新作プレビュー 『カフェ・ソサエティ』 (その3)

◆ ウディ・アレンとデイミアン・チャゼル

ヴェロニカ
▲ ボビーは自分が経営するクラブでゴージャスなヴェロニカ(ブレイク・ライブリー、中央)
と出会う。右はボビーの友人ラッド(パーカー・ポージー)。
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

 ジェシー・アイゼンバーグがクリステン・スチュワートとのロマンスに酔い、それに破れて傷心するあたりの表情には、若い頃のウディがよぎるだけでなく、どうも黄金時代のハリウッドを背景にしているせいか、この春ヒットした『LA LA LAND』のイメージもそこによぎるのだ。あの女優志願のミア(エマ・ストーン)に惚れ、その女が大スターになるのと引き替えにひっそりとジャズクラブの主人に成り下がっていくセス(ライアン・ゴスリング)のイメージが・・・。

 というか--『LA LA LAND』も大概ヒットして大勢の人が観たようだから、あの映画の好きなところをネタバレを承知で書くけれど--そもそも『LA LA LAND』にはウディ・アレン作品からの引用がある。

          『マジック・イン・ムーンライト』(2014)だ。

 この作品のヒロインがこの度『LA ~』でオスカーを射止めたエマ・ストーンであり、そのエマが彼女の霊能力を「インチキだ」と見抜くためにやってきたマジシャンのコリン・ファースと想定外のデートで訪れる場所が天文台。その中にあるプラネタリウムで二人は心通わすロマンチックな時間を過ごすのだが、この『マジック~』のワン・シークエンスは『LA LA LAND』ではエマとゴスリングとが星降る夜空にふんわり浮かんで宇宙空間を優雅に舞い踊っていく、プラネタリウム(*)のファンタスティックなシーンへと大胆に転用(リブート?)されている。

 デイミアン・チャゼル監督がアレン作品をパクッたわけじゃないんだろうけど、偶然似ちゃったって事なのか。もっとも『LA LA LAND』にはエマ・ストーンの部屋の壁に大きなイングリッド・バーグマンの(『カサブランカ』のポスターとおぼしき)大きな肖像が描かれてあったり、ワーナー・スタジオ周辺をゴスリングと歩く時に、そのゴスリングが「あれが『カサブランカ』でボギーとバーグマンが寄り添った窓だよ」と言ったりする件があったり、という具合にオールドムービーへの言及や引用がある(そこが嬉しい)。

 その映画が『カサブランカ』ってことはもう、その『カサブランカ』を元ネタにしてウディ・アレンが脚本・主演した『ボギー! 俺も男だ』(1972・米、ハーバート・ロス監督)がただちに連想される。『カサブランカ』(1945・米、マイケル・カーチス監督)やイングリッド・バーグマンを介してチャゼル監督とウディ・アレンは容易にリンクするわけで、まあ、それはどうでもいいのだが、私はニヤニヤして観てました(あと、ジャズ・サウンドへの熱烈な傾倒と憧憬なんてところも二人は一緒だ)。


 1950年代のハリウッド映画のルックやセンスを現代の劇映画で、しかもミュージカルで描くという、誰もがやりたいと願い、やったとしてもそうは成功しないアプローチ(挑戦)を、まんまと成功させたデイミアン・チャゼル監督を私は絶賛する。


     アレ? ウディ・アレンの、『カフェ・ソサエティ』の話がどっかいっちゃいましたね。


 『LA LA LAND』は戦後のハリウッドの黄金時代である所の1950年代(風のタッチ、スタイル)を現代に移し替えて描いた(ってのは私見ですよ)ものだけど、『カフェ~』はまんまその時代の話だから、ノスタルジック・ムードが横溢してくるのは当たり前。

 でもボビーがヴォニーに振られてNYへ里帰りしちゃう後半の展開からノスタルジックなムードは薄れ、いつものアレン映画のようで、そうじゃないような、ある種、黄昏た心境ドラマみたいになっていく。<続く>

セレブになったヴォニー
▲ 秘書だったヴォニー(クリステン・スチュワート)も今やセレブに・・・。
Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

*『LA LA LAND』の天文台  プラネタリウムで二人が天空に舞い上がっていく『LA LA LAND』の天文台は、その名をグリフィス天文台。『LA~』の劇中にも出てきたジェームズ・ディーン主演作『理由なき反抗』(1955・米、ニコラス・レイ監督)のラストに登場する有名な場所、今言うところの〝聖地〟であるが、そのグリフィスは〝アメリカ映画の父〟と呼ばれたデビッド・ワーク・グリフィス監督のファミリー・ネームと同じ。だから、あそこでグリフィス天文台が出てくるについては2つの思い入れ(オマージュ)があるんだろう、と見たが。

       ★ 『カフェ・ソサエティ』 公式サイト:http://movie-cafesociety.com/

 ■ 5月5日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開中 
                    提供:KADOKAWA、ロングライド  配給:ロングライド ■



           *************************

『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの確執とともに描いた 『 ラストシーンの余韻 』、紙の書籍で発売中!

表紙横 中2
著者(発行者)・高村英次 価格2100円(税、送料とも込み)

 

 ◇ 廉価な電子書籍版の 『 ラストシーンの余韻 』 はこちらから
   ◆アマゾンKindleストア   AND   ◇楽天ブックスで発売中!




スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

The Food Court ♪

いっぱい食べるキミが好き~ ♪♪♪

SPORTS & CASUALS ♪

いっぱい遊ぶキミが好き~♪♪♪

お役立ちエリア ♪

ナイスな便利グッズ&サービスをご提供!

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

My Blog Visitors
CAT TIME !
Calendar

Le TAO ♪
駆け足でやってきた秋、甘味満喫 ・・・ ルタオです ♪♪♪
FC2 ブログランキング
FC2 Blog Ranking
[ジャンルランキング]
映画
618位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
邦画
20位
アクセスランキングを見る>>
リンク
最新記事
松尾ジンギスカン ♪
北海道の郷土料理にしてベスト!
カテゴリ
月別アーカイブ
リーズナブルな旅をご案内 ♪
書を捨てよ、旅へ出よう~ ♪
Amazon DVD RANKING
イチバン人気の映画をチェック!
検索フォーム
最新コメント
MAIL BOX
名前はハンドル名でOK、文面は公開しないので、お気軽に!

名前:
メール:
件名:
本文:

最新トラックバック
QRコード
QR