『女王蜂』のスプリット・スクリーン

 第4作目の『女王蜂』 (昭和53=1978年)を初めて見た時--「凄い! 市川崑って天才だ」と感嘆した。何に感嘆したかというと、劇中に登場するスプリット・スクリーンにビックリしたのです。

 スプリット・スクリーンとは、一つの画面の中に複数の画面が現れる、または一つの画面が複数の画面に分かれていく“画面分割”の技法で、最近ではジャック・バウワー(キーファー・サザーランド)が活躍するアメリカのテレビドラマ『24-Twenty Four』(2001-2010年)の影響か、映画やテレビでよく見かけるようになりました。でも『24』のように、のべつまくなしに分割画面が登場し、しかもそれぞれの画面で主役、脇役、その他のドラマが進行するのを同時で見せられると疲れてしまう。見てて疲れるのは3D映画だけで沢山、目を大事にしたいジャズ野郎はだからゲームもひかえています。こうしてブログを打っててもパソコンでブルーライトにやられるくらいですからね。

 お互いに目は大事にしましょう、目は命です。

 それはともかく、このスプリット・スクリーン、今でこそ珍しくありませんが、当時、中学3年のジャズ野郎にとっては『女王蜂』でのこれが初体験で、フェードアウトもワイプも知らない、いたいけな映画ファン1年生でありましたから、これを見て大層たまげて、先の少々大げさな「市川崑は天才だ」になったわけです。劇中で、2ヵ所、画面が突然パアーッとスプリット・スクリーンになって、文字通り「アッ」と思わされる。1度目は殺人が起こった時に出演者が驚きあわてる、その一人一人の顔がパパパッとスクリーンの中にずらっと表れ、あともう1回は終盤の金田一耕助による謎解きの時に……。

 ただ、これがなくとも『女王蜂』は好きですね。先の3作で犯人役を演じた高峰三枝子、岸恵子、司葉子の3人が再度顔を合わせ、仲代達矢、沖雅也、萩尾みどりなど、美男美女の共演のおかげで画が華やか。化粧品会社とのタイアップで、主題歌(智子のテーマ「愛の女王蜂」)を流したCMが公開前にオン・エアされまくって耳慣れしていて観る前から親近感があったし、加藤武の等々力警部が劇中で言う「時計にミステリー」はCMの宣伝コピー“唇にミステリー”(商品は口紅)に引っかけたものだったりして、そういうお遊びも面白かった。
 例によってお話は復讐に遺産相続、隠し子などが絡むドロドロしたもので、また例によって原作を改変しているので事件展開がややっこしくて少々もたれるのですが、これまた例によって金田一と“よお~し、判った!”の等々力警部が言葉を交わすエンディングが爽やかで、後味がよい。

 この映画は後味だけでなく、市川崑お得意のオープニングもいいですよね。もしかしたら金田一シリーズ中、一番いいかもしれない。殺人事件とその発端を描いたかなり長いアヴァン・タイトルがあって、突然バーンとテーマ曲が流れて「女王蜂」と出るのですが、その白抜き文字の黒タイトルの後、昔懐かしいボンネット・バスに揺られて金田一がやってくる。バスが伊豆の山峡を走る点景の中に、黒バックのクレジットが出る、それも市川監督お気に入りのジグザグに配置された明朝体で! 全体的にのどかで、しかもこれからオッカナイ事が起こるぞという予感のある中を、金田一耕助がお気楽な顔でやってくるあたりの軽快感はちょっとない。田辺信一のテーマ曲も観客の見る気をそそるサスペンスフルな旋律で、前3作のテーマ曲に劣らない。

 玉に瑕なのはヒロイン・智子役の中居貴恵でしょうかね。多くの男が奪取しようと群がる、遺産継承者の絶世の美女には、どうも……美醜については様々なご意見もあろうかと思いますが、少なくとも“群がるタイプ”ではないように思えますが。


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