ある痛切 - 小津安二郎にドヤされた男 -<第30回>

◆ 松竹大船調の末裔 (3)

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 とにもかくにも、私は学生時代、生駒千里、小林桂三郎のご両名に、「映画とはなんぞや」「撮影とは、撮影所とはなんぞや」といった事を教わったが、そういった事は映画の撮影現場ならいざ知らず、実生活ではあまりというか、ほとんど役には立たないし、役立つ環境がないわけだから、生かしようがない。大学卒業前に、映画やテレビドラマの製作現場にいくことを早々に諦めた私には、だからお二人のことも、その教えも遠い空の彼方にあって、自分に引き寄せようなどとは考えもしなかった。

 --しかし、なんの因果か、東京の街を数年さまよい歩いた挙げ句、いつの間にか映画について書く仕事をしていて、毎日、映画を観て暮らすようになる。ライターを始めた最初の3年は食えたが、4年目からは食うに困り、5年目の年末には早々に故郷に帰ることを決めたが、翌年からまたぞろ食えるようになって・・・という流浪の映画ライター暮しは、日芸時代の4年間よりも辛いものだったが、とにかくそうやって試写会で新作を観てまわっていると、ふいにある事に気付いた。それは自分の「映画の見方」についてである。


 映画を観れば、誰でも観終わった後で、ああでもない、こうでもない、アソコが良かった、ココが良くない、と感想を言うのは当たり前だが、映画マスコミも同じで、同業の仲の好いライターと一緒になれば、鑑賞後、お茶しながら今見てきた映画の話したり、明日見る映画の内容や情報なんかをアレコレ話して交歓する。
 また、そんな仲間がいなくても、というか大体ひとりで行動しているので、ひとりで見て、ひとりで(心の中で)感想をああだこうだと言いながら、電車に乗って家路に着く。アパートの自室に帰れば、誰はばかることなくその映画の感想を口に出して言うわけである。自室ならば--

             誰にも遠慮なく、悪評(ワルグチ)が言える!

 で、そんな時、気付くのである。
 自分が生駒さんやコバケイさんの言ってたような演出論とか映像論に基づいて映画を観ているってことに。この人達が話していた映画の評価とか、「あの映画はここがダメだ。というのはね・・・」といった論理(論点)を自分も口走っていることに。
 観た映画の演出スタイルや手法、コンティニィティの繋がりなんかについて、ボソボソ独り言でしゃべっていると、「アレ、これってコバケイさんが言ってた事じゃなかったっけ?」と気づくわけである。

 何度も言うが、このお二人は松竹・大船撮影所の(プロの)監督さんである。だから好むと好まざるに関わらず、その育ったバックステージ、松竹撮影所のカラーである「大船調(蒲田調)」というスタイル(映画についての考え方、作劇法、見方)がその身に染み込んでいる。蒲田・大船調については、以前このブログで書いたから、そっちを見てもらいたいが、映画を見たり考えたりする上で、この大船調、ひいては大船式の観点というものがいつの間か本人も気付かぬうちに、私の中に移植されていた--ということに気づいたのである。

 
「なーに、言ってんだよ、そんな事、あるわけないじゃないか!」と言われれば、
「そうだなあ、たった4年教わっただけで、大船調が移植されるわけないか」とも思う。
 大学には4年いたが、この二人にじかに教わったのはそのうちの2年間で、しかも3回生、4回生の時はコッチは撮影で忙しいからほとんど顔も合わせてない。

 だから、大船調が移植された、なんて事があるわけがない--と最初は強い拒否感とともにその思いを打ち消した。なかなか認められないでいた。

 しかし、やっぱりそうなのだ、私の映画の見方、鑑定の仕方はまさに大船調なんだ。<続く>


『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた、
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