松竹の監督系譜-蒲田(大船)調の行方 <その11>

◆ 大船(蒲田)調の流出と自滅

 ジャズ野郎はこの事情(松山善三が主に松竹外で映画を監督した事由)に詳しくないが、推察するに、昭和40年(1965)の 『香華』 の後、木下監督が松竹上層部と揉めて 退社 するはめになった経緯などが関係しているのではないだろうか。
 師匠の木下がいない松竹では、仕事がしずらかったという事もあっただろうし、もしかしたら当時の松竹社長・城戸四郎が木下監督(やその一門)を忌避した、というような事が影響したのかもしれない。

 城戸四郎が松竹キネマ創業まもない頃、 野村芳亭 を京都の下加茂撮影所へ追い出したり、昭和4年の 『母』 (昭和4=1929年)では作品を貶して自ら退社させようとした事は、<【野村芳亭、知られざる巨人】<その17>(4月6日付)<その26~28>(4月19~21日付)で書いたが、彼には会社のためになろうがなるまいが、自分の気に入らない人材を排除するクセ(性癖)があった。
 一時は自分の子飼いとして可愛がった 牛原虚彦 も、五所平之助 も、成瀬巳喜男 (成瀬の場合、城戸は性格が暗いとして最初から嫌っていた)も退社に追いやったし、あの 小津安二郎 さえも戦後の一時期、追い出そうと動いたフシがある。
 だから木下を排除し、その門下の松山善三も松竹から締めだした、というふうに思うのだが……。

 城戸の狭量な性格の一例としてこんな話がある。城戸は、野村芳太郎が脚本家の 橋本忍 と組んで旗挙げした橋本プロで製作した 『砂の器』 (昭和49=1974年)が大ヒットし、松竹は大いに潤ったのだが、にもかかわららず、野村が松竹作品を手がける際に、ギャラを上げるな、と命じた。

〔晩年の城戸四郎は〕忍耐力が失われてきて、独裁者的な面が強く出るようになった。
 それは例えば、「砂の器」の野村芳太郎監督の演出料を上げるな、と製作本部の太田芸文室長に命じてきたことにもはっきり示されている。
「野村は、『砂の器』で、たいへんな金を稼いでいる。ギャラをあげて、これ以上もうけさせる必要はない」というのが理由だった。
 監督の演出料は、前年度の作品がどの程度の興行成績を上げたかで決定する。「砂の器」の大ヒットを出した野村監督には、その〔功績〕が考慮されてしかるべきだった。
 ところが、自分が最後まで反対した「砂の器」が大ヒットして、自分の意に染まぬ配分比率によって、松竹はみすみすもうけ損ねた。その意趣返しを、演出料据え置きで果たそうとする。
 明らかに、監督との契約や演出料が、城戸個人の感情によって決定するという事態が強くなってきた。
   (『日本映画を創った男 城戸四郎伝』小林久三、新人物往来社) ※〔〕内、ジャズ野郎註。


 またこの同じ時期、城戸は、かねてから才能ありと見込んで可愛がっていた 森崎東 監督を解雇している。

「森崎--あれは駄目だね」といった。
 城戸の口から、ショッキングな言葉がとびだしたのは、そのときだった。
「森崎の監督契約を解除する。森崎にそのことを伝えてくれ」       (前掲書)


 森崎監督も大船に残っていれば、大船調を継承するだけでなく、そこにプラス・アルファを付与して大船調を刷新する事が出来たかもしれない。そうしたサムシングを秘めた人材だったはずである。だが森崎の作風が意に沿わないと見るや、ただちにクビを切った。そこにはあったのは非情な経営者の意志ではなく、冷酷なエゴイストの〝切り捨て御免(無慈悲)〟である。

 こうして見ていくと、蒲田=大船調を根絶やしにしたのは、他でもない、それを創生した城戸四郎自身ということになる。城戸は、かつて己が種を蒔き、育て、大輪の花を咲かせた蒲田の、大船の花壇を、結果的に自ら蹴散らすこととなった。色とりどりに咲き乱れていた花々は、摘み取られ、または枯れて、最後の最後に 山田洋次 という一輪の希望がそこに残った。何度もいうが、その山田監督は本流ではないのである。    〔続く〕

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