新作プレビュー  『 アメリカン ・ スナイパー 』  < その 1 >

◆ 息をひそめ、心を殺して見つめる戦場

  狙撃兵
  ▲ 米軍史上160人の敵兵を射殺して、味方からは 「伝説の狙撃手」 と呼ばれ、
    イラクの反政府勢力からは 「ラマディの悪魔」 と怖れられた クリス・カイル
     ( ブラッドリー・クーパー、右 )。
    (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT
     INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


 クリント・イーストウッド っていつまで映画を撮り続けるんですかね。
 まったくもってタフですよね。
 昨年、『ジャージー・ボーイズ』 を発表して、アー、お元気でなによりなにより、って思ってたら、早くも新作が! しかも今アカデミー賞6部門ノミニーと高評価で、イーストウッド監督作史上最高の興行成績だっつうから、「一体どないやねん!」って思ってたけれど・・・ハイ、〝アメスパ〟、観させていただきました。

 観て、いの一番の感想は---


        コレ、84歳のジジイが撮る映画じゃないだろう!


 ってこと。

 戦争映画なんて年齢でいえば、30代からせいぜい50代あたりまでに撮るシロモノだ。国同士による天下御免(?)の大量殺人を描くわけだから尋常じゃないスタミナがいる。戦車、戦闘機、戦艦はもちろん、かつてはシカゴ・ギャングの〝アル・カポネ〟さん達が使ってたマシンガンをもっと強力&高性能にしたモノ凄い銃器類、手榴弾、地雷、プラスチック爆弾・・・兵隊さんも大量に出てきて、モブシーン(大人数のエキストラを擁する群衆シーン)の段取りをつけたり、その準備がタ~イヘン。バババババッと銃で撃ったり、迫撃砲やロケット・ランチャーをぶっ放したり、それが当たっての爆破、地雷の爆発、戦闘機・戦車のクラッシュなんかを立て続けにセッティングしなきゃならない。

 銃で撃たれりゃ、血が出て、それが飛び散ったり、指が飛ばされたり、手足がもげたり、顔が損傷したり・・・そうしたシーンには特殊効果はいるし、実際に火薬や弾着を仕込んで発破かけなきゃならない。

 つまりノーマルな内容の映画よりずっと神経もお金も労力も使うのが戦争映画で、俗に言われる〝大量物量作戦〟の最たるモノだから、本格的かつ大規模な戦争モノはハリウッドでしか作れない(ハリウッドに対抗できる、っつたら、かつて旧ソ連時代のモス・フィルムぐらいじゃ)。

 映画は戦場だ--なんて言われるけど、戦争モノの現場はまじにデンジャラスで、ホントに戦場。戦争映画では映画の <=虚構の、嘘んこの> ワンシーンだとしても、その撮影現場で実際に戦争をしなきゃならない。

 それを90歳も間近の、映画界でも最長老に近いところにいる人が撮ってんだからね、おそれいっちゃいます。
 イーストウッドは確かに 『父親たちの星条旗』 『硫黄島からの手紙』 <共に2006> と高齢になってからも〝戦争〟を撮っちゃいるけど(この時、76歳!)、もう、いい加減いいんじゃないか、と思っていたら、またまたこんなヘビー極まりないヤツを出してくる。

 どういう肉体してんのかね? 頭もボケてないんだなあ・・・なんて思ってたら、日刊スポーツのインタビュー〔2015年2月17日紙面〕で、映画作りの原動力は「スシだ」なんて言ってる。これがホントなら、日頃、回転寿司でスシ食ってる日本のジジイはみんなモーレツな精力家ってことになる(ならないか)。イーストウッドが「スシ」って言ったのは、それくらい食べ物に気をつけて摂生し、健康的に過ごしてる、って事のようだけど、とにかく何度も言うがタフですね。

 そんなタフな80代監督が描いて見せた〝戦場〟は、今まさに世界中の人が注視し、恐怖している中近東の、イスラム勢力の情け容赦のない、果てしのない泥沼。砂塵が舞い上がり、それが去った後には累々とした屍が散乱する。

 そこで死んでいるのは、欧米の兵士ばかりではない、イスラム過激派の兵だけではない、砂漠の無辜な民ばかりでもない。おそらくをコレを見た人の心がそこで死ぬ。

 遠くイラク戦争からエジプト、リビア、シリアの混乱と分裂・・・一体、〝アラブの春〟ってなんだったんだろう、と思いながら味わうのは、壮絶でダークな悪夢の一大ドキュメント。
 それをまた、まったく気張らず、いつものように、素っ気ないタッチで淡々と撮ってるんですよね、クリント・イーストウッド監督は。

 凄絶で、残酷で、しかも終わりのない無常な戦争の断面を、激することなく淡々と見せていく。
 感動するというよりも、なんだか、ある意味、怖くなりました。

 ・・・ 懼れを抱きました。                          〔続く〕


             ポスタ
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

       『 アメリカン・スナイパー 』 公式HP : www.americansniper.jp

■ 2月21日より東京・TOHOシネマズ日本橋、丸の内ピカデリー、
   札幌シネマフロンティア、ユナイテッドシネマ札幌、ディノスシネマズ札幌劇場
         ほかにて全国ロードショー       配給:ワーナー・ブラザース映画 ■



< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >





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映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
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