新作プレビュー  『 ジャッジ 裁かれる判事』  < 後編 >

◆ フランク・キャプラ映画の芳香とR・ダウニーJr.〝 稔りの時 〟

判事ハーパー
▲ 『ゴッドファーザー』(1972)のトム・ヘイゲンや『地獄の黙示録』(1970)のキルゴア中佐、
『勇気ある追跡』(1969)ではならず者ネッド・ペッパー、『鷲は舞い降りた』(1976)ではチャー
チル暗殺作戦の失敗の責任を取って自決するナチ将校、TVシリーズ『将軍アイク』ではアイ
ゼンハワー将軍などなど、その長いキャリアの中で印象深い役柄をいくつも演じてきたロバ
ート・デュバル。『パパ』(1980、ルイス・ジョン・カルリーニ監督)という小品ではガンコ親父
(軍人役)を演じていたが、『ジャッジ』のジョセフ役はこの〝パパ〟が年老いた姿とも言えます。
 (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS. ENTERTAINMENT
 INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 〝自分の居た場所に還ろう〟--ってビートルズの 「ゲットバック」 じゃないけれど、アメリカ映画には、いや、古き良きアメリカ映画の伝統には、この原点(ふるさと)回帰ってのが脈々と流れていて、形(映画の形態やジャンル)は様々に変わっても、その根底にはそうした、フォスターの「峠の我が家」みたいな感情が生き続けている。

 『 ジャッジ 』 みたいな作品に出会うとそんな事を思い起こしてしまう。言うなれば、フランク・キャプラ 監督の映画のような・・・。クリスマスの定番映画 『素晴らしき哉、人生!』 とか 『スミス、都へ行く』 、『群衆』 『或る夜の出来事』 など〝笑えて泣ける〟って映画の元祖みたいな監督だけど、数年前から邦画で流行ってる、安っぽい〝泣ける映画〟とどう違うかというと、キャプラ映画には一貫して ヒューマニズム (の精神、伝統)がある。笑いながら、泣きながら、ヒューマニズムの力強い一撃がズンと腹に残る。痺れるような感動と共に、そうした伝統に包まれて、幸せ~な気分になる。

 『 ジャッジ 』 には、そんなキャプラ監督が得意とする〝笑って泣かせる〟、いわゆるキャプラ・タッチってものはない。でも見終わってつくづく考えると、根底に流れているのは「アメリカ映画の良質な伝統、キャプラ映画の・・・」と思い至っちゃうんですよネ。
 それは、終り際に出て来るある場面で、明確に提示されている気がします(ナイショ)。

 被告となった判事の父を助けるために息子の弁護士が法廷で、原告側のキレ者弁護士ディッカムと対決する。この弁護士ディッカムを演じているのが ビリー・ボブ・ソーントン で、まぁ、いわゆるシャープで抜け目のない、どちらかというと嫌味な感じの弁護士を演じているわけですが、ここにもちょっとした趣向がある。
 その趣向はもちろん、書きませんが、要するに被告のジョセフが長年地域に貢献してきた老判事であるという、法曹界の先輩だというあたりがポイント。
 裁判でジョセフを負かす事(第一級殺人罪にもっていく)、それはディッカムの職務だけれど、それを行うことはこの偉大な先輩の業績にケチをつけたり、威信や能力を愚弄することになる。

 いや、それは父を弁護するハンクとても同じ事で、ハンクは実の子供である分、ディッカムよりもその心理的プレッシャーは重い。ハンクは裁判の流れの中で、長い間、町の正義を司ってきた判事たる父の尊厳に触れ、それをツバするような展開にもなっていく・・・。
 法廷で繰り広げられる、父と子、ジョセフとハンクの白熱のディスカッションが、なんといってもこの映画のハイライト。


             息を飲みましたネ、素晴らしかった。


 ハンクを演じたロバート・ダウニーJr.。 親父は同じ名の映画監督(ロバート・ダウニー)で、そのせいで芸能界には長くいて、若い頃から次世代のスターだなんてチヤホヤされたせいか、薬物中毒にハマッてリハビリ施設に入れられ、何度も入退院を繰り返したので、トム・クルーズやケビン・コスナーのような地位に着くことができなかった。
 それが『アイアンマン』に始まるCG&3D駆使によるアニメ劇画の映画化アクションでようやくスタークラスになり、自身の妻スーザンと映画製作プロダクション 「チーム・ダウニー」 を立ち上げて、放った第1作がコレ。


       天は彼を見放さなかったね、素晴らしい企画を彼に与えた。


 父役のロバート・デュバルも名演で、特にバスルームで倒れ、失禁どころかクソを洩らしながらよろけるシーンには感動した。数年前、何があったか知らないがデュバルは、
「もうスティーヴンのようなバカ者と仕事をするのはゴメンだ!」
とか言ってスピルバーグ監督の映画に出るのを断ったといった具合で、まだまだ意気軒昂。

 デュバル、ダウニーの〝Wロバート〟の演技合戦は、まるで本当の父親と息子のような、激しく熱い感情のぶつかり合いでもって、誰もが圧倒される。


          親子の絆を改めて考えさせられますゾ、新年から・・・。


ハンク
▲ ディッカムに父の証言のウソを指摘されて苦悩するハンク(R・ダウニーJr.)
  (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNERBROS.
   ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

          ※ 『 ジャッジ 裁かれる判事 』 HP : www.thejudge.jp


 ■  1月17日より東京・新宿ピカデリー、札幌シネマフロンティアほかにてロードショー
                         配給:ワーナー・ブラザース映画   ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
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  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
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高村英次

Author:高村英次
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