ある痛切 - 小津安二郎にドヤされた男 -<第28回>

◆ 松竹大船調の末裔 (1)

白痴 大
▲ 『白痴』(昭和26=1951、松竹) 監督・黒澤明 三船敏郎(右)と原節子。
出典:「cinefil(シネフィル)」のフェイスブックから  http://cinefil.tokyo/_ct/16925277


 やはりコレも以前書いたが、大学時代、演出コースだった私の担当講師は、生駒千里の他にコバケイさん(小林桂三郎)って人(やはり松竹助監督、後に日活に移籍)がいて、生駒さん同様、この人ともじっくり話し込んだ記憶はないけれど恩師(面白いオッサン)だとは思ってる。

 でも生駒さんはそんな風には思えないんだな。

 見栄ばかりで実際は根暗、そして性格が悪い奴ってのは、どうもねぇ・・・。

 生駒、小林両師には、「演出」の時間にいろんな話を聞かせて貰った。
 でもさすがに生駒さんから小津の話を聞いた記憶がない。
 「監督既得権を勝手に反故にして、諫められた」過去があれば、小津がどうのこうのなんて話はしたくないだろうし、まあ、嫌うよねオッチャン(小津)を。もっともコレは私が聞き漏らしていたか、覚えていないせいで、「小津さんて人はねぇ・・・」と授業の中で話していたのかもしれない。

 だがお二人が同じ話をした映画がある。それは黒澤明監督が松竹大船にきて撮った『白痴』(昭和26=1951年)の苦労話だ。この時、黒澤さんは労使双方荒れ狂って長期化した東宝争議に嫌気がさして、恩師の山本嘉次郎や先輩監督の成瀬巳喜男らと独立プロダクション「映画芸術協会」を立ち上げて、東宝以外の会社に企画を持って行って映画を撮っていた。『静かなる決闘』や『羅生門』(前者は大映東京、後者は大映京都)はその頃の作品で、『白痴』はその前に撮った『醜聞(スキャンダル)』に次ぐ松竹で撮る2本目の映画であり、しかも長編の文芸大作であった。

 お二人は助監督としてこの『白痴』に付いており(助監督にはあの中平康も)、黒澤監督についての人間性や演出などを語る際に、よく例としてこの時の経験談を話してくれたのだが、内容はいつもロケした北海道・札幌の雪の多さへの不平不満、そして愚痴(黒澤批判)であった。そして私が札幌出身だと知ると、二人は揃って同じようなことを言った。

「オオ、君は札幌か。あそこじゃね、キミ、死ぬ思いをしたよ。
 北大のポプラ並木があるだろう。あそこのロケで森雅之と原節子が並木道の舗道を歩きながら話すシーンを撮る時に、舗道の雪を排雪して路肩に積んだのはいいが、その上でレフをかざしてて、ズボッと雪に埋まっちゃってさ。もう、死ぬんじゃないか、と思ったよ。
 街中の撮影でも雪にはまってなあ、エライ目にあったぜ!
 それにしても、なんて雪が多いんだい、君の故郷(いなか)は!」


 と、こんな調子でお二人は話され、私はこれを1回生、2回生の時にそれぞれ(何度も)聞かされた。
 埋まって死にかけた(とは大げさな)札幌の大雪が、さも私のせいであるかのような大仰な言い方をされて閉口した覚えがある(表面では〝ヘヘヘ…〟と笑ってごまかしたが)。

 その年の冬(昭和26年2月)はとりわけ降雪量が多かったようだが、しかしそれは札幌のせいじゃない(もちろん私のせいでもない)。

                みな黒澤監督のせいである。   <続く>


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生駒千里先生の娘は

生駒千里は結構芝居が好きだったようで、松竹を辞めてからもいろいろ見ていて、娘も芝居が好きだったようで、大変可愛かったようです。

そして、つかこうへいのミュージカルのオーデイションに受かり、そのままつかこうへいと結婚してしまいます。
世の中は狭いというべきでしょうか。

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