巨匠のムチャブリ-野村芳亭、知られざる巨人 その2

◆序文 映画黎明・松竹蒲田<後篇>

 当然ですが、この時代(明治~大正~昭和6年)の映画はモノクロサイレントです。

 サイレントとはいっても、劇場には映画を解説する弁士(カツベン)がいて、これが、画面に女が映る時は女の声で、子供の時は子供の声で話しをする<声色>で台詞を喋り、解説も付けていた。加えてそのカツベンがバイオリンを弾いて劇伴を付けたり、中にはちょっと楽隊が演奏した小屋(大劇場ですが)もあります。

 当時の日本映画の題材はそのほとんどが--

歌舞伎の狂言(演目)や歌舞伎や講談から抜き出してきた話=時代劇、と、
歌舞伎をより分かりやすくして庶民的にしようとする新派、もしくは新生新派の演目=現代劇

 --が主流というか、こればっかしであった。探偵モノとか活劇モノもあるにはあったが、主流はチャンバラと悲劇&悲恋モノで、もちろんSFとかポルノなんてのはないのです(当たり前か)。
時代劇には、尾上松之助という大スターが出て、これを後年“日本映画の父”と呼ばれるマキノ省三が巧いこと使って、京都の日活、もしくはマキノ映画は大繁盛!
 一方、現代劇の方は新派もどきの、とにかく悲しく辛い庶民の悲劇・哀話、男女の悲恋物、継子イジメみたいな暗~い話ばかりで、まったくやりきれない題材ばかりだったが、こちらも当時はこうしたジメジメした悲話、情話が大衆に受け、小屋には客が殺到した。

 時代劇、現代劇どちらの場合も、女優は女形、つまり男の役者が女役を演じていて、女性が女役を当たり前に演じてスクリーンに出始めるのは、松竹や映画芸術協会といった当時の新興勢力の作品から。日活は女性を演じる女形がすでにスターになっていて、撮影所内でもそこそこの発言権(権力)を持っていて、後に監督になる衣笠貞之助などはそうした人気女形の一人だった。この女役に女形を使っていた、という事ひとつをとってみても、映画がその初期に歌舞伎の趣向をそのまま導入していた事が判るわけです。

 というような映画史の本に出て来る映画伝来&草創のことを、ジャス野郎は長々と語りたいわけではないのです。語りたくはないのですが、これから紹介する松竹草創期の大監督・野村芳亭については、これらの事を押さえておかないと野村監督の生きた当時の状況が掴めないので書いた次第です。

ともかく、この時の映画をめぐる状況は、荒野にペンペン草が生えたばかりの状態。やけに客が殺到して、何を作っても儲かるような中で、様々な人達が映画独自の話法や表現を模索し、開発し、その中に現代性や芸術性を彫り込もうとしていく。カツドウを“ただの見世物”ではなく、文学や音楽、美術と同じ、れっきとした芸術にしたい、または芸術である事を証明したい、との志をもった映画人--小山内薫帰山教正村田実などなど--が立ち上がる。
 しかし彼らの映画はハイブロウすぎて一般客には受けず、当然、当たらない。
 
 そこで、登場するのが、芝居畑から松竹キネマに引っぱられてきた無類の芝居通、野村芳亭であったのです。  〔続く〕


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