ボヤケの謎--第3作『獄門島』    Trouble with “BOYAKE”

 第3作目の『獄門島』 (昭和53=1978年)は、市川“金田一”ミステリーの中では異色な位置にあります。まず南国風のムードが珍しい。孤島を舞台にしていて、陽気な開放感がある。横溝モノっていうと、大体、信州の奥深い山奥とか、岡山のあたりの鄙びた山地や盆地が出て来て、「家」とか「血筋」を重んじる因習深くて閉鎖的な村というのが舞台なのに、『獄門島』はちょっと観光旅行のような気分がある。
 もちろん、ここでも事件の核心にあるのは、血筋(手込め、近親相姦といったインモラルな色恋)や跡取りの問題なんですが……ただ、ジャズ野郎が言いたいのはストーリーの事じゃなくて撮影についてです。

 オープニング・タイトルが終わって、金田一が船着き場にくる。その一連のカットはおそらく長焦点の望遠レンズで撮られてるんです。ところがこの望遠ショット、どうも画面の真ん中に焦点のボヤケる部分が出来ている。
 何度も見ていて、今まではこれを市川崑ならではの「効果」(狙い)だと思っていましたが、本当にそうなんだろうか、どうもそうじゃないみたい。
 というのは、その望遠レンズで撮ったカットにだけその円形のボヤケが出てて、中・短焦点のレンズで撮った「寄り」のカットには、そんなボヤケは出ていない……つまり望遠レンズで撮った映像にも本当はその円形のボヤケは出るはずじゃなかったのでは? その長焦点と短焦点のカットが交互に出て来るときに、その円形のボヤケがやけに目立つので、気になってしまうわけです。

 そこで、「コレはきっと、キャメラマン(名手・長谷川清。ジャズ野郎はこの人の映像が好きでして、市川崑はこのキャメラマンがいたからこそ、ああいうビジュアル先行の金田一シリーズを撮れたんだ、とさえ思ってます)が使った望遠レンズがイカレてたんだ」と考えたわけです。

 さらに、そう思って見ていくとこの映画の設定は夏、だから空はピーカン(青天)で青く澄み渡り、海も青々としてる……と思いきや、意外に暗いんですよね。そんなに晴れてない。晴れてない日に無理して撮ってる。なぜ無理に撮ったのか、それはリテイクだからではないでしょうか。封切りに間に合わせるために、曇天だったが無理して撮ったと……。
 それとも、その年の夏は天候不順で晴れた日が少なかった、ということかもしれません。『獄門島』の公開は昭和53年8月末ですから、ロケはきっと6、7月といったところでしょう。この時、ジャズ野郎は中学3年ですが、その年の夏はどうだったかなぁ…?
 さらに本来ロケで撮るべき、真犯人に繋がる凶器を金田一が拾うなどといった重要なアウトドアのシーンが割りとセットで撮られている。

 市川崑はロケ嫌いなのか? 

 例えば、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックはロケーションが嫌いな監督として有名で、ロケ先では外景だけを撮ってきて、それをセットで映写し、その前で俳優に演技させて自分の思い通りの画を撮る、といったスクリーン・プロセスをよく使います。俳優もロケ地に行っているのだから、後でセットでアップなんか撮らず、ロケ先で一括して撮ってしまえばいいものを、わざわざそういう事をする。
 ヒッチコックの場合は、コンテがすべてでそのコンテを(彼の頭の中で)ピチッと配置しないと“ヒッチコック・サスペンス(サスペンスの計算)”が成立しない。だから1点1点のカット(構図)が最重要になるわけで、それゆえ狙い通りの構図を確実にシュートするためにロケシーンの撮影をセットに持ち込むのだ、とジャズ野郎は考えるのですが、いくら市川崑がリテイク好きでも『獄門島』の場合は、どうも違う気がします。

 『獄門島』のリテイクは同じリテイクでも、“一度撮影してみたが何かの事情で使えなかった、だから再度撮り直した”という気がするのです。

 そんなふうに勘ぐって映画全体を見ていったら、照明が合ってなかったり、同じロケシーンでも「晴れ」「曇り」のカットが交互に出てきたりする。
 だから、「これは持参した望遠レンズであらかた撮ったんだけど、ラッシュ(編集前の撮ったまんまのフィルム)を見たら映像の真ん中にボヤケがあって、これじゃ使い物にならない、ってんでリテイクした」と読んだ次第。

 だからすごく苦労して撮ってるわけですよね。 


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