新作プレビュー  『 ジャッジ 裁かれる判事』  < 中編 >

◆ 反りの合わない老父とどう向き合うか・・・法と正義、そして愛憎!

サブ ハンクとジョセフ
▲ 久々に会ったってのに、なんて顔してんだい、二人とも。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 ストーリーは、成功した弁護士のハンク ( ロバート・ダウニーJr. )が機せずして、故郷に帰らぜるを得なくなったことに始まる。それは母親の死が原因であった。

〔 妻に浮気され離婚を考えるハンクは、母死去の知らせを聞き、とるモノもとりあえず、故郷のインディアナ州カーリンヴィルへ。出がけに、幼い娘のローレンに行く先を告げる時、

            〝インディアナの誰も行きたがらない町だ〟

と言い捨てるハンク。どうも自分の故郷をよく思っていないよう。
 カーリンヴィルに到着し、兄グレン(ビンセント・ドノフリオ)や弟デール(ジェレミー・ストロング)と再会し、葬儀の集いで父とも会うが、互いに素っ気ない。
 老父のジョセフ・パーマー(ロバート・デュバル)は町の裁判所の判事で、42年もの間、カーリンヴィルの治安に寄与してきた。ハンクは今やロスで売れっ子の敏腕弁護士で、父と息子は互いに法を司るものとして話す事が山ほどあるはずなのに、二人は妙によそよそしい。きっと、過去に何かあったのだ・・・それも楽しくないことが。
 その葬儀の夜、ハンクは折り合いが悪い父と口論、激昂した父は自分で運転して外出。ところが翌朝、ハンクは父の車に何かが衝突した形跡を見つけ、ジョセフを詰問するが、やがて父は地元警察に逮捕される。
 ジョセフはその夜、車である男と接触し、その男を死亡させていたのだ。しかもその男はジョセフとは因縁のある元受刑者であった ・・・ 〕

 

 父で判事のジョセフが、この元受刑者を故意に轢いたのか、過失だったのかが裁判で争われ、いろいろあって、結局、息子のハンクが父の弁護人となる。しかし頑迷なジョセフはハンクに協力しないばかりか、憎まれ口を叩いて彼を困らせる--まずこの葛藤が見もの。
 これはどこの家庭にもある親と子の、ちょっと傍目にはバカバカしくも見える痴話喧嘩で、観ていると誰もが「そうそう、ウチもそう」って感情移入しちゃう。
 しかもジョセフは足許がふらついていて、要介護の状態。だが口だけは達者で、まったく手に負えない・・・。
 だからココには、こういう老人をどう扱えばいいのか、とどう付き合ったらいいのか、といった今日的な問題も提示されていて、深く考えさせられもする。

 そもそも父と息子ってのは仲が悪いもの。だからお互いに「しょうがねえなァ」って感じで、つかず離れず付き合うのが一番いい気がするけれど、ロバート・デュバル扮するジョセフは、昔気質の典型的なガンコ親父で、しかも厳格なる法の番人〝ハーパー判事〟だから、家の中ではハンクのみならず長男のグレンや知的障害の末弟デールにもキツく当たる。
 ハンクはそうした父のガンコさ、石頭に対してムカついていて、そのせいで反抗的なんだろうと思っていたが、徐々に明らかになっていく パーマー家の過去 (傷跡) を知るにつけ、その苛立ちは父の性格よりももっと深刻な家族の歴史に端を発していることが判ってくる。
 同時に、その家族史に起因する、ハンクの悔恨や兄グレンの苦痛、そして父ジョセフの心境というものが痛いくらいに判ってきて、胸を突いてくる。

 この映画のシナリオが巧緻なのは、これらの状況を、殊更、説明的に映示するのではなく、事件の進行に合わせて、台詞でもって少しずつ見せていくところで、例えば何度も回想場面のワンシーンを意味ありげに小出しに見せて興味をひく、というありがちな語り口を使っていないところが素晴らしい

ハーパー3兄弟
▲ 兄グレン(ビンセント・ドノフリオ、右端)と弟デール(ジェレミー・ストロング、
  左端)とハンクの関係もいろいろあって・・・。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 やがてハンクは、町一番のダイナーで高校時代の恋人サム(ベラ・ファーミガ)と再会するが、交際途中で町を勝手に出て行った過去があるだけに、ハンクは少々居心地が悪い。かつての恋人やその恋人の娘とハンクが交流するシークエンスも、一見、〝里帰りの光景〟によくあるヤツに思えるが、これがハンクの(若き日の)素行を描く上で重要なポイントで、彼の幼い娘を巻き込んでそれを説明しきっている。ココには〝あの娘は誰の子? オレの子か?〟みたいなユーモアがあって、女に手の早いハンクが我が身の不徳を思い知ってドキッとする。そんなところも面白い。

 つまり、一見、重厚な裁判劇に見えるこの映画は、里帰りした不肖の息子が、
〝過去に何をやらかしてきて、そして今何を成すべきか〟
という悔恨と贖罪を描いた再生劇として鮮やかに成立している。

           そこが一番巧まざるところだと思うんですよね。

 ハンクのように、東京に出て故郷に戻ってきたジャズ野郎にしてみれば、一切ならず共感するポイントがいっぱいあって・・・もう、とにかく上出来ですな、このホン(脚本)は。 〔続く〕


サム
▲ ハンクの元カノ・サム(V・ファーミガ)。女好きのハンクは知らずに彼女の娘に手を出して・・・。
  まったくハンクはとんだトンチキ野郎だ、しかもその娘は・・・。
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

         ※ 『 ジャッジ 裁かれる判事 』 HP : www.thejudge.jp

    ■  1月17日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにて
                  ロードショー     配給:ワーナー・ブラザース映画  ■



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