま、好みの問題ですが)。でもそれが逆にあの切ない展開と、悲痛な運命を受け入れる彼女にマッチしていて、グッときましたな。
 あー、この人は巧い女優(ひと)なんだ・・・といたく関心した。

とらわれて夏 2(メイン)
▲ 野性的なフランクに心惹かれるアデル
(C)MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank's Pie Company LLC. All rights Reserved.


 で、前置きが長くなりましたが、今回の 『とらわれて夏』もは良いですね。
 ちょっと、マイッタです。
 コレで本当にケイト・ウィンスレットのファンになりましたね、ジャズめは。

 いつもならこの辺で、ストーリーをご紹介するところですが、今回はそれをしたくない。
 説明しちゃうと、「なぁんだ、それって○○○さんの『○○なる○の○○声』(昭和55=1980年)じゃないか」なんて思われそうで(いや、実を言うとその通りなんです)。

 ある田舎町で、13歳の息子と一緒に静かに暮らしていた アデル (K・ウィンスレット)という母親が、ふとしたことから理由アリな男フランク(ジョシュ・ブローリン、コレ、ええ役だよなぁ)と数日間過ごすことになる。この男に強制されて、息子ともども軟禁状態になっていくのだが、それがそのうち、ストックホルム症候群 〔*1〕 じゃないけれども、アデルとフランクの心が通い始める。そして母子と男の三人は、幸せな新生活へ踏み出そうとする・・・。

 と、こんな具合に物語をボンヤリと紹介するだけにとどめます。ボヤかしてる部分(設定)は、映画を見始めればすぐに解りますから。

 いろんな事件が、それも哀しい事がいろいろとあって、このお母さんのアデルは精神的に不安定になっている。そうした彼女がフランクという男と知り合って、こもごもあって、ようやく幸せを掴みかける・・・ケイト・ウィンスレットがその微妙な精神状態を実に巧~く表現している。ちょっとした目の動き、手指の仕種が、不安定で脆くなっているアデルの内面を如実に表現していて、余りある。久しぶりに、役者の演技に感心しました。
 たとえるなら、このアデルという女性は今にも割れて、粉々になりそうなガラス細工の人形のような感じ。
 だから息子やフランクとの <幸福そうな関係> を見ていると、どうしてもアデルに心情的に同化して、同情しちゃって、
「うまくいってくれればいい」が、
「絶対、幸せになれよ」に変わり、終いには、
「幸せになれ、なれ、なってくれーーーッ!」
 とまるで長野五輪のジャンプの原田(雅彦)を応援する時みたいな気分になってくる。


とらわれて夏 3
▲ アデルとその子ヘンリーと一緒に、得意のピーチ・パイを作るフランク(J・ブローリン、中央)
(C)MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank's Pie Company LLC. All rights Reserved.

 ストーリーもロクに説明してないのにラストシーンを語る、なんてもってのほかだけど、しかしココは敢えてその禁を破りましょう。
 長い、やんごとなき年月を経て、アデルとフランクは再会する。数年経ってるわけだから、もはや二人は若くはない。若くないどころか、もう初老に近い。
 でもステキだ。素晴らしくステキな <男と女> になっている。
 この時、その映し出されるケイト・ウィンスレットの表情を見たら、そのままずっとスクリーンを見続けることができませんでした。
 泣けて、泣けて・・・(監督は『ジュノ』『マイレージ・マイライフ』の ジェイソン・ライトマン )。

 『とらわれて夏』 も 『アナと雪の女王』 ぐらい当たってほしい。このドラマと芝居には、それだけの魅力はあると思います。

*1「ストックホルム症候群」 監禁や誘拐事件等で、その犯人と一定時間、同じ場所で過ごすと、相手に対して同情もしくは愛情めいた相互感情が芽生えてくること。

   ■ 5月1日より東京・TOHOシネマズ シャンテ、
             札幌シネマフロンティアほかにて全国ロードショー  
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高村英次

Author:高村英次
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