新作プレビュー  『 ラン・オールナイト 』   < その4 >

◆ 余談 ・・・ 『邪魔者は殺せ』 を褒めた フランソワ・トリュフォー

 というわけで、『ラン・オールナイト』 については以上の通りですが、最後に余談も余談な話をひとつ。

 < その2 > で、『ラン・オールナイト』は『邪魔者は殺せ』みたいな話かと思った、と書きましたが、その『邪魔者は殺せ』 についてジャズ野郎が思い出すのはヌーヴェル・ヴァーグの監督のひとりで、『大人は判ってくれない』 (1959)や 『突然炎のごとく』(1961) 、 『恋のエチュード』(1971)、 『隣の女』(1981) などを手がけた フランソワ・トリュフォー の賞賛。

 この時、トリュフォーは脳腫瘍の手術を終えて退院し、自宅に戻ったばかりで(1983年9月)、日本からお見舞いに訪れた映画評論家の 山田宏一 さんに向かって、


 『邪魔者は殺せ』という映画を見たか、とトリュフォーが言った。声に力がなかった。小さな、かすれたような声だった。しかし、それも大手術のあとなのだから当然なのだと、私は自分の体験から、思い込んでいた。
「 キャロル・リードの傑作の一本ですね 」と私が答えると、
「 そう 」とトリュフォーは言った。
「 むかし見て、大好きな映画だった。もう三十年以上も前になる。ジェームズ・メイスンが出ていて、じつにすばらしかった。これとヒッチコックの『北北西に進路を取れ』の悪役をやったのがジェームズ・メイスンの最高だと思う 」。



 女性と子供を愛した〝愛の映画作家〟フランソワ・トリュフォーは、この時の脳腫瘍がもとで翌年(1984)の年末に亡くなる。トリュフォーはさらに--


「 『邪魔者は殺せ』の思い出が急によみがえってきて、退院後、ずっと、あの映画のことばかり考えていた。重傷を負ったジェームズ・メイスンがその夜出航する船にのるために非常線を抜けて波止場までたどりつけるかどうか……長い、長い時間がサスペンスとして描かれていたでしょう。
 あの映画の時間が、ジェームズ・メイスンにわたし自身がなりきって感じられるような気がしました。
 もう一度見たいと思っていたら、偶然、つい先週、テレビジョンで放映された。やはり、すばらしい映画でした 」
       ( 以上『 〔増補〕トリュフォー,ある映画的人生 』 山田宏一、平凡社ライブラリー )



 脳にメスを入れた大手術のせいで、体力が減退し虚脱して思うように動けなくなったトリュフォーは、傷を負いながら夜の街を逃げまどう主人公の ジェームズ・メイスン に我が身を投影したものか。

 ジェームズ・メイスン は、『砂漠の鬼将軍』(1951) 『砂漠の鼠』(1953)の2本の戦争映画でドイツ軍の猛将ロンメル将軍を演じた、〝ミスター・ロンメル〟と呼んでもいい、押しの強い性格俳優だったけど、もともとはウエストヨークシャー出身のジェントルマン(英国紳士)。そんな彼の最高、つまり代表作が 『邪魔者は殺せ』 と 『北北西に進路を取れ』 (1959)だとシネフィル(映画狂)のトリュフォーが言うのなら、それに異存はないけれど、ではリーアム・ニーソンの最高は『ラン・オールナイト』ってことになるんかなぁ、などとジャズ野郎は考えた。

 でも、そいつはどうか ・・・ ニーソンは今月もう一本、同じく主演した 『誘拐の掟』 (未見)って作品が公開されるほど多作で、今後も出演作が増えそうだから、「コレが最高だ」と申し上げられないような気がする・・・(でもかなりの確率で、最高だ、と思うけど)

 とにかく『ラン・オールナイト』を見ている間、ジャズ野郎の脳裏を横切ったのは、『邪魔者は殺せ』とこの映画を褒めたというトリュフォーのこと。

 今、目の前で観ている映画(ラン・オールナイト)を素直に楽しめない、映画狂の悩ましい悪癖 ・・・ 一種のビョーキです。


 殺し屋を殺す殺し屋
 ▲ このビョー的に人相の良くないオッサンは何者? 答えは映画館で!
   (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

  『 ラン・オールナイト 』 公式HP : http://wwws.warnerbros.co.jp/runallnight/


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