ある痛切 - 小津安二郎にドヤされた男 -<第5回>

◆ いたいけな大学生時分の嫌~な記憶 (1)

西武池袋駅・東口
▲ 現在の池袋東口。西武池袋線「東口」が左下に。
出典:ウエブサイト「池袋沿線タウン情報」  http://search-2.jp/category/228619-1.html


 ココで話をグッと私的な、学生時代の情けな~いエピソードに転じよう。

 昭和57年(1982)に日芸の映画学科に受かって上京した私は、文字通り右も左も分からない田舎者で、あらゆる失敗をしでかし、周囲の人間にはバカにされ笑われて、本人も「オレッてバカだなあ、なんて情けないんだ」と嘆息しつつの学生生活は苦痛の一語で、青春を謳歌するどころか、楽しいことも嬉しいこともまったくなく、親を泣かせて入った大学をダブる(留年する)ことなく4年でつつがなく卒業することだけを念じて生きていた。

 今思うと、私みたいな環境適応能力のない輩は、東京のような大都会に出ていっちゃいけないんであるが、当時は若く、上京した当初は「ここに骨を埋めるんだ」という決意で燃えていた。でもその過剰な決意とは裏腹にやらかす失敗--新しい環境下での作法や決まりに慣れず、なじめなくてしでかす大ドジ--に、我ながらほとほとマイッてほとんど下宿に引きこもってるような状態。

 それでも時には映画を観に街に出なきゃと思って、学校のある江古田から西武線に乗って池袋駅に行った時に、それは起こった。東口を出た階段のところで、「ちょっとアナタ!」と呼び止められた。何かの紙を挟んだボードを手にした、女性だったか男性だったか若い人で、要するに勧誘の野郎なんだが、コッチは北海道から出て来たばかりのポヤポヤの田舎者で人が好いから、呼びかけられると「ハイッ!」と言って立ち止まり、向きなおってしまう。

 当時、地元の札幌でも街中に出て行けば、宗教系やら何かの勧誘や声かけ、しつこい呼び込みってのはいた。しかし東京のそれはピンポイントでガッとくるというか、コッチが人の好い顔してるから余計につけこまれるのか、私が池袋や新宿、渋谷といった街に出て、駅の出入り口とか繁華街にいると、必ずそうした「勧誘」にひっかかる。

 もー、イヤでしたね。それの最悪なのが以前書いた、文芸坐に行く途中にあった、風俗・キャバレー街(今、ビックカメラのあたり)を突っ切っていく時 ( 2015年4月1日付け 【すくり~んエッセイ「名画座という名のタイムマシン」- 池袋・文芸坐までのロング・アンド・ワインディング・ロード <その1>】 ) で、この日もそっちに向かう途中、この勧誘に声をかけられた。

 でも、コッチも田舎から出て来たばっかで、話す人もいないし、声かけてくれる人もないから寂しくて、そういう勧誘に声かけられると、「メンドウ臭ぇなー」とは後日、思うことで、この時はまだ嬉しいわけですよ。あー、話しかけてくれたァ、みたいに。

 だから、必死に話しているその人につき合って、「ハイ、ハイ、」と相づちを打ちながら話を聞いてあげた。何の勧誘だったかは覚えてないが、コッチにはそれに乗るような気も、また金もないわけだから、聞くだけ聞いて最後は断るしかない。
 
 話を聞いてあげてはいてもそれに乗って応じるなんて事は、いくら田舎者でもない・・・と言いたいところだが、この同じ年、夏の帰省の際に上野から夜行に乗る前に、駅の入り口で引っかかった野郎に、ワールドムービーのフリーパス券を5千円だったか3千円だったかで買わされてしまった(!)。コレ、赤羽とか八王子とかやけに遠い場所にある映画館で、朝方だか夕方だかに上映する映画を見に行けるってヤツで、チケットが5枚綴りか6枚綴りになってて、それで5千円だと新作1本=千円だから「超お得ーーーッ、でしょ!」なんて文句にのせられて買ってしまったもの(いや、10枚で5千円だったかなぁ・・・もう忘れた)。


上野駅・広小路口
▲ 現在のJR上野駅・広小路口。 出典:ウエブサイト「万歩計 上野駅~田原町駅~浅草駅」
http://s-ohtsuki.sakura.ne.jp/subway/eidan/ginzaH2405/Kukan02_Tameike_Sannou-Kanda-Asakusa/Sub2_Kanda-Ueno-Asakusa/newpage06-S.html



 「得した!」と思ってホクホクで札幌に帰り、東京に戻ってから大学の友人に話したら、さんざ笑われた挙げ句にこう言われた。

「ワールドムービーに引っかかってやんの!」
「エッ? 何、コレ、ウソなの?」
「オマエ、そんなモン買って、どうすんの!?  ソレさ、劇場ってみんな遠くの映画館(こや)ばっかジャン。赤羽とか王子とか尾久とかさ。そんな所でやる1回分の上映だけがそのチケットで観られんだよ。でもそんな劇場じゃ、観たいのかかるわけないじゃん!」
「そうかなあ・・・」
「そうだよォ! ほらその、チケットの裏に書いてる小屋、確認してみなッ! しょぼいトコばっかジャンよぉ~。それに上映作品をその劇場に、いちいち電話して聞いてから行かなきゃいけねえンだゼ!」
「 ・・・ 」

 電話で確認するもなにも、ソイツの情けがひとかけらもない言い様に傷心して、結局、そのチケットで映画を観に行くことは1回もなかった。


 ワールドムービー ・・・・ ホントは、どういうものだったんだろう? 


 私には、そのワールドムービーという限りなく詐欺的なチケット売買の手法よりも、それについて毒舌を吐いたダチの心ない言葉の方が深く胸に刺さったのでありました。 <続く>


『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
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Author:高村英次
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