Coffee Break 監督と助監督 その3 〔松竹編〕 

◆〝某師〟コバケイさんの思い出

 また、松竹蒲田・大船の場合、助監督たちは「あの監督につきたくない」とか「こんな仕事(作品)はしたくない」と拒否することもできたといい、そんな時、彼らは松竹の寮で読書をするなど自由に過ごしても良かった、ということもあったようである。働かなくても、助監督は松竹社員だから給料は出た・・・「そりゃまたイイご身分だな」と羨ましく思ってしまうが、実際は助監督として撮影所に入って何もしないでいる、というのは切なくて、寂しいことこの上もなく、かなり屈辱的なことであったらしい。どの監督からもお呼びがかからない、というのは己の無能を思い知るようなもので、誰にも頼りにされない、という孤独感に苛まされて辛かったようである。

 カツドウ屋は、ヒマよりもむしろ年中ヒマなし、忙しくて死にそうなぐらいがいいのだ。

 また監督陣にもあまりに偏屈で助監督がつきたがらない人、というのがいて、ある慌て者の監督などは性格が極端なのと、突拍子もない勘違いでもって配下の人間を振り回すから助監督に嫌われて、人が集まらなかった。いざ撮影という時になると、いつも助監督の付き手がいなくて困った。するとこの監督はスタッフの間をまわって幾ばくかの〝ご祝儀(お金、手付け金か)〟を渡しながら、
「どうか、ひとつよろしく」
と自分の組に来てくれるように〝売り込んだ〟というから恐れ入る。
 その監督とは、本流の小山内門下で 『鐘の鳴る丘』三部作 (昭和23~24年)などで知られる 佐々木啓祐 である。松竹には〝けいすけ〟という名の監督が二人いて、一人はこの佐々木啓祐、あと一人は 木下恵介(本名は木下正吉、惠介は芸名) である。惠介は優れ者であったが、啓祐の方は粗忽者であった。
 【<その4>】(5月4日付)監督系譜 を見ていただければ分かるように、そういう監督からは良き後継者(一本立ちの監督)は生まれない。一応、 「小林桂三郎」 という人を出しているが、小林桂三郎、通称 〝コバケイ〟さん は、 川島雄三 らとつるんで松竹大船をおちょくった諷刺冊子『泥馬(でま)クラブ』を出すなど、小才に長けた好人物ではあったが、松竹では大成せず、川島と共に日活に移って、ヒットした歌謡曲を強引に映画にアレンジした、いわゆる〝歌謡映画〟の小品を監督して(ちょっと)気を吐いたのみである。

 〝小才に長けた好人物〟などと見てきたように書いたが、実際に見てきたのだから仕方がない。この人はジャズ野郎が大学時代に映画作りを教わった〝先生〟である。先生というより恩師というべきかも知れないが、恩師というほど密接な付き合いはなかったし、さりとて知らない仲でもないから〝某師(ある先生)〟としておく。
 この某師は自分で映画を論じ、その話が昂じてくると、というか、話が昂じなくてもすぐに 顔が真っ赤 になり、口角泡を飛ばして早口で喋りまくる。だから、コバケイさんというと、すぐその紅潮した真っ赤な顔を思い出す。いろいろとモノを識ってる蘊蓄魔であったが、いつも妙にせかせして落ち着きがないので、貫禄がない。監督でも裏方さんでもカツドウ屋はほとんどみな声がデカい。コバケイさんはせわしなくて声がデカいから、常に怒っている、というか、せっぱ詰まった感じがしてコッチまで落ち着かなくなり、その講義(演出論、というか映画の裏話、というか、要するに単なる世間話)を拝聴した後はいつも気疲れした。

 先に、佐々木啓祐の事を書いたが、書いていて、その特徴がコバケイさんそっくりなのに気がついた。「やはり監督と助監督だ、師匠と弟子ってのは似るもんなんだなぁ」と思う次第である。   〔続く〕


< 『祇園の姉妹』や『浪華悲歌』で日本映画にリアリズムを打ち立て、
  『西鶴一代女』『雨月物語』などの名作を放った溝口健二の人生を、
  伊藤大輔・小津安二郎・黒澤明などのライバル監督&スタッフとの
  確執とともに描いた、
        『 ラストシーンの余韻 』 〔電子書籍版〕、
                アマゾンkindleストアから発売中! >



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

ホントは日芸時代の事は書きたくないけれど・・・もう、アッシも50歳ですから、昔語りでこういうのを残しておいても良いのかな、と。でないと、コバケイさんなんて、何の人的データも残らないことになるもんね。

コバケイさんですと!
懐かしくて涙が出ますな。
確か卒制審査の夜に事故で……。
個人的にもコバケイさんとの会話には思い入れがあります。

The Food Court ♪

いっぱい食べるキミが好き~ ♪♪♪

SPORTS & CASUALS ♪

いっぱい遊ぶキミが好き~♪♪♪

お役立ちエリア ♪

ナイスな便利グッズ&サービスをご提供!

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

『 ラストシーンの余韻 』 発売中!
映画ライター・高村英次、初の書き下ろし長編 『 ラストシーンの余韻 酒乱と失態、女難と頑迷、監督・溝口健二の狂おしき人生 』

高村英次

Author:高村英次
電子書籍版はアマゾン Kindleストア 及び 楽天ブックスから、紙の書籍版は製本直送.comより発売。直近の各コラムの末尾にある発売告知から販売サイトに遷移、またはポップアップ画面が出ますので、そこで購入できます。 

< プロフィール >
血液型:A型
趣味:サイクリング&ウォーキング&クッキング、デジカメでの写真・動画撮影
好きな場所:札幌ドーム、中島公園、中央図書館、豊平川
好物:コーヒー、ジンギスカン、スープカレー、ラーメン、「ロイズ」のソフトクリーム、「シャトレーゼ」のアイスバー・ピュルテ(塩キャラメル味)、びっくりドンキー、はま寿司、セイコーマート

My Blog Visitors
CAT TIME !
Calendar

Le TAO ♪
駆け足でやってきた秋、甘味満喫 ・・・ ルタオです ♪♪♪
FC2 ブログランキング
FC2 Blog Ranking
[ジャンルランキング]
映画
772位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
邦画
24位
アクセスランキングを見る>>
リンク
最新記事
松尾ジンギスカン ♪
北海道の郷土料理にしてベスト!
カテゴリ
月別アーカイブ
リーズナブルな旅をご案内 ♪
書を捨てよ、旅へ出よう~ ♪
Amazon DVD RANKING
イチバン人気の映画をチェック!
検索フォーム
最新コメント
MAIL BOX
名前はハンドル名でOK、文面は公開しないので、お気軽に!

名前:
メール:
件名:
本文:

最新トラックバック
QRコード
QR