新作プレビュー  『 ヴィンセントが教えてくれたこと 』  < その1 >

◆ 根暗な〝高田純次〟ビル・マレー主演のちょっとイイ話

 〝新作プレビュー〟はその名の通り、公開前の新作を紹介するコーナーですが、先月、突然、PCが故障してそれに絡む厄介な事態に翻弄されて、この映画の原稿を書こう書こうと思いつつ、気づいたらすでに公開されていてもう2週間余も経っていた(9月4日封切)。
 また『グローリー 明日への行進』の時みたいに書かずにすまそうか、とも思いましたが、紹介せずにすますのは惜しい、捨てがたいところがこの映画にはある。なので、主人公のヴィンセントのごとく、脱力感100%、いや1000%でつらつらと綴っていきましょう。どうか、おつきあいのほどを。

                 *********

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 ▲ 〝この世にマシな人間は俺ひとり〟 てな自惚れ顔をするヴィンセント(B・マーレイ)
            (C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.


 ジョン・ベルーシダン・エイクロイドエディ・マーフィーらと同じアメリカNBCのお笑いバラエティ「サタデー・ナイト・ライブ」で売り出した〝SNL芸人〟のビル・マーレイには当初から、客を容易に懐に入らせない、ちょっと嫌味にも思える狷介な感じが漂っていた。
 アイヴァン・ライトマン監督のヒット作(で今、リメイクが進行中の) 『ゴーストバスターズ』 (1984)みたいなみんなで大騒ぎする〝オチャラケていい映画〟でも、一人だけクールというか、シラケた醒めた目線で周囲を見みているような、そんなところがあった。
 それがこの人の個性というか、真骨頂なのは分かるけど、アメリカのコメディ・シーンの中ではどうなのかな? 大衆に心やすく受け入れられるのかな? なんて思っていたら、案の定、その後の彼はメイン・ストリームでガンガンいくって感じじゃなくて(メインストリームってのは、ひと頃のジム・キャリーとかアダム・サンドラーみたいな主演級ってこと)、
ロバート・デ・ニーロの 『恋に落ちたら…』 (1993、ジョン・マクノートン監督)、
ジョニデの 『エド・ウッド』 (1994、ティム・バートン監督)、
ケビン・ベーコン&マット・ディロンの 『ワイルドシングス』 (1998、J・マクノートン監督)
あたりで助演に徹し、そこで彼らしいクセ者ぶり(持ち味)を見せていた。

 真面目にまっとうに生きる、なんて事は生まれた時から心になく、行き当たりばったりな、そしてどこか捨て鉢な生き様を己のものとし、その割には妙に哀感があって、(退廃的な)色気がある。

 その色気があるあたり、脱退した荒井注の代わりに加入してファンの子供達に嫌われ囂々たる非難を浴びたにも関わらず、めげずにバカをやり続けた〝6人目のドリフ〟=志村けんの若い頃を思わせる。フジテレビの「ドリフ大爆笑」の初期の頃、当時、人気絶頂の沢田研二と志村さんはよくコントで共演してたけど、今観るとジュリーと張り合えるほどに男の色気がある。嘘だと思ったら観てごらん(とはいえ、志村さんのその頃の色気は若者特有のギラギラした感じが横溢しててアンチャンっぽいというか、チンピラっぽいというか。子供ファンが当時の志村けんを拒否したのは、愛された荒井注のグズな〝おやじキャラ〟とは違うってことだけではなく、そのギラギラした色気(性欲)を生理的に嫌ってたってことにあると思う)。
 でも、いい加減で投げやりで無責任、といった個性なら、志村けんよりもむしろ高田純次なのかもしれない。高田純次も色気あるからね。でも高田さんは陽性でノーテンキに明るい。マーレイはお世辞にも明るいとはいえないから、まあ、根暗な高田純次ってトコですか。

 でも、そんなとっつきにくい感じの男なのに、前述したアイヴァン・ライトマンやウェス・アンダーソン、ソフィア・コッポラって監督陣には大いに好かれたようで、彼らの作品に常時出演。特にアンダーソン監督とのコラボは重要で、『天才マックスの世界』 (1998) 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』 (2001)以降、近作の『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)まですべてに出演。あのカラフルに渇ききったオフビート調と呼んでもいいような、アンダーソン監督のヘンテコな作風(様式)に彼がマッチしたのは頷ける。ヘンテコな作品世界の中では、彼のシラケきった目線も時々やらかす無責任なオバカもさほど気にならないばかりか、むしろまともにさえ見えてくる。アンダーソン作品は登場人物がみな変人だから、乙にすましたマーレイのシラケ顔が良識的というか、作品の良心を代表しているふうにも・・・というのは褒めすぎだけど、まあ、ハマッてたよね。
 そしてそんな彼のステータスをもっと引き上げたのはソフィア・コッポラ(あの『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』のコッポラ監督の娘)の 『ロスト・イン・トランスレーション』 (2003)。実はジャズ野郎、この作品、未見でありまして、この原稿を書く前に観ておこうと思いましたが、頭に書いたような次第で果たせず・・・このシルバーウィーク中にでも観ますかね。

 で、そんなこんなで、この作品のヴィセントですよ。ハマッタといえば、こんなにハマッタ役柄もないんじゃないかな。主人公の性格設定も脚本もまさにビル・マーレイのパーソナリティに基づいて組み立てられているようだから、さもあらんとは思うけど、劇中でグダグダやってるマーレイにはいつも以上に、力が入っていない。

                 脱力しっぱなし!

                 でも、そこが良いのです。

        くだらなくて、堕落しきった、情けないクソジジイぶりが!       <続く>

          ポスター
           (C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.

        ※『ヴィンセントが教えてくれたこと』 公式HP: http://vincent.jp/

■ 東京・TOHOシネマズ日本橋、札幌・ディノスシネマズ札幌劇場ほか
               全国で公開中             配給:キノフィルムズ ■



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Author:高村英次
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