新作プレビュー  『 ヴィンセントが教えてくれたこと 』  < その4 >

◆ どんな人にも伝記作家は必要だ <後編>

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  ▲ 競馬場でオリバーに馬券の買い方を教えるヴィンセント。
           (C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.


 いやウチの親父のことだけじゃない。4人に1人が高齢者(65歳以上)ってこの国で、公園や路上に寝泊まりするホームレスとか生活保護で老後を暮らす簡易宿泊所のおじさん、おばさんとか、そういう人たちにも、やはり聞けば胸打たれる人生の出来事、軌跡ってものがある。なにか、そういうものを何かに残せないものか。死んでしまえば、その軌跡 -- 人生上の教訓や生き方のヒントになるかもしれない貴重な経験 -- も失われてしまう。だとしたら、そういう人たちの述懐をなんらかの形で残しておくべきではないか。

 〝伝記作家〟はホントは〝 座付作家 〟としたいのだけど、座付作家っていうと、その昔の歌舞伎の座頭役者、新派・新劇の劇団に付き従って、その座頭役者(や主演級の俳優)が映える狂言(演目)を書く専属の劇作家というのが本意。その役者の人となりや人生を書く、のではなく、その人が演じる物語を書くのだから、意味は違ってきちゃうので伝記作家が正しいのだけれど、常に側にいて役者の一挙一動を見守ってないと、役者にあう役柄やストーリーというものは生まれてこない。
 だから、〝どんな人にも座付作家は必要だ〟としたかったんだが・・・まあ、いいや。


 ・・・で、なんで〝伝記作家は必要だ〟なんて事を書いたかというと、 『 ヴィンセントが教えてくれたこと 』 の中に、まさにそれを実現したようなシーンが登場するのです。

               やー、まったく予想もしなかった。

 シラケたふて腐れ老人ビル・マーレイが自由気ままに〝呼吸する〟、ダル~~~イ日常を見せつけるだけ、と思っていたNY下町( ブルックリン )のやや猥雑な日常スケッチに、こんなステキなワンシーンが登場するなんて!


              嬉しかったねえ、いつになく・・・。


 しかも、先に言っちゃうけど、この映画のエンド・クレジットは腹ボテのマーレイがビーチチェアにどてッと寝腐って、ボブ・ディランを口ずさむってシーンで、これのダラダラした怠惰な感じはオープニングのそれとほぼ同じである。


 しかし、何かが違う。寝そべって昼間からビールを食らうビル・マーレイの、不良じじいヴィンセントの何かが変わったのではない。実際、彼は何も変わってはいない。


          彼を見つめる、我々観客の心が変わったのである。


 少しだけ彼を見つめる視線が優しくなったのだ。私たちの心の中に、こういう人生もまたいいのでは、と思う余裕と寛容が芽生えたに違いない。もしそう思えたら、例えば老人ホームにいる要介護のお年寄りにも、いや街行く普通のお爺さん、お婆さんにもちっとは温かい気持ちで接することができるのでは?

 近い将来、このビル・マーレイのようなクソジジイになるであろう〝不良老人予備軍のジャズ野郎〟( コレ半分ジョークで半分マジ。アハハハ ・・・ ン? )は、かくも考えたのでありました。    <終>


◆ 監督・脚本は、CM界出身で、短編やドキュメンタリーで各種の映画賞に輝いた セオドア・メルフィ

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▲ 「なんでヴィンセントの子供を産まなきゃなンないの! しくじったワ」と思っ
  てる恋人のダカ (N・ワッツ、右) (C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.

     ※『ヴィンセントが教えてくれたこと』 公式HP: http://vincent.jp/

■ 東京・TOHOシネマズ日本橋、札幌・ディノスシネマズ札幌劇場ほか
            全国で公開中               配給:キノフィルムズ ■


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
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『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

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