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新作プレビュー 『フライト・ゲーム』<前篇>

新作プレビュー
09 /05 2014

◆ ニーソン&コレット=セラ監督の〝アンノウン〟コンビ、再び!

フライト・ゲーム150
▲ 『フライト・ゲーム』 ポスター (C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.

 まー、オモシロかった。
 期待に反して、というか、あまり期待してなかったのが良かったのかもしれない。テレビCFを見ても分かるように、地上1万2千メートル上空の旅客機内でタイヘンなことが起こるんだが、その趣向が巧いし、描く手際が速くて、緊張しっぱなし。見ている間中、アタマの芯がジンジンいうような、そんな秀作です。
 
 おそらくこの作品でやった、携帯やメールなど最新のITアイテムを使ってたたみかけるように描いていく手法、って今後のサスペンスの流行(はやり)になっていくでしょう。
 でも、この映画くらい、それを巧く使いこなした作品が生まれるか、どうかは判らない・・・そう思うほどに『フライト・ゲーム』の語り口は、お世辞抜きに、巧かった。

 そして監督の ジャウマ・コレット=セラ と主演の リーアム・ニーソン の息がピターッと合っている。コレがあまりにも〝合っている〟ので、二人が最初に組んだ 『アンノウン』 (2011) ってのをDVDで見てみたら、コレがなかなか凄い! 

 なんでこんなすんごいサスペンスの傑作を誰も教えてくれなかったんだァーーーッ! 

 と見ながら叫びましたもの・・・といって、勝手に映画の情報を仕入れていなかった(疎かった)私が悪いに決まってるんですが、この映画って 東日本大震災 があった後の公開で、最初の邦題『消息不明〔原題:UNKNOWN〕』が震災で行方不明になった方々を連想させる、という理由で、タイトルが原題の〝アンノウン〟に変えられたりした。ま、そういう事はたまにあるのでいいんだけど、震災後の何事も自粛な時期だけにヒッソリ公開され(ヒッソリ中止になっ)たせいかもしれない。
 同じワーナー作品の(これまた大傑作だった) 『ヒア アフター』 (2011、クリント・イーストウッッド監督)もそうだったから・・・。

 なにが〝凄い〟って、『アンノウン』はアタマ(オープニング)からお終い(エンディング)までいいんですな。
 しかも--こういうとちょっと映画通の人は勘違いしちゃうかもしれないけれど-- アルフレッド・ヒッチコック監督の映画 のイメージや〝記憶〟をこんなに巧く劇中に再現したサスペンス映画っていうのは、ちょっと稀有なんじゃないですかね。
 ヒッチコックのイメージとかなんとかっていうと、大体の人は 『サイコ』 のシャワールームの殺人シーン をそれらしく真似て撮ってる、とか、断崖絶壁の上に主人公と犯人がいて格闘しながら落っこちそうになってハラハラさせる、とか、そういう映像的なイメージ(の模倣。ブライアン・デ・パルマ監督がよくやる)を思い浮かべると思うんですが、ジャウマ・コレット=セラ監督(この際、この長い名前を覚えましょう!)のやり方はそうじゃない。

ジャウマ・コレット=セラ150 
▲ ジャウマ・コレット=セラ監督
出典:NEVERまとめ

 あくまでも『アンノウン』のプロットを正確に忠実に再現(描写)していって、その過程でヒッチコック映画に出て来るようなシーンやシークエンスにぶつかったら、ちょっとだけソレを匂わせるサインを見せる。そう、ほんのちょっとです。ほんのちょっとヒッチコックの匂いを醸し出す・・・だから、もしかしたらそれはジャズめの穿ちすぎた見方でもって、実際にはヒッチコックの真似でもオマージュでもないのかもしれない。
 しかし、それでも--

● 殺し屋に追われ屋根に逃げたリーアム・ニーソンが、落っこちそうになりながら必死でつかまる 『めまい』 で同様な目に遭うジェームズ・スチュアート
● リーアムが写真展の会場で女房に詰問する=『めまい』の美術館で運命の女(キム・ノヴァク)を見かけるジェームズ・スチュアート
● フランク・ランジェラが○○時の画面(えづら)= 『海外特派員』 のあるシーンや 『サイコ』 でマーチン・バルサムが△△される時の階段
※○○や△△は、未見の人のために伏せた部分。

 なんてあたりが出て来るのでハッとさせられる。
 その出し方に無理がなく、しかもコレ見よがしにやってないから、真似の仕方が大人です。だからヒッチコック・ファンでもそうと判らないかもしれない。ま、そんな事判らなくても、十分面白いんで、いいんですけどね。

 まー、でも『アンノウン』はリーアム・ニーソンが空港にアタッシュケースを置き忘れて、突然、事件に巻き込まれていく、というノッケ(冒頭)からしてヒッチコックですよね。コレって 、『三十九階段』 『北北西に針路を取れ』 『暗殺者の家』 『知りすぎていた男』 といったヒッチコック十八番の〝巻き込まれ型〟ですから。
 おまけにリーアムの妻が細身のブロンド美人(『北北西に針路を取れ』の エヴァ・マリー・セイント 似)だから、も ろヒッチコック・ヒロイン (金髪で長身でスレンダーで脚のキレイな、知的でホットな美女)ってわけで、ここまでやってて「ヒッチコックに寄せてない」なんて事はない。

 まだ未見の方々のために、ストーリーもなんも一切書きませんけど、絶対見てほしいですね。私はもうDVDを買う気でいます。


▲ 『アンノウン』(2010・米 ジャウム・コレット=セラ監督) 予告篇  出典:YouTube

 ・・・なんだか『アンノウン』に入れこみすぎて、本題を忘れかけました。次回こそ、そのニーソン&コレット=セラの新作 『フライト・ゲーム 』の紹介です。  〔続く〕

■ 9月6日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかにて全国ロードショー 配給:ギャガ ■
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高村 英次

札幌在住の映画ライター。2013年よりスタートしたこのブログの他に「はてなブログ」でフォトブログ「日暮らしフォトブック」を公開中。

< プロフィール >
趣味:デジカメ撮影、動画制作、SNS
好きな作家:レイ・ブラッドベリ
好きな歌手:エラ・フィッツジェラルド
好きな場所:豊平川、北海道神宮、北大、八紘学園農場
好きな番組:「映像の世紀バタフライエフェクト」「アナザーストーリーズ」「ファミリーヒストリー」(NHK)/「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」(NHK Eテレ)/「イタズラジャーニー」(CX)/「錦鯉が行く!のりのり散歩」(HTB)/「サンドのぼんやり~ぬTV」(tbc)