ある痛切 - 小津安二郎にドヤされた男 -<第18回>

◆ 誰もが小津を畏敬し、好きになる (4)


小津安二郎 人と仕事
▲『小津安二郎 人と仕事』 小津安二郎 人と仕事刊行会、蛮友社
出典:ブログ「トトやんのすべて」 http://ameblo.jp/kusumimorikage/entry-12009867997.html


 小津の「小」の字も知らなかった中学生時代、つまり昭和50年代前半あたりから小津安二郎とその作品がやたらと持ち上げられるようになったと思うのだけれど、その頃から映画を見始めた私は夕刊の芸能面などで小津再評価の記事をよく目にした。それ以後、小津ブームはずっと続いていて、日本で下火になっても、例えば英国の映画雑誌が選んだ世界映画のベストワンに『東京物語』が選ばれるといった海外の評価や、日本でも昨年、原節子が亡くなって再びその出演作である小津作品に脚光が当たるというふうに、そのブームは衰えず、高まっては静まり、また高まるという具合に永続している。

 でも、20代、30代の頃の私にはそうした小津ブームは正直ウザイだけで、ほとんど興味はなく無関心であった。映画評論家の人達が高評し、その人となりや作品をもちあげる文章に触れても、

             「フン、小津安二郎がなんぼのもんじゃい」

というような感じで、識者が褒めれば褒めるほど反撥した。小津の日記などを引っ張り出して、ああだこうだと論じる向きには、「日記なんて読んでどうすんだ?」と極めて冷笑的であった。

 大学時代、下宿の近所の古ぼけた古本屋に、今なら喉から手が出るほど欲しくて、読みたくてたまらない小津文献 『小津安二郎 人と仕事』 という大著が棚に置かれていた。私は興味もないくせにその分厚い本をペラペラとめくり、しかしめくっただけで何が書いてあったのかは皆目分からず、買いもしなかった。

「分厚い本だなあ、これってきっとさる方面の人たちにとっちゃ、大事なモンなんだろーなあ。・・・でもこんなの、作ってどーすんの? 誰が買うの?」

 その時の私には、例えば小津と同じようにホームドラマを撮っていた成瀬巳喜男同様、小津安二郎はまったく興味のない映画作家であった。


 でも今は・・・いや、正直言うと、今でも小津の〝作品〟はどうでもいいのだ(なんて言うと、小津ファンからドヤされるだろうが)。いや、もちろん作品もいいのだが、私にはその作品よりも小津安二郎という人の、人柄、言動、態度がとても大事で、得がたいものに思われるのである。

 だから私より年上のベテランの映画評論家のセンセイたちが、あの頃(そして今に至るまで)ことあるごとに小津を持ち出してきて、小津、おず、オズ、OZU・・・と何かにつけて小津の人柄や作品を語ろうとしたり、その作品論、監督論、ひいては小津監督の日記、メモのたぐいまで引っ張り出して本にしたりすることの意味(気持ち)がようやく分かりかけてきた・・・今日のこの頃であります。 <続く>


『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
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