新作プレビュー 『トランセンデンス』<後篇>
新作プレビュー◆〝暴走するコンピューター映画〟の進化形
▲ スペクタクルなアクション・シーン
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コンピューターやロボットが人間の意志や感情を持ち、それが高度化しすぎて人間を追い越し、逆に人間に向かって反抗・支配するようになっていく、という映画は今までにもいくつかあって、有名なところではスタンリー・キューブリック監督の 『2001年宇宙の旅』 (1968年・米)のコンピューター〝HAL9000〟とかアイザック・アシモフ原作の 『アイ,ロボット』 (2004年・米)とか。他にもいろいろあるでしょうね。
ロボットが宇宙ステーションの女性(コレが、あの ファラー・フォーセット )に横恋慕してカーク・ダグラスと彼女を巡って争う珍作 『スペース・サターン』 (1980年・米)なんてのもあった。この『スペース・サタン』、栄えある ゴールデン・ラズベリー賞 の第1回受賞作品! しかも作品賞・主演男優&女優賞の3賞独占!! アハハ・・・ だから出来は分かるでしょ(※)。
だから『トランセンデンス』もその系統なんだろう、と思って見ていたら、これがなかなかヒネッてある。どうヒネッてあるかは言いませんが、嬉しい誤算です。
ただ私は、見る前に、この映画の監督さんが『メメント』や『ダークナイト』シリーズのクリストファー・ノーラン作品のキャメラマン( ウォーリー・フィスター )だと知って、危惧しました。だって、ノーラン作品のあの情報過多な、目まぐるしい展開の、ちょっと追いつけないような劇進行(運び)をそのままヤラレたんじゃ、たまったもんじゃない。だって、監督してる本人(ノーラン監督)しか解らないような、メッチャばたついた忙しいドラマなんか、見ちゃいられないでしょう。それに妙に哲学的(コジツケ?)なところもあって、分かりづらいし・・・。
だから、そのノーラン監督チームのキャメラマンだから、きっと同じようにバタバタやってんだろー、と思ったら、これがスッキリと分かりやすくて、描写も丁寧。ビジュアルもキレイで、とてもいいですな。フィスター監督、大人デス。
特にオープニング--デップ夫婦の友人で生物学者のポール・ベタニーが、廃屋と化したデップ邸を訪れて、
「僕は以前ここに住んでいた彼等を知っていた。二人は互いにとても愛し合っていた夫婦だったが、今ココには誰も住んでいない・・・」
てな内容の独白(ナラタージュ)から始まる導入部は、映画的というよりも文学的であって、クールな演出意図が伝わってくる。その後は、テロ・アクションあり、ドンパチあり、とハリウッド映画らしくなってきてゴチャゴチャしちゃうのだが、そういった娯楽シーンもよく撮っている。
▲ タガー博士とともに電脳ウィルの暴走を危惧する、神経生物学者のマックス(P・ベタニー、左)
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ア、最後にもうひとつ。講演を終えたジョニー・デップを襲撃するテロ犯を演っているのが、あの ルーカス・ハース なんですよね。ジョージ・ルーカス(『スター・ウォーズ』の監督)じゃないよ、ルーカス・ハース! ハリソン・フォードの秀作 『刑事ジョン・ブック/目撃者』 (1985年・米、ピーター・ウィアー監督)の時、ハリソンと絡む子役で出演して、その当時、アイドル的な人気を博した。このハース君、その後、大人になってからも映画に出続けているが、さすがに主演や目立つ助演者ってわけじゃなく、よ~く見てると隅っこの方に「ア、出てる!」って感じの端役での出演がもっぱら。それでも結構出てます。
▲ 大人になった現在のルーカス・ハース
出典:映画の心理プロファイル
例えば去年紹介した『スティーブ・ジョブズ』(2013年版)やスピルバーグの『リンカーン』(2013)では、南北戦争に狩り出される従軍兵の〝その他大勢〟で出ていて、土砂降りの雨の中でつっ立たされていた。でも、ちょっとカメラが寄った時には「あ、ルーカス・ハースだ」って分かった。
『トランセンデンス』ではもっと目立つ役で出てます。80年代の映画ファンのみなさま、ご注目下さい。
▲ 『トランセンテンス』 予告篇 出典:YouTube
■ 6月28日より東京・有楽町丸の内ピカデリー、札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかにて全国ロードショー ポニーキャニオン&松竹配給 ■
※「ゴールデン・ラズベリー賞」 通称〝ラジー賞〟。その年に公開された、一番くだらない、もしくは出来がサイテーな映画(の作品、俳優、スタッフ)に贈られる映画賞。例年、アカデミー賞の授賞式直前に発表されているが、受賞者はほとんどの場合、ラジー賞の授賞式には出席しないようである(そりゃ、そうだ!)。
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