ある痛切 - 小津安二郎にドヤされた男 -<第6回>

◆ いたいけな大学生時分の嫌~な記憶 (2)


日芸キャンパス
▲ 改装中の江古田キャンパス(2006年撮影)。私が通ってた昭和50年代の日芸キャンパスの写真を探したけれど、ネット上にはないようなので、一番、当時の雰囲気が感じられるヤツをアップ。コレはどこかな、裏門あたりか、西武線沿いのスタジオ裏か?
出典:ウエブサイト「【移転跡地】ソウルに通いながら、こう考えた。」http://kageri.air-nifty.com/seoul/2006/11/


 ワールドムービーの話は余計でしたが、その日、池袋の東口で声をかけてきたのは、そのワールドムービーの押し売り販売ではなかった(と思うが、どうだったか)。
 こちらの相づちを待つこともなく、せっせと勢い込んで喋ってた勧誘の人につき合って、10分もいたのかな、映画が始まる時間が近くなってきたので、さすがに人の好い私もその勧誘を遮って、その場を離れ、池袋の名画座「文芸坐」に向かって足を速めた。


 そんな私の姿を その男 は見ていたらしい。


 2、3日後、大学で授業があって、それは10人弱ずつにクラス分けされた監督コースの学生が、めいめいの担当講師のレクチャーを受ける授業。レクチャーというより講師と生徒が語らうというような時間で、その松竹出身の元監督である担当講師から、昔の映画界はこうだったとか、あの名監督はこんなヘマをやったとか、マッチョを気取っているスターは実は喧嘩が弱かったというような、映画界の裏話みたいなものを聞かせてもらったり。
 また私たち1回生には8ミリ映画で3分、5分といった短編を撮る課題が課せられていたので、それについての作品内容の審議とか注意とかスケジュールについて話す「演出」の授業がそれであった。
 その日もそれをやるものと思って出席していた私に、いきなりその講師が話しかけてきた。

「○○クン、君、先週の木曜日、西武の東口にいなかったかい?」
「エッ? 先週の木曜ですか・・・さぁ」
「いただろう、いたんだよ」
「そうですかね?」
「しらばっくれて(笑)・・・東口で何かの勧誘に声かけられていただろう、君!」
「ハイッ? 木曜日ですか? えーと・・・いや、ないと思います」
「ウソだよ。君、東口で、勧誘のやつとずっと喋ってたじゃないか」


 そう、この講師は、私が勧誘に声をかけられていた現場を目撃していたのだ。で、それを私に言ってきたのだが・・・コレは本心からそうだったのだが・・・その時、私は映画を観に行く途中で勧誘にひっかかった件をすっかり忘れていた。なんで忘れていたか、というと、東京生活のアレコレにまだ慣れていなくて、「今日の晩飯、オカズは何にしよう」とか「銭湯に行く時には洗濯物持ってって、入浴前にコインランドリーに入れとこう」というような日常生活のやるべき些末事に忙殺されて、勧誘の事などをすっかり忘れていたのだ。
 しかし、その勧誘はかなり長時間、しかもしつこかったから、実はよく覚えていて忘れるはずもないのだが、なぜかその講師に尋ねられた時にはまったく頭の中に浮かんでこなかった。

「・・・いや、やっぱりボク、東口で勧誘にひっかかってないと思います」

 と私は答えた。それは〝罠(勧誘)にかかった田舎者がその恥を隠したかった〟わけじゃなかったのだが、どうもその講師は私が嘘をついている、勧誘にひっかかったことをバカにされたくないから忘れたフリをしている、と思い込んだようで、

「ウッソだぁ・・・君、木曜日、あそこにいただろう。あそこで勧誘に声かけられて、断れずにずっ~~~~と喋っていたじゃないか!」
「いや、ボクいませんよ。別の人じゃないですか」
「いや、○○クンだよ。俺見たよ」

 見た、のであればなんで横から「オッ、○○クン、ココで何してる? ちょっとお茶でも飲もうか」みたいに助け船を出して救ってくれなかったのか(薄情なヤツだなあ)、と今にして思う。
 でもその時の私はとにかくその記憶を忘れていたから、何度言われても「いや、行ってません。ボクじゃないです」で通した。

 その講師はそれにもめげず、かなりしつこく私に食い下がっていたが、やがてコッチをかなりバカにした嘲笑の体を見せて「ああ、そうかい、そうかい。分かった、分かった」と言って授業を始めた。でもその途中で何度も「ホントはいただろう?」と訊いてきた。

 まったくなんてしつっこい男なんだよ・・・と思ったが、本当にその時、勧誘された記憶がなかった私は逆にシレーッとそのしつこい、嫌味のような、ハラスメントに近い講師からのからみを受け流し、さして傷つくこともないでいた。

 しかし--それにしてもこの男は随分と陰湿な野郎だなあ。自分より目下の、田舎者と見なした人間にはそれが生徒であろうが誰であろうが、上から目線で畳みかけてねめ付けてバカにする。そういう品性下劣なところがこの男にはあるんだな、そんなんでよく人にモノを教えられンなー、--とは思っていた。 <続く>



『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
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